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「ライターになりたい」大学生の息子さんへ

「子どもがライターになりたい、と言っているんです」

その方は、ちょっと心配そうにそうおっしゃった。

いわゆる「大手」と言われる会社で責任ある立場にある方なので、心配になってしまうのは仕方ない。だって、「どこに所属するわけでもなく、どうやって仕事をもらうの?」「ほんとに食べていけるの?」と、それはそれは心配になるだろう(これは言われたわけではなく、そう思われるだろうな、と自分で思う)。そういえば、私も前の会社を辞めてフリーランスになるとき、親からは反対された。

「そもそも、ライターってどうやってなるんでしょう……」

そんなお話になり、その場では「出版社に入って、そこから独立する人が多いですね」という話になった。

取材前の待ち時間という限られた時間だったので、その話はそこで終わってしまったけれど、もしも当の息子さんが目の前にいたら、もしかしたら違うアドバイスをしていたかもしれない。

最近思うのは、ライターにとって「書ける」ことは当たり前のスキルで、「書ける」人ばかりが集まっているなかで選ばれる人になるには、書けること以外の強みが必要なんだ、ということ。

私自身、フリーランスになって10年この仕事を続けられているのは、医療系の出版社から医療系のコンサル会社に渡って……と医療畑を歩いてきたなかで、「医療」という一つのわかりやすい看板を得たから、だと思う。

そう考えると、意外と、出版とは全然違う分野を一生懸命歩いたあとでライターの道に入り込むのもひとつの選択肢なんじゃないかな、と。

もちろん、どんなライターになりたいのか、どんなジャンルで書きたいのか、「この媒体に書きたい!」というものがあるのかでも変わってくると思う。ただ、ライターって、その人が歩んできた道によって、広がる景色(声をかけてもらえる仕事も、インタビューのときの引き出しも)が変わる。だからこそ、出版社や編集プロダクションから独立という昔からの王道スタイルではなく、あえて違う世界をどっぷり覗いてからライターをめざすのもいいんじゃないかな、と。


その場ではお伝えできなかったけれど、そんなお話もできればよかったなと後から思い、noteに記しておこうと思いました。

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