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映画「銀鏡(SHIROMI)」を見ると、生命の原郷への帰還、星宿廻流の旅がはじまる。 

 2020年、部屋の壁に飾っていたカレンダーは、銀鏡神楽のカレンダーだった。1年間ほぼ毎日無意識のうちに銀鏡神楽の写真を見ていたことになる。その頃から宿神は知っていたが、まさか『宿神』という名の、お酒造りをすることになるとは思っていなかった。

 宿神というのは銀鏡神楽に出てくる重要な星の神様であり、日本の伝統芸能者が芸能神としている存在でもある。そして酒米を醸し、お酒にしてくれる奥藤酒造さんは赤穂坂越にあり、坂越という地名はミシャクジ→シャクジ→シュクジン→坂越から来ているとも言われている。その坂越の湾に浮かぶ生島に秦河勝公のお墓がある。

坂越妙見寺からの生島

 お酒づくりの投稿の際はSNSで#宿神とタグ付けしているので、宿神を検索してみると、赤阪友昭監督のFBページに目が止まり、銀鏡(SHIROMI)という映画があることを知る。そして銀鏡神楽のカレンダーを部屋に飾っていたことを思い出す。あぁ、あのカレンダーの映画だ!と、さっそく映画情報を見て、先日イトナミダイセン芸術祭にて拝見させて頂くことが出来た。

銀鏡神楽


 映画を見終わった時、まだ知らぬ銀鏡の地域の人たちが、同じ天体を生きる家族のように思えた。星々はどんな人にも近い存在だから、時空間を超える装置のように人々を繋いでいるのかも知れない、そんな不思議な感覚がこの映画にはある。

 自分の生まれ育った場所、兵庫県佐用町は、陰陽師の里があることや、国内最大の望遠レンズを使用した天文台があり、近隣には上月や三日月といった地域が多く、私が小さい頃から佐用町は、星の都と表され呼ばれていた。そんな星の共通項がある為か銀鏡の地域の人達に、親近感を生んでしまっているのかも知れないが、銀鏡の人たちが繋いでくれている星々との関係を、私たちはしっかりと感謝し受け取り、自分自身に立ち帰る切っ掛けにせねばと思う映画だった。そして映画のガイドブックが「1000年続く祭りをつくるガイドブック」にも思える有り難い一冊になっている。

銀鏡(SHIROMI)ガイドブック

 映画冊子の冒頭に「先人が遺した星への祈り  それは  生命の原郷への帰還」と書かれている。自分にとって、まさに「生命の原郷への帰還」を感じさせてくれた映画だった。お酒の「宿神」も「生命の原郷への帰還」を感じて貰えるような、お酒になると嬉しいなと思う。

佐用の天文台


 ーすべてのものは、星のかけらでできているー

 私たちは星から生まれ、星を生きている、月の満ち欠けや天体の動向に、私たちの命は日々影響を受けている。星占い・陰陽道・陰陽五行・宿曜道などなどは、その影響下で誕生したものであるように、金春禅竹の明宿集に「「宿神の『宿』という文字には、星が地上に降下して、人間に対してあらゆる「業」を行うという意味がこめられている」という文面がる。

「天体は宿命であり、天命を宿している。
  自分を知るということは、星を知ることだ」

星宿廻流の旅、北斗七星の船を浮かべ、
宇宙の動向に、引き続き心を通わせたいと思う。

佐用常光寺 星の道場 北辰妙見菩薩

〜宿神がやってくる〜

 世阿弥が『風姿花伝』の中で、面白いことを言っている。祇園精舎に見立てる伽藍の背戸にあたる「御後戸」にて、邪気祓いのために、鼓・笛・唱歌で、六十六番の猿楽をしたのが能の起源であるというのだ。「後ろ戸」とは、前述したように仏像等が安置されている場所にポカリと空いた空間を想像すればいい。そこで繰り広げられる歌舞が正面に置かれた仏像に宇宙エネルギーを注ぎ込み仏の威光と法力を与える源流を生み出す。静かに微笑む表の仏像と騒々しい舞と謡が行われる後ろ戸は、陰陽のごとく表裏一体である。それは能の最も重要な「三番叟」によく残されている。世阿弥の娘婿である金春禅竹は『明宿集』で「翁を宿神と申し奉ること」といい、「かの秦河勝は、翁の化現疑いなし」として、翁こそ猿楽者がもっとも神聖視した「宿神」であることを表した。
 〜宿神がやってくる〜 銀鏡・SHIUROMIガイドブックから

お酒お楽しみに、銀鏡の映画も赤穂で上映出来たらなと思っている。赤阪監督のお話しが又面白いので、是非映画を見るときはトークショーのある時がオススメです。


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