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中国人の友人がメイクをする理由

中国人の友人に「なぜメイクをするの?」と聞いた。

こうした質問ができるのは、私がメイクをしないから。乾燥対策のためにリップを持っているだけで、口紅もチークも何一つ持っていない。時々、「メイクは社会のマナーだ」という言葉を半分信じて、企業を訪問する時や、ホテルでのお食事会に行く時などにメイクをしなくちゃいけないかなと頭をかすめるのだが、だいたい前日の夜のことで、今さらメイク道具を揃えることもできないし、メイクの仕方もわからないから結局、少し綺麗めの格好だけして「すっぴん」のまま家を出てしまう。

私がメイクをしない理由は2つあって、1つは単純に「めんどくさい」から。お金も時間も自分の顔を飾るために使いたくないというのが本音。2つ目は、なんとなく「自分らしさ」を自分に強要している結果なのではないかと思っている。ナチュラルなイメージを持たれている私はそのイメージを壊したくないという謎のプライドを持っている。私も一応は女性だから綺麗と言われたらそれなりに嬉しいのだが、綺麗と思われるよりも周りの人から「ナチュラルなイメージ」が持たれなくなる方が嫌なのだ。(これは変な考え方で、別にメイクする人がナチュラルでないとは思っていない。)

そんな私も本当に綺麗なメイクをしている人を見ると素直に綺麗だなと思う。しっかり自分の美のお手入れをしていて素敵だなと思う。

ある時、話の流れで中国人の友人に「メイク綺麗だね」と伝えたら「メイクしないで外には出れない」と答えた。

そこで私は彼女に「なぜメイクをするの?」と率直に聞いてみた。

そしたら彼女は意外な返事をした。

「それは、日本人だと思われたいから。中国人であることを隠すため。」

6年間日本に暮らしている彼女は日本語がペラペラで、対面で会話しても日本人だと思って話し続ける人も多いと思う。

「なんで中国人であることを隠したいの?」
と聞く私に彼女は、
「中国人だというとめんどくさいんだよ。色々言われる。嫌味みたいなことも言われることがある。例えば、「中国人って行列に割り込んでくるんでしょ?」とかね。それに返事するのがめんどくさいんだよ。」

日本が持つ中国へのイメージはあまりにも偏っていることは前から感じていた。世界で最大の人口を抱える中国、国土面積も広大な中国に多様性がないわけがない。そもそも国と国民一人一人は一緒ではない。

日本で報道される中国の姿が築き上げたステレオタイプがどのように彼らを傷つけているのか、私はあまり考えてこなかった。

彼女は中国人としてのアイデンティティをなくしたいわけではない。
中国人であることを恥に思っているわけでもない。 

でも彼女が表現するように、「中国人であることが相手に知られる」ことが「めんどくさい」はリアルな表現だと思う。
嫌な思いをするくらいなら中国人だとばれなければいい。
そして日本人に見えるようなメイクをする。
思えば、彼女は本名を使わずにあだ名を使っている。私もつい最近彼女の本名を知ったばかりだ。

自分の顔も名前も嫌いじゃないけど、日本では都合が悪いから隠す。自分に置き換えて想像してみると息が詰まる。

「めんどくさい」からメイクしない私と「めんどくさい」からメイクする彼女。
「自分らしさ」への変なプライドからメイクしない私と、自分のナショナリティを隠すためにメイクする彼女。

彼女にとってのメイクはただ単に自分を美しく見せる以上の意味を持っていた。メイクはある人にとっては、自分を守るための工夫でもあるのかもしれない。

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