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【ライブレポ】kein TOUR 2023「破戒と想像」2023.10.25

2022年再結成され、23年越しのフルアルバム「破戒と想像」を完成させたkein。
その圧倒的な作品を引っ提げて、全国ツアーを敢行。
そのファイナル公演が、2023年10月25日、恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。

アルバムの流れを踏襲するかのように、SE「Anno Domini」を背に受けたメンバーが登場し、続けざまに「Mr.」が演奏されると、ステージが緑色に照らされる。
正直なところ、前日に報道されたBUCK-TICKのVo.櫻井敦司の死去という事実をメンタル的に引き摺っていて、ライブがスタートした段階では依然として気持ちが迷子になっていた部分はあるのだが、この照明演出だけでテンションが上がってしまうからお手軽なものだ。
なんとなくkeinには緑色が似合うイメージがあって、最初に見るkeinが緑色で良かった、と。
23年分の答え合わせは、その音楽性がいかにダークであろうとも、自分にとっては活力なのだなと思い知らされる。

ギターのリフが鳴るたびに包まれる不穏な空気。
奇怪な動きを繰り返すVo.眞呼に対して、Gt.玲央、Gt.aieのツインギターは、ほぼ持ち場を離れないスタンスで、その異質さを際立たせていた。
上手に構えたBa.攸紀は、前に出て主張をしたかと思えば、後ろを向いてクールなプレイに徹するなど、眞呼とは別の意味で自由な存在。
言ってしまえば統一感はないのだが、化学反応とはこういうバンドに起こるものなのだろう。
新たに加わったDr.Sallyが安定感をもたらす中で、理屈では説明できない圧倒的なインパクトを生み出していく。
アルバムを聴いていた段階では、大味だなと思っていたギターのアレンジも、ライブで聴くと音の隙間から禍々しさが広がっていくようで、これが狙いだったのかという発見もあった。

「雨音の記憶」からは、歌モノが続く。
歌モノといっても、そこはkeinなのでどこかに不気味な要素が潜んでいたりするのだが、聴き終わるころには強い感情が胸に残って、しばらく渦を巻いている。
「嘘」については、ギターやベースのフレーズまでが切なさを歌っているとさえ感じたぐらいだ。
この日演奏されなかった「ブルーベジー」や、アンコールで披露された未音源化曲「鍵をかけない部屋」も含めて、実はこの手の楽曲の層も厚いことを示していた。

「Be Loved Darlin’」からは、蛍光塗料を吐き出したり、痙攣風のパフォーマンスを畳み掛ける眞呼。
「Keen scare syndrome」までは、1曲に1痙攣以上、合計何痙攣したんだといったところで、そういえば彼の代名詞は痙攣パフォーマンスだったなと思い出す。
ギミックを多く用いて視覚的なインパクトを強めていたdeadmanに対して、keinは生身で攻めていくイメージではあるのだけれど、そのアプローチが必ずしも正攻法ではないのが面白いなと。
どこまで崩すかのバランス感覚はライブを重ねるごとにアジャストしていると思われ、今がベストと言っても良さそうだ。
MCは無いに等しく、ときおり次の楽曲名を叫ぶぐらいだったことも相まって、あっという間に本編ラストの「暖炉の果実」。
サビの部分でヴォーカリストが歌わず、呻き声をあげるだけの楽曲が重要な位置付けになっているのも、本当によくkeinの音楽性を象徴しているなと痛感する。
アルバムの収録曲は本編ですべて消化した形で、邪悪な余韻を残したままクロージング。
今ではヴォーカリストとしての実績も十分なaie、攸紀を擁しつつ、コーラスは玲央がメインで行っているのも、なんだか彼ららしくて興味深かった。

アンコールは、上手の二人が座った状態で演奏された「鍵をかけない部屋」から。
彼らにしては歌謡曲要素の強いのだけれど、それでもしっかりkeinの色に染め上げているナンバー。
次はこの曲の音源化を、なんて期待させつつ、ギャップに振り切る「FLASHBACK THE NEWSMAN」と「kranke」を叩きつける激しさに特化した締めくくり。
「kranke」のラストの"バイバイ"が、そのままライブの終わりを告げる気が効いた演出だ。

しかし、それだけでは終わらない。
終演のアナウンスが2回ほど流れるものの、一向に鳴りやまないアンコール。
しばらく声出しが禁止されていた時期が続いていたこともあって、この文化自体久しぶりだったことによる脳内補正はあるにしても、こんなに声が聞こえるアンコールなんて過去体験したことがあっただろうか、と感動すら覚えるほど。
その反響に呼応するように、三度登場したメンバーたち。
演奏されたのは、この日2回目となる「君の心電図」、「グラミー」のコンボで、先ほど「kranke」で叩き出した盛り上がりの最大値を、早々と更新していった。
帰り際には、「2月にまた逢いましょう」と予告を残していく眞呼。
その後、フライヤーでKαinとの2マン「In My Bloody Valentine」の開催を告知する粋なはからい。
2000年にkeinとJILSが開催したイベントの再演となるが、奇しくも同じ"カイン"として2024年に時を同じくするというのも運命的では。

1. Mr.
2. an Ferris Wheel
3. 籠庭
4. Color
5. 絶望
6. 雨音の記憶
7. 思い出の意味
8. 嘘
9. Be Loved Darlin’
10. People
11. 君の心電図
12. グラミー
13. Keen scare syndrome
14. 暖炉の果実

en1. 鍵をかけない部屋
en2. FLASHBACK THE NEWSMAN
en3. kranke

en4. 君の心電図
en5. グラミー

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