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【ライブレポ】NETH PRIERE CAIN 四周年記念5大都市無料単独公演ツアー「終末聖戦-Harmagedōn-東京編-」2022.10.6

大塚Hearts+にて開催された、NETH PRIERE CAINの単独公演、「終末聖戦-Harmagedōn-東京編-」に参戦してきた。

この"参戦"という言葉、スラング的に定着しているのは認識しつつも、実は使うのに抵抗がある。
後方で見ているだけの自分は戦っている意識に欠けているとしか言えないし、「かかってこい!」と煽られても、別に向かっていかないし。
それで「参戦しました!」ってのも、なんか違うなと思ってしまうのだ。

それでも今回、あえて"参戦"したと言うのは、初の5大都市でのワンマンツアーに挑む彼らが、"終末聖戦"というタイトルに絡めて、しきりに「一緒に戦って」という言葉を使っていたのが印象的だったから。
バンド対オーディエンス、といった構造だったヴィジュアル系特有のバトルルールとは異なり、バンドとオーディエンスがひとつになって、もっと大きな何かと戦っていく。
この発想の転換が面白いな、と素直に思うし、大雑把に言えば、祈るだけでも戦ったことになるのだろうか。
そのぐらいなら力を貸しますよ、ということで、晴れて聖戦の初日に参戦である。

前置きが長くなったついでに、もうひとつ。
抵抗があると言えば、耽美系のコテコテバンドを、なんでもかんでも90年代的、古き良き、と括ることもそうだ。
ジャンルとして90年代から脈々と続いているのは間違いないが、それは、その時代のバンドがその時代の仕様にアップデートしてきた結果であり、それらの工夫を無視して90年代っぽいね、というのは、ちゃんとバンドと向き合っていない気もする。
意図的にそういうギミックを使うメタ的なバンドか、それを面白おかしく笑いに変えるコミックバンドしか、ヴィジュアル系のテンプレートとも言える耽美系コテコテバンドが残っていないなんて寂しいじゃない。

これについてのアンサーが、この日のライブにはあったと思うのだ。
西洋風のファンタジーに溢れた世界観を構築。
Vo.樹は、十字架に薔薇を巻き付けたマイクスタンドを使用し、MCでも設定やキャラクターを崩さない。
その佇まいは、ナルシスティックな様式美に包まれており、それを懐古主義や企画モノという隠れ蓑で誤魔化すことなく、真正面からぶつけてくる姿勢には、1周回って新しさを感じるのである。
クラシカルで神秘的なサウンドに、激しさと歌謡要素をほどよく混ぜ合わせたメロディ。
ハイトーンに安定感があり、シャウトにも迫力が。
デジタル世代のバンドらしい多趣味、多才っぷりと、それ故、的確に耽美フィルターを通してアウトプットできる器用さを有し、楽曲への既視感をさほど与えない彼らこそ、現代にアップデートされた現在進行形の耽美系コテコテバンドなのであろう。

序盤には、雰囲気作りの意図もあってか、クラシカルなギミックを強めた楽曲を配置。
舞踏会のようなフリがお約束になっている「カトレア」をはじめ、視覚的なパフォーマンスを中心に展開し、没入感を高めていくと、気が付けば聖戦もクライマックスに突入。
淡々とはしているけれど、煽情的に感情を昂らせる言葉を繰り返し、攻撃的なハードチューンを連続で繰り出していく。
ただし、激しいと言っても、メロディアス性は維持して、しっかりと歌い上げてみせるのが彼らの特徴。
不必要にテンションで引っ張ることをせず、あくまでシアトリカルな演出の一部としてカオティックなサウンドを用いているといった印象で、どこか刹那的な側面があったのも効いていたのでは。
インパクト重視でぐいぐいと主張を強めるギターと、演奏の根幹を支えつつ出るところで出るリズム体の駆け引きも絶妙。
特殊効果での演出に頼るのではなく、あくまでバンドサウンドでドラマ性や展開のメリハリを生んでいたのも、ポテンシャルを感じるところか。

アンコールで、ようやくキャラクターの武装を解いた模様。
メンバーひとりずつ、ツアーに向けての抱負を語り、今度はパーソナリティという意味でのキャラクター性を強めていくのだからズルいな、と。
そこで演奏されたのは、ソリッドに切れ込み、王道感のあるキャッチーなメロディを高らかに響かせる「キンセンカ」。
これがまた、キラーチューンで。
粒が大きい、というイメージはあった彼らの楽曲だが、その中でも出色の出来映え。
世界観が固まっていることもあり、曲の差異化は課題になりそう、と懸念したものの、最終盤に披露された楽曲にこれだけ衝撃が残されているのなら問題はなさそうだ。

無料ライブということで、少し軽率に足を運びすぎた感はあり、もう少し予習をしておけば良かった、もっと聴き込まなくては、と奮い立った一方で、まぁ、でもそのきっかけを作るために軽率に足を運ぶのが無料ライブだよな、とも思うわけで。
徹底して非現実性の高いファンタジーな世界に触れる、久しぶりの感覚。
斜に構えたバンドばかりでは成り立たないヴィジュアル系シーンにおいて、彼らのようなスタイルのバンドが大きくなっていくことを、切に願う。



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