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【ライブレポ】戮-RIKU-「禍禍しさに相対し、思いの中相対す」2023.1.9

2023年のライブ初めは、大塚Hearts+で開催された戮-RIKU-の振替単独公演である。
2022年9月9日に開催された"びじゅなびPRESENTS 20周年記念主催「Mixed Candies」"において、出演予定だった彼。
コロナウイルス感染の影響により、結果としてはキャンセルとなったものの、せっかくその日のためのスペシャル編成で準備をしていたということもあり、振替公演を敢行。
イベント用の通常のサポートメンバーでのライブも含めて、戮-RIKU-によるツーステージ制での開催となった。

なお、ツーステージでの単独公演という言い方にこだわっているのは、あくまで1stワンマンは、この日チケットが発売された3月の公演だという意識が強いからとのこと。
その意味では、本当にリベンジをしたいという心意気だけで開催されたイベントであるが、だからといって手を抜かないのは、MCの場で何度も"戮-RIKU-の歌は高くつく"と語っていた通り、昨今のライブチケット代の高騰を認識しつつ、その価値を創出することにこだわる彼のプロ意識なのだろう。


第一部


「Mixed Candies」の振替公演の位置づけとなる第一部。
サポートメンバーは、当日にステージに上がるはずだったGt.KEN(ex-D-SHADE)、Gt.YUKI(DUSTAR-3、Rayflower) 、Ba.AKI(Sadie、ナナ、BLUEVINE、AXESSORY) 、Dr.shinpei(ex-SuG)という豪華布陣。
リハーサルでも完成度が高かったという手ごたえがあったからこそ、振替公演を開催するに至ったということなのだろう。

セットリストも、その日に発表する予定だった楽曲を再現したものと思われる。
「絶命ショウ」、「煩悩事変」で攻撃性を示すと、「undrop city」、「禍禍しさに相対し」でテクニカルに聴かせるスキルもアピール。
ラストは「誰がために鐘は鳴る」で大団円という王道的な構成で、尖ったギミックでインパクトを残すのではなく、正々堂々と演奏技術を武器に正面突破を図る、経験値の高さを見せつけるステージであった。

残念なことにトラブルの戦いとなり、5曲中4曲で同期が途中で止まるというハプニングに襲われ、リハーサルで演奏されていた完全な楽曲の姿ではなかったのだと思う。
しかし、そこで演奏を止めるのではなく、その場のアドリブでリカバリーできてしまうのが、百戦錬磨だなと。
激しさ、重さが強調されたサウンドなのに、心地良くなる演奏のバランス。
爆音でテクニカルなフレーズを連発するYUKIと、隙間を埋めるように気の利いたリフを差し込むKENのツインギターは、即席だとは思えないコンビネーションだし、アグレッシブに刻むshinpei、飄々とビートを支えるAKIのリズム体も、キャラクターは異なれど安定感が抜群だった。
万全なステージを見たかった、という想いはありつつも、こういう生々しさだってライブの醍醐味。
初見でも刺さったであろうパワーに溢れていただけに、大きいステージで披露できなかったのは惜しいとしか言いようがないな。

  1.  絶命ショウ

  2.  煩悩事変

  3.  undrop city

  4.  禍禍しさに相対し

  5.  誰がために鐘は鳴る



第二部


単独公演として成立させるには、イベントサイズの曲数では足りないという事情もあるのだろうが、気心知れたサポートメンバーによる新年1発目のライブもここで披露。
関東でライブを行うときの、Gt.N∀O(ex-REALies)、Gt.渉、Ba.ゆう、Dr.Shinsakuという布陣で、ソロアーティストというよりも、バンドとしての成熟を感じたステージだった。
雰囲気としては、アンコールのようなラフさはあったものの、曲数は第一部よりも少し多め。
第一部では、多少緊張が見られた戮-RIKU-も、だいぶ肩の力が抜けてきた印象である。

ライブの魔物はここにも潜んでいて、登場時の煽りの時点でマイクの外音が出なくなるアクシデント。
幕が開くところからやり直し、となるのだが、それで吹っ切れた感もあったのだろう。
1曲目からテンションが高く、人数は同じはずなのに、ステージがより狭く見えた。
印象に残ったのは、攻撃的な楽曲が多い中で、歌モノである「心、篭った人の詩」と、ラスト前のピークに持って来た「バエル」。
どちらも、メッセージ性を含んだ楽曲となっているのだが、前者が"静"、後者が"動"といったところ。
特に「バエル」は、「神殺し」というタイトルでコールされ、Phantasmagoria時代の代表曲「神歌」のフリやサビのフレーズを取り入れたアレンジヴァージョンに変貌しており、挑戦的な煽りは、戮-RIKU-のロックンロール魂を象徴していたと言えるのかもしれない。

単独公演らしいアットホームな空気を出そうとするも、声出し禁止の中でリアクションがダイレクトに返ってこないという状況に戸惑う場面も見られたが、徐々にアジャスト。
クールなイメージがあった彼に、笑わせてナンボの関西人の血を見ることができたのは、この特殊な環境による副産物だったりして。
曲ごとに色を変えてのペンライトを使って盛り上がりを創出し、ラストの「Fish哲学」での一体感は圧巻だったな。

  1.  Re:Automata

  2.  永遠の籠

  3.  xx芝居

  4.  病まない雨と、君と、僕と。

  5.  心、篭った人の詩

  6.  ツァイガルニク

  7.  バエル

  8.  Fish哲学


アンコールはなく、戮-RIKU-が単独で再登場して、告知をするのみ。
テンションが上がって、もう1曲やりたい気持ちもあるけれど、そこは1stワンマンに向けての位置づけであったり、予定調和にしたくないという構成上のこだわりを優先。
"戮-RIKU-の歌は高くつく"だけあって、安売りはしないスタイルだが、それだけのものを魅せるという覚悟が込められていたのは間違いない。
少し不器用ではあるものの、ロックに真摯に向き合う彼らしい締め方だったのでは。

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