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小説備忘録〜「私の未緒のビオトープ」編〜

いつも勢いで一気に書きあげては経験値が0に戻るを繰り返しているので、どう小説を組みたてたのか未来の自分にメモを残しておこうと思います。

先日発売された「文芸ムックあたらよ」、これにはあたらよ文学賞の受賞作も掲載されており、私のも一作載せていただいているのですが、実は「私たちの月の家」以外にももう一作送っていまして、そちらは二次選考で落選してしまいました。

月の家は思いついてから4日か5日ほどで一気に書き上げまして、ドーパミンドバドバ中に何を考えていたのかあまり覚えていませんので、数ヶ月かけて割と冷静に組み立てていった「私の未緒のビオトープ」の備忘録を書いていきたいと思います。

✱✱✱

もともとタルパ(イマジナリーフレンドのようなもの)という概念に興味があり、色々調べていた頃、NEEDY GIRL OVERDOSEのにゃるらさん原作の「アタマのナカの鈴せんぱい」というタルパ漫画に出会いました。

こちらはなかなかに壮絶な終わりを迎えるのですが、「タルパを肯定し、タルパと共存していく話があっても良いのではないか」と自作でやってみることを決意。

……したはいいものの、なかなか話を上手くまとめられず。

もともとは「優花というレズビアンの女子大生がマッチングアプリを使って出会いを求めたところ、薫子という女性と会うことに。待ち合わせ場所に行ってみれば、彼女は年齢詐称しており実は自分の母親世代で、しかもビアンではないという。怒って帰ろうとするも、『私の親友と生き写しのあなたにお願いしたいことがある』と呼び止められ……」というストーリーでした。ちなみにタイトルは「私たち、きっとまた会える。」

しかし頭の中で2人が上手く動いてくれず、導入部分でキーボードを打つ手が止まり、中断。

また動き始めるまで別の話を書いておこうと、次に取り掛かったのが「人生に疲れ果て、追い討ちのように初恋の元同級生の結婚式に呼ばれた主人公・逸花が、地元に戻るフェリーの一夜で色々な出会いをし、失恋を癒していく話」。
けれど全体的に地味で起伏がなく、賞レースで勝てる未来が見えずこちらも中断。
それに”大人になっても定期的に連絡を取るような仲じゃないかぎり、いくら仲がよかったからって何年も前の元同級生を結婚式に呼ぶとかしなくないか?”という疑問が消えず、結婚式にお呼ばれ設定も白紙に戻る。

タルパは忘れて別の話を考えようかとアイディア出しをするうちに、ふと「逸花と薫子を会わせてやりたい」と思いつき、二つの物語の要素を足したり引いたり割ったりいじくり回し、何とか形に。

そうして出来上がったのが「私の未緒のビオトープ」でした。
”タルパ”と”走馬灯事前登録システム”は前者の物語で大きな役割を果たしていたためそのまま流用したのですが、結果日常ものを書いた後者と相性が合わず「急に出てきたSF的ワードが浮いてしまった」と講評される結果になってしまいました。

色々と拙い部分の多い作品ですが、ずっと書きたかった「タルパ百合」ができて、個人的には学びの多い短編小説となりました。

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