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「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」の調査(NHK党浜田聡参議院議員のお手伝い)


はじめに

 こんにちは。さかさきです。今回は、「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」を調査しました。

自動車を購入したらやるべきこと

保管場所証明書(車庫証明書)について

 皆さんは、自動車を購入したことはありますか。購入したら、必ずやらないといけないことがあります。それは、「保管場所証明書(車庫証明書)」を提出することです。「保管場所証明書」とは、車を新規購入したり他人から譲り受けたりした場合、車の保管する場所を確保しないといけません。確保する場所がないと、自家用車を公道に停めるという事態が多発し、思わぬ事故を引き起こす原因にもなります。それを防ぐために、保管場所証明書が必要です。実際に、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」では、以下のような文言があります。

第四条 道路運送車両法第四条に規定する処分、同法第十二条に規定する処分(使用の本拠の位置の変更に係るものに限る。以下同じ。)又は同法第十三条に規定する処分(使用の本拠の位置の変更を伴う場合に限る。以下同じ。)を受けようとする者は、当該行政庁に対して、警察署長の交付する道路上の場所以外の場所に当該自動車の保管場所を確保していることを証する書面で政令で定めるものを提出しなければならない。ただし、その者が、警察署長に対して、当該書面に相当するものとして政令で定める通知を当該行政庁に対して行うべきことを申請したときは、この限りでない。

 当該行政庁は、前項の政令で定める書面の提出又は同項ただし書の政令で定める通知がないときは、同項の処分をしないものとする。

E‐Gov法令検索「自動車の保管場所等に関する法律

 自動車を購入する上で、「保管場所証明書」の提出は必須事項なのです。

警視庁「保管場所手続とは」より

保管場所標章について

 保管場所証明書と同時に交付されるシールが、「保管場所標章」になります。保管場所標章とは、「この車は保管場所がきちんと確保されている車です」ということを証明するシールになります。いわゆる「車庫証明シール」とも呼ばれています。

チューリッヒ「保管場所標章とは。」より

自動車保管場所の確保等に関する法律」でも、以下のような文言があります。

(保管場所標章)

第六条 警察署長は、第四条第一項の政令で定める書面を交付したとき、同項ただし書の政令で定める通知を行つたとき、又は前条の規定による届出を受理したときは、当該自動車の保有者に対し、当該自動車の保管場所の位置等について表示する国家公安委員会規則で定める様式の保管場所標章を交付しなければならない。

 前項の規定により保管場所標章の交付を受けた者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該自動車に保管場所標章を表示しなければならない。この場合において、道路運送車両法第十二条に規定する処分又は同法第十三条に規定する処分についての第四条第一項の政令で定める書面の交付又は同項ただし書の政令で定める通知に係る保管場所標章を表示するときは、既に表示されている保管場所標章を取り除かなければならない。

 自動車の保有者は、前項前段の保管場所標章が滅失し、損傷し、又はその識別が困難となつた場合その他国家公安委員会規則で定める場合には、当該自動車の保管場所の位置を管轄する警察署長に、その再交付を求めることができる

E‐Gov法令検索「自動車の保管場所等に関する法律

 ちなみに申請の手続きですが、窓口申請とワンストップサービスによる郵送の手続きがあります。警視庁のHPに手続きの手順があり、必要書類をダウンロードして、必要事項を記入した後、警察署へ向かうか、ワンストップサービスを利用して、郵送で保管場所標章をもらうという方法があります。(ワンストップサービスは令和4年から開始)自動車の購入に際して、そのような証明書が必要なのです。

警視庁「自動車保有手続のワンストップサービス」より

 では、なぜ保管場所標章が必要になったのでしょうか。平成2年(1991年)に保管場所標章制度が創設されます。創設の背景として、1991年ごろは、「青空駐車」と呼ばれる、車庫がない場所に車を駐車する行為が頻発している時期でした。「青空駐車」とは、「道路を自動車の車庫のように使用し長時間駐車すること」を言います。ちなみに、青空駐車は、「車庫法」と呼ばれる自動車の保管場所の確保等に関する法律によって禁止されている行為です。以下、条文になります。

(保管場所としての道路の使用の禁止等)

第十一条 何人も、道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない。

 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。

 自動車が道路上の同一の場所に引き続き十二時間以上駐車することとなるような行為

 自動車が夜間(日没時から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上駐車することとなるような行為

 前二項の規定は、政令で定める特別の用務を遂行するため必要がある場合その他政令で定める場合については、適用しない。

出典:e-gov法令検索「自動車の保管場所の確保等に関する法律

 青空駐車を厳格に取り締まる中で、「保管場所標章を交付した警察署に対する照会により、保管場所の位置の 簡便・迅速な調査が可能」「自動車の保管場所を外形的に第三者に明らかにすることで、自動車の保 有者に保管場所の確保を動機付け、その継続的な履行を確保」を目的として、保管場所標章制度が創設されたのです。2022年度において、保管場所標章の交付数は登録自動車と軽自動車を合わせて797万2635件、2021年中には848万3928件もの数が交付されています。

「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」について

 さて、今回の改正案について書いていきます。まず、改正案要綱に記載されている改正部分を引用します。

一 自動車の保管場所の位置等を表示する保管場所標章を廃止することとする。(第六条関係)
二 その他所要の規定を整備する。
三 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することと する

出典:警察庁「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案要綱

 第六条を削除することで、保管場所標章を廃止することになります。「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(概要)」では、「期待される効果」として、「自動車の保有者の負担軽減」「都道府県警察における保管場所関係業務に係る窓口業務の負担軽減」をあげています。

警察庁「自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部を改正する法律案(概要)

自動車における負担軽減について考える

ユーザーにとっての負担軽減とは

 今回の改正案では、ユーザーと警察庁側の負担軽減という面に主眼が置かれていました。そこで、負担軽減という側面で、お話したいと思います。
 

自動車の免許更新手続き

 まず、自動車を運転するには運転免許証が必要です。運転免許証は更新する必要があります。

第101条(免許証の更新及び定期検査)

 免許証の有効期間の更新(以下「免許証の更新」という。)を受けようとする者は、当該免許証の有効期間が満了する日の直前のその者の誕生日の一月前から当該免許証の有効期間が満了する日までの間(以下「更新期間」という。)に、その者の住所地を管轄する公安委員会に内閣府令で定める様式の更新申請書(第四項の規定による質問票の交付を受けた者にあつては、当該更新申請書及び必要な事項を記載した当該質問票。第五項及び第百一条の二の二第一項から第三項までにおいて同じ。)を提出しなければならない。

出典:警察庁「道路交通法(抜粋)

 免許証の更新をしないと、運転免許証は失効してしまい、自動車を運転できなくなります。その為、運転免許更新の講習や免許証の受け取りは、各都道府県の警察署か免許センターで行います。ただ、わざわざ行く必要性があるのか、疑問です。データベースで管理するなど、警察署側の負担軽減に動き出しているなら、こちらも改善を図った方が良さそうです。
 実際に、2022年7月から北海道、京都府、千葉県、山口県の4道府県でオンライン化が試行的に実施されており、2023年10月からは一般運転者もオンライン講習を受講できるようになっており、2024年度末にはゴールド免許更新の講習でオンライン化を実施する予定です。これは、一般免許も含めて、推進すべきでしょう。一方で、視力検査や免許証に載せる写真などは、警察署か免許センターで撮っているため、「オンラインでも、警察署に行くから意味がないのでは?」という疑問の声もありますが、それは、免許証を持っているユーザーが、自分たちで視力検査を受けたり、最寄りの写真屋さんで撮ればいいだけです。(企業勤めの人は、企業で健康診断を受けています)それを郵送なり、オンラインでやり取りなりすれば、警察署や免許センターに行く必然性は低いように思えます。そうなると、収入印紙や審査証紙も不要になるでしょう。ユーザーの経済的な負担軽減を考えると、オンライン化することで、余分な手数料の削減も可能でしょう。

道路使用許可申請

 実は、自動車ユーザーでなくても、自動車関係の申請で負担になっている面があります。まず、国は「道路」を以下のような定義としています。

「道路」とは、道路交通法第2条第1項第1号で以下の①から③とされています。

道路法第2条第1項に規定する道路
一般交通の用に供する道で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道をいいます。
道路運送法第2条第8項に規定する自動車道
専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で①以外のものをいいます。
一般交通の用に供するその他の場所
1、2以外で不特定の人や車が自由に通行することができる場所をいいます。
(不特定人の自由な通行が認められている私道、空地、広場、公開時間中の公園内の道路等)

出典:警察庁「道路使用許可の概要、申請手続き等

 また、道路における禁止行為が定められています。

道路における禁止行為について

道路交通法第76条では、何人もいかなる場合にあっても、交通の妨害となるような方法で物をみだりに道路に置いたり、道路上の人や車を損傷させるおそれのある物を投げるなどの行為を行うことは禁止(絶対的禁止行為)されています。

出典:警察庁「道路使用許可の概要、申請手続き等

 基本的に道路はいかなる行為も使用が禁止されているのですが、社会的価値を有するものに関しては、「一定の要件を備えていれば、警察署長の許可によって、その禁止が解除される行為を、道路使用許可が必要な行為として道路交通法第77条第1項に定めています」。

参照:警察署「道路使用許可の概要、申請手続き等

 道路使用に関しても、申請が必要との事ですが、基本的に警察署に出向いて、申請を行います。最近では、オンライン申請もできるようになりました。ただ、道路使用許可が受理されたら、警察署に許可書を取りに行かなければなりません。兵庫県警は、手数料もオンラインで納付できるようにしましたが、ほとんどの自治体は、警察署に出向くような形になっています。これも、完全なデジタル化を目指すべきでしょう。そうすれば、使用許可に必要な費用を減額することも可能でしょう。

駐車許可申請

 駐車許可申請とは、以下のようなものです。

駐車許可は、駐車せざるを得ない特別な事情がある場合において、申請に係る駐車の日時、場所、用務及び駐車可能な場所の有無等につき、審査基準に基づいた審査を行った上で、駐車場所を管轄する警察署長が許可をするものです。

出典:警察庁「駐車許可制度及び申請手続きについて

 駐車許可申請も、今までは警察署に行って申請と交付を行いましたが、申請に関しては、オンラインでも可能になりました。交付に関してもオンラインで完結できるようにすべきでしょう。わざわざ、警察署に行って、交付する理由はあまりないように思えます。
 その他にも、数多くの申請がオンラインでできるようになり、だいぶ効率が良くなりましたが、自治体によって申請方法が統一されていなかったり、未だに警察署に出向いたりと、時間の効率(いわゆる「タイパ」)という面ではまだまだ改善が必要です。また、手数料を取ることによって、ユーザーによる経済的な負担が重く、こちらもデジタル化によって、大幅な負担減をすべきでしょう。
 ちなみに、自動車関連には数多くの制度があります。今回のデータベースの整備によって、申請の面で、警察署側の負担軽減を図れるのか。交付の部分で、ユーザーが警察署に行く必要性がどれだけあるのか。今回の改正案の保管場所標章のみならず、他の制度への広がりに期待したいところです。

自動車を使いやすい社会へ

規制を柔軟化し、余計な仕事を増やさない

 今回の改正案は、データベースの整備に伴い、保管場所標章の廃止を目的としています。私は、これに関しては全面的に賛成です。自動車ユーザーの経済的・時間的な負担が大きく、早急な対策が必要なので、「たかがシール、されど、シール」です。他の制度にも、今回の改正案のような動きが出ることを期待しています。警察もお役所仕事なので、民間のように、柔軟に対応することは難しいです。国からの規制強化や増税をしていけば、現場の仕事が増え、本来の警察の仕事がおざなりになる可能性があります。他の業種と比べて、まだまだ進んではいませんが、現行の制度改革の一助となればと思います。次に、国会で質問してほしいことは、3点ございます。

国会で質問してほしいこと

①警察庁の窓口業務の負担軽減の件について。今回の車庫保管業務の他に、どれくらいの業務が、警察署に存在しているのか。また、それらの業務は今回の改正案のように、デジタル化の推進により、廃止あるいは縮小することができるのか。

②保管場所標章の他に、自動車免許制度更新のように、デジタル化が進まずに、未だにユーザー側が時間と費用を負担しながら、更新の申請を行っている。2024年度末には、ゴールド免許保持者を対象にオンライン講習を導入するなど、ユーザー側の負担軽減のために、一層のデジタル化が望まれる。デジタル化を推進し、オンライン化を完全導入できれば、自動車免許更新でいつまでも貼られている収入証紙などは、必要がなくなると思うが、収入証紙のように、他の制度における手数料は、デジタル化によって、どれだけ削減が可能か。また、将来的に、手数料の減額・廃止を視野に入れているか。

③保管場所標章の他にも、道路使用許可や駐車許可に関しては、なぜ警察署に来てまで、交付を受ける必要があるのか。申請・交付以外にも、書類作成の時間や警察署に赴くまでの時間、かかった手数料を経費として処理することなど、民間側にとって、大きな負担になっている。今回の改正案を契機として、他の申請もオンラインで完結するようにしていくべきではないか。また、窓口業務の負担軽減と謳っている以上、自動車に関連する制度の改革も進めるべきだと考えるが、その考えはあるだろうか。

 以上になりますが、今回の改正案は「賛成」で、これを契機にして、自動車ユーザーの負担軽減のため、様々な制度改革を含めて、自動車関連の減税を求めます。

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