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12/12 日記のようなエッセイのような

「今日は世田谷線散策をしよう!」

すでに異議を挟まない感じで発表する私に、夫が「賛成!」と声を上げる。基本的に週末の予定を決めない私たちは、毎回その日の朝にどうでるかを決めるのだが今日はこんな感じだ。近いのに実は越してからまだ攻めていなかった世田谷線沿い。夫に至っては、なんと世田谷線に乗ったことがないという(なんてことだ。)というわけで、世田谷区民として先輩の私が、初心者二人を引き連れて、まずは小田急で豪徳寺駅に向かった。

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そして思い切り迷った。なぜ迷う。豪徳寺に行きたいだけなのに。あるあるだがGoogleマップで“豪徳寺”と検索したら、“豪徳寺エリア”という体で、よくわからない住宅地のど真ん中に誘導されていた。厄介なのは、招き猫の写真がちゃんと現れるところだ。罠かよ。冷静に考えたら“こんな場所に寺はないだろ“と思うのだが、これぞ考えることを奪われた哀れな現代人。情けない。悔しさで涙ぐみながら(本当に私はすぐ涙が出る)お腹減ったーと小言を言っている夫を後ろに残してぐんぐん歩く。着いても尚テンションが下がり続ける私に反比例するように、夫はどんどん笑顔になっていく。わざとらしく「どうしたの咲ちゃん!」と笑顔を振りまいていく。ピリピリしているのがバカらしくなる。私が冷静さを失うにつれ、夫は木のようになっていくのは、いつもの通りだ。そんなことはよそに、娘は「にゃーにゃあ!」と言い、ひたすら供養されている招き猫を持ってくる。こらこら、戻しておきなさい。気づいたら気持ちも落ち着き、のんびり墓場散策をしていた。

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その後、豪徳寺の民である友人に聞いたおすすめのレストランに行くが、アホみたいな行列が出来ていたのでプラン変更。どうしようかね、と話していた目の前に急に現れた、これは、カレー屋か…?という店。瞬間、美味い店センサーが入る。ここは美味いぞ絶対。店長らしきのお兄さんの青いセーターがひたすら青い。中華料理店をそのまま居抜きして始めたような店内の真ん中には石油ストーブが置かれ、その上ではやかんがシュンシュン音を立てている。娘のためにオレンジジュースを頼もうとすると、「あ、娘さんにですか?サービスで出しますよ。」と言われた。嬉しい。自分へ向けられる優しさ以上に、娘に向けられる優しさに弱い。ありがとうございます。そしてホットチャイ、死ぬほど美味いですね。二人でライス大盛りで頼んだ木の子とチーズのカレーは、すぐにペロリと食べてしまったほど美味しかった。また来よう。ごちそうさまでした。

食わず嫌いであまり食べなかった娘のために近くの店で揚げたての練り物を買って、世田谷線に乗り込む。世田谷線、かわいい。四角いフォルムが可愛いし、色んな色があって可愛い。そして一日乗り放題切符は大人でも一人340円という安さ。お財布もニッコリだ。

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そうこうしているうちに、毎日のスケジュールに忠実な娘は13時を過ぎたあたりで急に寝て、大人のゴールデンタイムが始まる。にやけ顔と急ぎ足になるのを抑えきれずベビーカーを押し、松陰神社前のいい雰囲気のバー兼コーヒー屋に入る。薄暗い落ち着いた店内には壁一面アルコールの瓶がキラキラと置かれおり、下北沢にいそうな長髪のお兄さんが一人で忙しそうに切り盛りしていた。ベビーカーを見ても嫌な顔せず、丁寧に優しく対応してくれる。小上がりのような席を見つけ、座布団に座り、コーヒーを待つ。ここでも石油ストーブが置かれ、その上でやかんがシュンシュンと優しい音を立てていた。読書とおしゃべりをしながら15分ほどすると、丁寧に淹れられたコーヒーが出てきた。濃いのにえぐみがないのは、美味しい証拠。二つのフォークでみるみるアップルシナモンケーキが消えていく。静かに癒される両親の横で、娘はすやすやといい子で寝ていた。

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松陰神社を散歩していたら娘が起きて、再び三人の散歩が始まる。駅に向かう前に、神社の前のパン屋さんで明日の食パンを買う。商店街の本屋で「世田谷線沿線の本」という指南書を私が買っている横で、娘は行き交う電車を見ては「でんしゃ!えんしゃ!」と叫んでいる。夕方のハイテンションタイムだ、ジャンプが止まらない。やはりクリスマスプレゼントは電車だろうか、と思いつつ、本日最後の世田谷線に乗る。夕方の世田谷線は可愛い上に哀愁がある。名残惜しい。さようなら、楽しかった。来週もまた来ます。

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