成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)

伝統デザイン研究家・着物デザイナー・・ NHK番組『美の壷』出演・・ 成願がデザインし…

成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)

伝統デザイン研究家・着物デザイナー・・ NHK番組『美の壷』出演・・ 成願がデザインした金属製スマホケースが英国ウェールズ国立博物館に永久保管決定・・ 株式会社京都デザインファクトリー代表取締役・・ 伝統文様研究家・・デザイナー・・装飾画家・・アートディレクター

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着物の図案家について

図案家のルーツ 着物の図案家は明治以降、型友禅の発明によって生まれた職業です。 明治時代になり、庶民も絹物を着るようになると、絹の染物の量産が求められました。 そのニーズに応えるべく、広瀬治助が化学染料を使う型友禅を発明し、着物の大量生産が可能になりました。 それ以前の絹の着物の図案(下絵)は、円山・四条派の絵師や琳派の絵師達が余技として呉服商などから依頼され、描いておりました。 それが、明治になり、着物の需要が拡大すると型友禅の下絵を描くことを専門にする絵師が求められ

    • 絶対音感とは?

      ところで最近、興味深い事を音楽家の葉加瀬太郎さんがあるところで言っておられました。 インタビュアーが「葉加瀬さんは、絶対音感をお持ちらしいですね」と尋ねたところ、「ハイ」と答えて、直ぐにこう付け加えたのです。 「正確に言うと、高精度な相対音感だと思っています。 4歳からやっているバイオリンの常にチューニングの時の基準音「ラ」の音が身体に染み付いていて、他の音はそれを基準に相対的に瞬時に判断していると思います」 私はこれを聞いて、やはりそうかと思いました。 多くの人はこ

      • 和装の染織図案のルーツは、円山・四条派の絵師達だった。

        幕末から明治へと怒涛渦巻く歴史の流れの中で、京都は激変した。 芸術界を取り巻く環境も一変したと言う。 元治(げんじ)元(1864)年、幕府側と長州藩による市街地戦(禁門の変)に端を発した戦火は市中を覆い、約2万7千件の家屋が焼失した。 政治的混乱で復興も進まないまま、幕府は消滅。 明治新政府の発足とともに首都の座は東京に移り、京都市域の人口は35万人から20万人あまりに激減したとされる。 このことにより、京都のあらゆる文化が影響を受けた。 中でも、幕府や大名に仕え

        • 和装関連業者にとって一番嬉しいお客様とは?

          和装関連業者にとって一番嬉しいお客様とは? 皮肉を込めて言うと・・・それは、着物を集めるのが趣味、買うことが喜びという客だ。 そんな客の多くは安定した不労所得があり、買い物に費やせる金額が多い。 女性の場合、いちいちご主人の了解を得る必要もない。 だから展示会などでは必ず高額商品を買う。 珍しい着物があると飛びつく。 滅多に着物は着ないが着物は大好きと言うコレクタータイプだ。 だから、しつけ糸はわざと取らない。 所有し、たまに眺めるのが楽しいという。 このような信

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          九頭馬文様に隠された秘密

          この図柄は、九頭の馬が描かれています。 それは、「全てのことが馬九いく」と言う意味であり、願いが込められています。 しかもこの図は馬をそれぞれ三頭ずつに分けた三の三つ重ね。 と言うことで、更に吉祥の意味が倍増します。 日本文化では三は特別な数字です。 婚礼の際の「三三九度」然り。 奇数(陽数)の中でも特に三は「大吉数」とされています。 更に「三」は「成功」「繁栄」「誕生」「幸運」「完成」などの意味を持ちます。 そして「三」は観音様と縁がある数字でもあります。

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          お店の顧客誘引力を高めましょう!!

          顧客誘引力を高めるためには、視覚効果が重要です。 視覚効果によって次の4つの利点が生まれます。 1、お店に興味を持たせる。 2、お店のコンセプトを表す視覚的特徴があると商品やサービスと結びつき      やすい。 3、お店を思い出してもらう記憶化に繋がる。 4、写真映え効果でお客様がSNSなどに紹介してくれる。 現代は、ネットで何でも購入できる時代です。 商品の機能性や品質、サービスが良いのは当たり前の現代。 そんな現代において、お客様にわざわざ来店していただ

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          歌舞伎界以外の女形で人間国宝になった役者は?

          女優の二宮さよ子さんから伺ったお話がきっかけで、花柳章太郎さんに興味を持ったので、随筆「わたしのたんす(昭和38年発行)」を古本屋で見つけて購入しました。 花柳章太郎さんは新派を代表する女形役者で、歌舞伎以外の女形の役者さんで唯一人間国宝になられた方です。 戦前戦後の混乱機を女形一筋に貫いた役者さんです。 大正時代末期に六代目尾上菊五郎さんに歌舞伎界に来ないかと誘われましたが、断ったそうです。 そんな章太郎さんの着物にまつわるエッセイは時代性もあり、なかなか面白い内容

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          江戸時代のデザインと成功の法則の関係

          ここに紹介する着物(小袖)は江戸時代のものだ。 アシンメトリーで大胆な動的コンポジション。 きっちり余白も活かされている。 江戸時代のファッションセンス、素敵だ。 とにかくカッコいい。 江戸時代、太平の世が続き、町衆たちの経済力が高まることで、庶民の暮らしは豊かになり衣装も男女共に派手になっていった。 裕福な商家の婦人は衣装くらべに興じ、娘を美しく着飾って見せびらかしたそうだ。 特に豪華な刺繡(ししゅう)や絞りで飾られた元禄期の小袖は、王朝文化への憧れから雅で華

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          物の価値とは?

          中原淳一さんのファッション雑誌「それいゆ」に掲載された記事(昭和28年)に風呂敷の活用法ページがあった。 タイトルは、「ふろしきを胸に飾る」だ。 普通なら「スカーフを胸に飾る」と、するところだろうが、戦後の物のない時代、日本人なら誰もが使っていた風呂敷をスカーフに見立てて、少しでも当時の女性達に夢を与えようとしていることがうかがえる。 第二次世界大戦敗戦後の焼け野原の真っ只中で、人々は食うことに必死になり、未来への希望を無くし絶望と戦っていた頃、彼は「真の平和は、女性達

          最初に羽織を着た女性は?

          女性の羽織の始まりは江戸時代の深川の芸者(辰巳芸者)だったと云われています。 深川の芸者には「羽織芸者」という異称もあるほど、羽織が特徴的でした。 深川芸者が客席に羽織を着て出たところからこの呼び名が付いたそうですが、ことの始まりは、屋形船のお座敷の際のあまりの寒さにある芸者が、ご贔屓の旦那の黒羽織りを借りて、寒さ凌ぎに羽織ったのが始まりだろうと云われています。 それを見た他の芸者も真似をするようになりました。 しかし、防寒具では色気も粋さもないので、男物であることを

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          センスは知識

          以前、京都で手描き友禅の競技会に行き、作品を拝見したのですが、作家の皆様は、それぞれに素晴らしい力品を作っておられました。 その中にとても残念な作品が一点目につきました。 雲の染め分け背景の上に多種類の花柄が描かれていました。 流石に花は写生を元に描いておられていたようで、素晴らしかったのですが、背景の雲が稚拙で、花が上手く描けていただけにギャップが大きすぎて、とても残念でした。 古典的な雲を描くなら、型を守った上でアレンジする必要があります。 雲は、伝統デザインの『型

          最高の国防とは?

          映画「ゴジラ-1,0」が昨年くれから今年の前半にかけて世界的に大ヒットとなり、さらにモノクロ版も上映され、高い評価を受けているのは皆様ご周知の通りだ。そしてアカデミー賞も受賞した。 何よりもハリウッドの10分の1以下の制作費でこれだけの作品を作ったことにハリウッドの関係者は大きなショックを受けたらしい。 この他、日本のアニメ映画は「アニメは子供向け」という常識を打ち破り、ジブリ映画の他、新海誠監督の「君の名は」や「鬼滅の刃」、「ワンピース」、「ドラゴンボール」、「スラムダ

          羅生門効果

          私は68年生きてきて、毎年桜を見ているが一度も同じ桜を見たことがない。 毎年新鮮な思いで桜を眺めている。 これは今の職業を天職としたことに起因している。 脳科学者も言っているが、人の脳は基本的に楽をしようとする性質がある。だから、未知のものに出会うと、脳はまず、過去の記憶に置き換えようとし、多くの人はそのまま置き換えてしまう。 しかし、脳がそのように行なっていることに多くの人は気づいていない。 結果、大人になった人間が毎日見聞きする情報のほとんどが過去の記憶に置き換え

          「エンドユーザーが満足する付加価値」と「余計なもの」の違いを見極める

          以前、京都の職人さん達の作品を集めた展示会に出かけた時のお話。 ふと、友禅職人さんのコーナーのランプに目が止まった。 布製ランプシェードには友禅模様が染められていた。 私は失礼にも心の中で「この友禅柄が無ければ良いのに」と思ってしまった。 物は機能性が優れていて、素材の組み合わせが良くて、魅力的な色で、フォルムが美しければ、それ以上の装飾は不要な場合がある。 手描き友禅を付加価値と判断するのは作り手と売り手だ。 エンドユーザーのニーズやライフスタイルからかけ離れたコン

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          余白のパラドックス

          以前、京都の職人さん達の作品を集めた展示会に出かけた時のお話。 ふと、友禅職人さんのコーナーのランプに目が止まった。 布製ランプシェードには友禅模様が染められていた。 私は失礼にも心の中で「この友禅柄が無ければ良いのに」と思ってしまった。 物は機能性が優れていて、素材の組み合わせが良くて、魅力的な色で、フォルムが美しければ、それ以上の装飾は不要な場合がある。 絵柄が入る事によって商品価値を下げてしまう場合もあるのだ。 安易に物作りする職人さんが陥りやすい典型的なパターン