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「XXX」のつく楽曲を紹介しながら語ってみる

ヴィジュアル系において、"X"というアルファベットは切っても切り離せない。
それは、シーンを大きく発展させたのがXであるから、という単純な理由に加え、"バツ"の意味や伏字としての使い方も出来るため、負のワードとの親和性が高いというのも大きな要因であろう。
特に多い傾向としては、「XXX」あるいは「XXXX」と、3つ、4つ並べて使うこと。
もはや様式美的なお約束となっており、"読ませ方"でもバンドの個性が出てきたりするから面白い。
これらがタイトルにつく楽曲を集めてみたら、それなりに音楽語りのきっかけになりそうだったので、いくつか紹介していこうと思う。


症状3.XXX症 / Raphael

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Raphaelが、1999年に発表したコンセプト作品「Sick~XXX患者のカルテ~」に収録された1曲。
作品タイトルにも含まれているとおり、この「症状3.XXX症」がメインテーマとも言え、本来当てはまるワードの伏字として「XXX」が用いられている。
ただし、読み方はそのワードではなく、"ばつばつばつ"が正当というのが、なんとも彼ららしいなと。

弱者やマイノリティへの差別をテーマにした壮大なメッセージを含んでおり、大人が作った不条理な社会に憤るティーンエイジャーの代弁者としての彼らの立ち位置を確固たるものにした代表曲。
ドラマティックな展開を見せるメタルサウンドと、キャッチーなサビの爆発力もたまらないのだが、やはり注目すべきは歌詞であろう。
早熟とも言える演奏力の高さと反比例するように、少年性の高い純粋な視点で描かれた歌詞は、Gt.華月さんの生き様とも重なり、余計に胸を打つのである。


objexxx / La:Sadie's

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La:Sadie'sが1996年に配布したシングル。
この場合における「xxx」は、"発音しない"で良いのかな。
タイトルに限らず、特に言葉が当てはめられていない発狂シャウトに、「XXX」を当てるケースも、コテコテバンドには多く見られた手法。
これを差し込まれると、狂った感じや、ダークな世界観の表現として受け取ってしまうわけだが、この共通認識、よくよく考えてみると、誰もが明確な起源を知っているわけではないのが面白い。

ツタツタ発狂系のフォーマットを体系化したお手本のような1曲で、概念としてのスタイルは、この辺りからスタートしているのかと。
勢いだけで突っ走っても良かったのだが、後半、スローになるギミックを追加する演出過剰な構成こそ、ヴィジュアル系の矜持。
キメが入るBメロは、何度聴いてもたまらないのだ。


St.XXXの鏡 / Luinspear

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シングル「闇と月」に収録された、Luinspearのメロディアスナンバー。
歌詞においては、"St.Maria"と表現されており、タイトル上もそう読ませるのが妥当だと思われるが、印象的にするために、あえて「XXX」を用いたということだろう。
「XXX」には、視覚的な格好良さも含んでいるのである。

キャッチーであるが、実はテクニカルな部分も多く、このクオリティを出せるのは、樹威さんのクオリティの高さによる部分も大きかった。
だからこそ、多くのリスナーにとって、彼には耽美色の強い楽曲を歌ってほしい、という欲求が根強く残ることになったのである。
若い頃から完成していた樹威さんの歌唱力を確認できる1曲。


xxx,S / S

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少し変わり種なのが、Sの「xxx」シリーズ。
ミニアルバム「昆虫採集」で「xxx,S」を発表したのを皮切りに、アルバム「四次元図鑑」では「xxx,L」、ミニアルバム「一年生」では「xxx,M」を次々とドロップ。
もともとは、V系の定番的な意味合いで「xxx」を冠していたはずだろうに、バンド名の"S"と組み合わせたことにより、どうもサイズ感が出てしまったことを逆手に取った形だろう。

いずれも楽曲としては王道的な疾走チューン。
タイトル的に遊び心が強めかと思いきや、がっつり正統派を貫いているので、むしろ、昆虫コンセプトの楽曲群より、このシリーズのファンというリスナーも多いのでは。


X X X / L'Arc〜en〜Ciel

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2011年にシングルとして発表され、後にアルバム「BUTTERFLY」に収録された「X X X」。
読み方は、英語のスラングを採用した"キス キス キス"。
耽美系のバイブルとして知られる楠本まき先生の「KISSxxxx」は、まさにキスが永遠に続いていることを表現したタイトルなので、ある種、源流に立ち返った「XXX」であると言えるだろう。

楽曲としては、R&Bテイストをロックサウンドに落とし込んだお洒落なナンバー。
なんとなくハードに傾きがちな「XXX」曲において、もっとも妖艶でアダルトな香りがする楽曲と言え、ラルクでしか表現しえないオリジナリティとして昇華していた。


他にもたくさん思いつくのだが、世の中には読み方がわからない「XXX」もたくさん存在しており、5つに厳選させていただいたということで。
なお、ヴィジュアルシーンにおける「XXX」で思い浮かべるのは、XXX RECORDS(バツバツバツレコード)が運営するライブハウス、高田馬場AREAであろう。
建物の老朽化により、2021年末を持って閉館となる旨が発表され、ひとつの時代の終焉を意識せざるを得ない。
なんだかんだで思い出深いライブハウスだ。
この記事を書くことによって頭の中で結びついてしまったので、これから「XXX」曲を聴くたびに、あのくすんだ青のスタッフジャンパーや、ほこりが積もった天井の記憶なんかも引き連れて、あの場所でのあれこれがふと頭をよぎるのかもしれないな。

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