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なぜパフォーマンスを改善ではなく最適化するのか!

セイルーロのセッションに参加!



「Muchas Gracias.」
憧れていた マエストロ(呼名)フランシスコ・セイルーロ(以下F.セイルーロ)とオンラインではあるが、一言、言葉をかわすことができた。


F. セイルーロは、私の質問:
「なぜパフォーマンスを改善ではなく、最適化するのか?」

に詳しく答えてくれた。彼は説明の終わりの最後に

「Kei、このような説明で良いですか?」

と尋ね、私は少し焦ってマイクをオンにして「Muchas gracias(どうもありがとうございます)」と答えた。

本当は、「あなたに会えて光栄です」と言うつもりだったが、その余裕がなかった。急に名前を呼ばれて緊張もあったと思う。何しろセイルーロの説明を忘れないように素早くメモを取ることに必死であった。

F.セイルーロのセッションを開催したのはダビ先生。彼はCARでF.セイルーロが考案した「構造化トレーニング」を、トレーニング論の授業を通じて私たちに深い学びを与えた素晴らしい先生だ。

ダビ先生から、その週の月曜日に、木曜日にセイルーロのセッションをするのでオンラインで参加しますかとメールがあった。

メールには、

「1つ 、F.セイルーロへの質問を考え、メールで送ってください」

と書いてあったので、最近、疑問に思っていた「なぜパフォーマンスを改善(向上)ではなく、最適化するのだろう」と言う上記の質問を思いついたのだ(F.セイルーロは「チームスポーツのパフォーマンスを最適化する」と論文などで述べている)。

F. セイルーロの今回の質問オンラインセッションは、2022年2月10(木)に、指導者学校であり、オリンピックセンターでもある「ハイパフォーマンスセンター研究所(通称)CAR」で19:00から90分間行われた。私はここでスペインサッカーコーチングコースレベル3を取得した。

F.セイルーロは、FCバルセロナのトップチームのフィジカルコーチを25年間務めたフィジカルコーチ界のレジェンドであり、「構造化トレーニング」を考案したコーチング理論のマエストロである。

ヨハン・クライフが監督であった当時のFCバルセロナから、新しいところではペップ・グアルディオラがバルサの監督をした時代まで25年以上もの長い間フィジカルコーチを務め、現在は大学教授やバルサで主に育成年代のトレーニングメソッドのディレクターをしている。

これは、F.セイルーロがCARで行う「チームスポーツのパフォーマンスの最適化」をテーマとしたコースの一環である。

セッションが始まるとすぐに、いきなり私の質問を司会者が読み上げ、それにF.セイルーロが答えた。100人近く、もしくはそれ以上いたかも知れない受講者(オンライン、オフライン合わせて)がいる中で、私の質問が選択され、しかも最初であった。

ダビ先生がこのコースの主催者であり、彼は私のスペインサッカーコーチングコースレベル3の卒業論文の指導教官でもあった。

この論文をもとにした書籍「ダイヤモンド・オフェンス:サッカーの新常識ポジショナルプレー実践法(日本文芸社)」を出版したとき、彼が非常に喜び、「この本をF.セイルーロに見せよう」と言ったのを覚えている。そのような縁もあり、私の質問を選択してくれたのかも知れない。


F.セイルーロは、何かを書いて見せたり、PDF やPWPを使うのではなく、彼自身の言葉で説明するので、それを聞き取り理解するのは非常に難しい作業であったことを付け加えておく。

※ 尚、以下に書かれている内容は、F.セイルーロが述べた言葉の断片のメモに、私の意見を付け加えたものになっているのでご了承ください。


質問:なぜ、パフォーマンスを改善ではなく、最適化するのか?


パフォーマンスの改善(向上)とは!?

改善するのは個人のフィジカルや体力であり、向上させるのは個人の線形的なクローズした技術などの要素です。人間の本質を改善、向上させるのです。

※線形:「線形の関係」は、グラフ上に直線で引くことができます。定比例の関係です。(定比例の法則)
畑に10キログラムの肥料をまいたとき、収穫量は150リットル増えるとしたら、20キログラムまけば、収穫量は300リットル増えるでしょう。30キログラムまけば、450リットル増えるでしょう。

例:サッカー3日練習したら、県予選に勝てる。5日練習したら、関東予選で勝てる。毎日練習したら日本一になれる。という考え方。

改善や向上と言ったとき、それは個人能力(フィジカル、体力、技術など)の改善や向上を意味します。チームスポーツのための選手の8つの要素(構造化トレーニングの要素)を1つ1つ取り出して線形的にトレーニングし、選手の能力を改善、向上させる方法です。

※選手の8つの要素(構造):
1. 生物的エネルギー構造
2. 認知構造
3. コーディネーション構造
4. コンディション構造
5. 社会的感情構造
6. 感情−意思構造
7. 創造的表現構造
8. メンタル構造

ただ、個人のフィジカル、体力や技術などの要素をそれぞれ個別に改善、向上させても、それをそのチームスポーツに合うように最適化しなければなりません。

それであれば最初から「構造化トレーニング」を行い、その「チームスポーツ特有のトレーニング」を実行するべきだと思います。陸上のトレーニングを行って陸上選手を作ってからチームスポーツのトレーニングをするのではなく、プレシーズンの最初からその「チームスポーツ特有のトレーニング」をするべきなのです。

※構造化トレーニング:
F.セイルーロが考案した、チームスポーツのために選手のパフォーマンスを最適化する方法である。実際の試合の類似性に関連して、4つのレベルのトレーニングがある。実際の試合の類似性に関連するとは、試合の状況を設定していない一般的な運動から、段階的に試合に類似する状況を4つのレベルに設定することである。




チームスポーツのパフォーマンスの最適化とは!?

チームスポーツのパフォーマンスの最適化は非線形であり、多様性の次元で行います。それは最適化の過程で脳につながることでもあります。
そして、トレーニングのプロセスの中で選手は互いに相互作用するのです。

※非線形:「非線形の関係」は、比例的な因果関係を持たないものです。原因と結果の関係は、直線ではなく、曲線か波線でしか描くことができません。100キログラムの肥料をまけば、収穫量は、800リットル上がるとき、200キログラムまけば、収穫量はまったく上がらず、300キログラムまくと、収穫量は減ってしまうでしょう。なぜでしょう?土壌を「多すぎる良いもの」で損なってしまったのです。

例:サッカー週3日練習したら、全国大会出場した。週5日練習したら関東予選敗退、毎日練習したら県予選で敗退。なぜでしょう?練習量が多く選手が試合の時に疲れていたこと、毎日練習するので、選手は練習で集中力を欠いて、トレーニングの質やインテンシティが低かったこと、それと疲労の悪循環。

メッシのプレーやドリブルもそのような選手間の相互作用の中で最適化されるのです。

選手一人一人はプレーのテンポや、プレーできるスペースの大きさもそれぞれ異なります。先ほど述べた「選手の8つの要素」を相互作用させるトレーニングを構築して、選手をチームプレーができるように、各選手自身がそれぞれ「異なる最適化」をしなければなりません。

※異なる最適化:
同じトレーニングを実践しても、人生を通じてどのようにそのスポーツを学んだか、何を学んだか、個人の特徴(遺伝を含む)によって、全く異なる方法で自己最適化するので、解決策も異なる。これが「異なる最適化」である。

各選手がチームメートと行う試合の状況を設定した文脈のあるトレーニングの中で、各選手自身が、トレーニングプロセスのなかでそれぞれ自己最適化するのです。当然、各選手の特徴により、そのプレー状況の解決策は異なります。

これがチームスポーツにおける選手のパフォーマンスを最適化することです。


参考文献


ダイヤモンドオフェンス :サッカーの新常識ポジショナルプレー実践法(日本文芸社)

世界はシステムで動く:いま起きていることの本質をつかむ考え方,  訳者:枝廣純子,  2015. 1.30, 英治出版株式会社

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