#49 アルコール添加について
今回の問題
アルコール添加について述べよ。
自分の回答
200字回答
アルコール添加とは、上槽前に醪に醸造アルコールを添加することである。江戸時代から「柱焼酎」として行われてきた技術だが、戦中・戦後の米不足の時代にはコスト引き下げ・増量の目的で大量のアルコール添加が行われ、三増酒のような悪いイメージを生んだ。現在では醸造技術の一つとして、香味を劣化させる火落ち菌の増殖を防止し、香り高くすっきりとした味に仕上げる効果を期待して行われる。(184字)
回答の要素
アルコール添加について
上槽前に醪に醸造アルコールを添加すること。
上槽の3日前から前日、あるいは直前に実施される。
香味を劣化させる火落ち菌の増殖を防止し、香り高くすっきりとした味に仕上げる効果がある。
特定名称酒では、添加できる醸造アルコールの重量が白米重量の10%以下に制限されている。
清酒に添加する際は、アルコール分を30%に調整する。
歴史について
江戸時代から「柱焼酎」として行われてきた技術。
戦中・戦後の米不足の時代には、コスト引き下げ・増量のためにアルコール添加が行われた。
アルコール添加によって酒を3倍かさ増しする「三増酒」のような悪いイメージを持つ人は多い。(2006年の酒税法改正によって三増酒は清酒の定義から外れた)
現在では醸造技術の一つとして、香気成分を引き出す効果を期待して行われる。
回答の構成
・上槽前、醪に添加
・江戸時代「柱焼酎」
・戦中・戦後はコスト引き下げ・増量目的、三増酒
・火落ち菌の増殖防止、香り高くすっきりとした味に仕上げる
回答の補足
アルコール添加酒は戦時中に満州国にて研究・製造された。満州国内での清酒製造における醸造条件が悪かったことや、そもそも寒すぎて既成の清酒では凍ってしまうことなどから、醪に醸造アルコールを添加する研究が始まった。やがてその技術が日本国内にも入ってきたが、そのままでは旨みやゴク味が弱いため、乳酸・コハク酸・クエン酸などを添加するようになった。こうして三増酒や合成清酒が生まれたのである。
アル添の功罪、特に三増酒や合成清酒については批判されることが多いが、戦中・戦後の米不足を大いに補ったことは事実であり、同時に日本の高い科学技術の賜物でもある。この辺りはぜひ 坂口謹一郎『日本の酒』 を読まれたり。
なお、香り成分は水よりアルコールに良く溶け込む。全国新酒鑑評会の出品酒に純米大吟醸よりもアルコール添加した大吟醸が多いのも、その理由が大きい。
自分も思想としては純米酒が好きだが、味の違いは正直ほとんどわからない。
また、柱焼酎は元禄期(1688~1704年) にはすでに普及していたという(小野2022)。
他の回答
先人たちの回答
参考文献
J.S.A SAKE DIPLOMA 教本(Third Edition)p. 093
お酒のはなし 6. 醸造アルコール, 橋本屋酒店, 閲覧2023年7月5日
当蔵の醸造アルコール添加についての考え方, 尾畑酒造, 閲覧2023年7月5日
SAKETIMES, 三増酒の出来るまでの経緯と純米酒復活に至るまでの流れ【Vol.1】「合成酒と三増酒の登場」と「満州国とアルコール添加酒」, 2015年4月8日, 閲覧2023年9月21日
小野 善生, 清酒製造業における革新Ⅱ: 南都諸白から丹醸そして灘酒に至るイノベーションの史的考察, 滋賀大学経済学部研究年報, 2022, 第29巻, p. 1-25
※ 引用時に出典URLを明記したものは省きました。
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