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11/27 日記のようなエッセイのような

珍しく娘を保育園に預けた土曜日。「バイバーイ」とあっさり手を振ってもらったので、心置きなく夫と二人で出かけることにする。

電車に揺られて一時間、目的の上野駅に着いた。電車に乗っている間何度も確認した“パンダ橋口“という謎の出口をなんとか見つける。天気も良くて、清々しくて、思わず「来たね、パンダ橋口!!」と叫んで隣を見たら、全然知らない男の人が「えっ…」って表情でこっちを見ていた。恥ずかしくて死にそうだった。後ろの方をのんびり歩いていた無実の夫を、ばんばん叩いてしまう。

しばらく歩いていたら、ようやくお目当てのお店「ぐるあつ」に着いた。誕生日に夫からプレゼントされた本 Plant Based Tokyo に載っていた美しいヴィーガン料理を出すお店だ。スープ付きの定食を二人分頼み、ずらっとカウンターに並ぶスコーンやマフィンたちを眺める。甘党の夫が早々に「チャイなんとかマフィン」を選んでいた。

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しばらくして出てきた定食は、湯気がホカホカと上っていて、それはそれは美しかった。大根のフライは火傷しそうなほど熱くて、びっくりするほどおいしい。「これ食べた?すごいよ。」「こっちのお芋コーナーもいいよ。」「米が甘い。」と二人で感嘆しながら食べる。黙食の世の中に申し訳ないが、それくらい楽しくて美味しかった。

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店を出て「じゃあ!」とお茶の水に向かった夫を見送り、一人で浅草へ向かう。これから友人の家族撮影だ。カバンの中にはカメラがしっかり2台入っている。途中素敵な銭湯を見つけてそのまま入ってしまいたい衝動に駆られるが、何とか電車に乗って雷門へ行く。

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今日撮影するのは友人とその恋人、その祖父母だ。94歳なのにとてもしっかりしていてチャーミングなおばあちゃんと、一回り以上年下のシャイでお洒落なおじいちゃん。当時そんなに年下の男の子を夢中にさせたなんて、おばあちゃん、一体どれほど魅力的な女性だったのだろうか。おばあちゃんの笑顔はその辺の若い女子に負けないくらいキラキラしていた。

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夫と再び合流するまで時間があったので、思いつきでパン屋の「ペリカン」へ向かった。普通に売り切れていた。【品切れ、予約客のみ】というプレート越しに、店内にある大量の食パンを見る。申し訳なさそうな店員さんから渡された紙には、ペリカンのパンがイラストで優しく描かれていた。とりあえずキッチンに飾ろうと思う。

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夫との待ち合わせ先である「喫茶アロマ」に向かう。浅草の路地にあるカウンターのみのこの小さな喫茶店は、素晴らしいことに店内のトーストメニューには全てペリカンの食パンを使っている。ドアを開けて入ると、マスターと常連らしき芸人の人たちが楽しそうにお喋りをしていた。いつもの店、いつもの人たち、という優しい空気を感じながら、アウトサイダーとしてカウンターに座る。馴染みの店に行くのもいいけど、たまにはこういう訪問も楽しかったりする。天井に設置された小さなテレビでは、Jリーグで横浜なんとかと、なんとかなんとかが試合していた。

ブレンドコーヒー350円、バタートースト110円を頼む。程なくして温められたカップ&ソーサーが出てきて、マスターがカウンター内からスッと手を伸ばしてコーヒーを注いでくれた。綺麗な弧を見ながら、昔一瞬バイトをした喫茶店のことを思い出す。長く働いていた年下の先輩に「あれ、温めるのはカップだけですか?ソーサーは?」と聞いたら「いや、ソーサーは温めないよ..」と少し呆れ顔で返された。今でも、ソーサーは温めてたら素敵だと思う。

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少し小腹が減った頃に食べたバタートーストは、叫びたくなるほど美味しかった。しばらくすると夫が到着して、彼が頼んだオニオントーストも一つもらったが、これもすごく美味しかった。

それだけ食べたというのに、その後また二人で仲見世通りに戻って今度は焼き立ての人形焼をポイポイ食べた。中のこしあんが灼熱の熱さで火傷したがやたら美味い。ついついそのまま餡なしも頼む。どっちも最高だ。

そろそろ帰ろうと歩き出したところに、急に現れた「中華そば」の看板。理性的に考えて2分くらい抵抗を試みたが、結局ガラガラーとドアを開けていた。驚くことになんと満席。踵を返そうとした瞬間、奥のテーブルに一人で座っていたおばちゃんが「ここ!相席!」と手招きをした。「ここね、二人でやってるから出てくるのはゆっくりなの。」「でもね、すっっっっごく美味しいの!前に一回食べて美味しかったから、今度はライス付きで頼もうと思って!」とまくし立てるように喋るおばちゃん、というよりおばあちゃんの歳であろう彼女は、綺麗に化粧をして豪華な襟のブラウスを着ている。一本の線で引かれた紫の眉が印象的だ。

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「お芝居見て、ラーメン食べれて帰るの。もう最高よ。」と言いながらチャーシューメンにライスをモリモリ食べる彼女を見ていたら、なんだが元気が出てきた。わかめに甘いメンマが乗った太麺のラーメンは、やっぱり美味しかった。

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保育園に着くまでの間の夜道。認知症のおばあちゃんに急に助けを求められ、彼女の家とは全く関係ない他人の家の玄関のチャイムを一緒に押しまくるという珍事件がありつつも、なんとか時間通りに娘を迎えに行くことができた。いつもいない父ちゃんの存在にテンションが上がっている娘がかわいい。

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自転車やベビーカーというお助けアイテムのない帰り道は、やっぱり全然進まない。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、ガードレールで遊んだり、急に走り出したり。残っていた餡なし人形焼きも、彼全部食べられてしまった。また買いに行かないと。今度は三人で行こうね。

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