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コロナ禍の労務Q&A その2

社会通念上の労働組合の立場から、コロナ禍の労務問題に関して列挙します。しかしながら、法律問題はケースバイケースが往々にしてある事をご理解頂きながらご参照頂ければと思います。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑪
~通勤電車での感染~

もしも新型コロナウィルスに感染した経路が通勤の電車であった場合、労災となりますが、その感染経路の証明に時間と労力を要することが考えられます。

【知っておきたい事】
労災申請は事後でも出来ますので、まずは健康保険の傷病手当金の受給手続きをすべきです。4日以上連続して業務に従事出来なかった場合に受給することが出来ます。仮に事後で労災認定された場合も、傷病手当金の受給とは矛盾しません。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑫
~家族が感染し自宅待機した場合~

咳が続いていたり、家族で感染者が出た事を理由に、健康であるにも関わらず、会社から自宅待機するように指示された場合、基本的には会社がその分の給与の全額を補償すべきです。

【知っておきたい事】
新型コロナウィルスは指定感染症に定められておりますが、単に感染が疑われているだけの場合には労働者に就業制限は課せられません。そのため、会社が感染疑いを理由として、業務命令として一方的に自宅待機を命じる場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」により働けなくなるのだから給与全額補償が原則になります。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑬
~整理解雇の条件~

基本的に、新型コロナウィルスの影響で経営が厳しいからと言って、会社が自由に解雇することは出来ません。会社経営の都合での解雇の事を「整理解雇」と言います。

【知っておきたい事】
整理解雇は次の4つの要件の正当性が判断基準になります。
1人員削減の必要性
2解雇を回避するための努力が尽くされている。
3解雇される者の選定基準や選定そのものが合理的であること
4事前に使用者が解雇される者に説明・協議を尽くしていること


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑭
~コロナ禍での業務量増大~

コロナウィルスの影響で人手不足や業務量増大に陥る職場もありますが、このような場合、会社に対して長時間労働の是正を求めるべきです。

【知っておきたい事】
会社には安全配慮義務があります(労働契約法及び労働安全衛生法)。つまり使用者には、労働者の心身の健康を損なう事がないように注意しなければならない義務を負っています。コロナウィルスのような緊急時は特に、業務に過度な緊張感やストレスにより、労働者に重い負担が生じやすいため、数多くの労働災害が発生しやすいことを理解しておくべきです。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑮
~特別休暇制度~

小学校が休校になり子供の世話をするために会社を休む必要も出てきます。この時、法的には会社は欠勤扱いする事も可能です。会社によっては特別休暇制度が採用されている会社もあります。

【知っておきたい事】
特別休暇制度は国も推奨しており、1日あたり8330円を上限として、助成金が会社に支払われます(新型コロナウィルス感染症による小学校休業等対応助成金)。
万が一、特別休暇とならない場合も、労働者は年次有給休暇を自由に取得することが出来ます(労働基準法)。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑯
~カスハラ問題~

カスタマーハラスメントがドラッグストア等で発生しています。例えば毎日同じ人が「マスクはないのか!?」と怒鳴ってくる等です。このような場合、会社は労働者の生命身体の安全に配慮する等により働きやすい職場環境の維持が義務付けられています。

【知っておきたい事】
2020年6月1日から大手企業に対して施工される労働政策総合推進法に基づく指針「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に対して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」により、顧客等によるハラスメントについて、相談体制の確保、被害者への配慮、被害防止の取り組みが望ましい措置として挙げられています。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑰
~コロナ禍の内定取消~

採用内定を得ていた会社から、今回の新型コロナの影響で事業縮小となった理由で内定取消しは出来ません。採用内定の取消しは解雇と同じです。

【知っておきたい事】
採用内定によって労働契約は成立します。つまり、労働契約法により、会社は自由に内定を取り消す事は出来ません。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑱
~コロナ禍の解雇~

新型コロナウィルス感染症の影響で工場が稼働せず、使用者から「今ウチにはあなたの仕事が無い。また工場が稼働したら必ず雇うから当面の間は我慢してくれ。」と言われた場合、使用者が離職について言及しているのか、休業について言及しているのかを明確に確認する事が最優先です。

【知っておきたい事】
確認の結果が離職であった場合、それが解雇なのか退職勧奨なのかを会社にはっきりさせてください。解雇とは使用者側からの一方的な労働契約の解約です。退職勧奨は労使双方の合意による労働契約の解約を目指した使用者側からの申込みに過ぎません。もし、退職勧奨を受け入れる場合、「工場再稼働時に再雇用する旨」について具体的な念書を作成しておくべきでしょう。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑲
~コロナ禍の解雇~

小学生の子を持つ親で、会社に特別休暇を取得させてもらえず、年次有給休暇も使いきっており、小学校一斉休暇となった事で欠勤扱いとなだた場合、会社をクビになるのか?

【知っておきたい事】
なりません。例え就業規則で「欠勤が何日間に及んだとき」などと記載されていても、解雇には客観的合理的理由と相当性が必要になります(労働契約法)。


●新型コロナ感染症に関する労働問題⑳
~時差出勤を提案する~

満員電車の通勤で自分も新型コロナウィルスに感染するのではないかと不安な場合、迷わず時差出勤を会社に求めるべきです。

【知っておきたい事】
使用者には、労働者の健康等について、安全配慮義務があります。(労働契約法)
朝の通勤は、閉鎖空間であり、かつ乗客同士の距離がとても近いため、新型コロナウィルスに感染するリスクがあります。労働者が新型コロナウィルスに感染しないようにするため、会社は労働者の要望に応じて、できる限り時差出勤を認めるべきです。



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