師匠と乾杯

私が本格的にダンスを習いたいと、都内ダンススタジオに進出し始めた20歳の頃。

初めて勇気を振り絞って行ったダンススタジオの、いわゆる体験レッスンという機会で、
いきなり運命的な(私が一方的に運命だと思っている。一方通行。笑)師匠との出会いを果たしてしまった。

私が賭けてきたダンス人生、数えきれない程のきっかけやチャンスをくださった、大好きな師匠。
師匠の踊りが大好きで、振付が大好きで、人柄が大好き過ぎて、とにかく真似をした。
師匠みたいになりたかった。
…いや、もはや師匠そのものになりたいとすら思っていた。
だからとにかく、真似をした。
踊りだけじゃない。髪型からメールの文章の書き方、句読点の打ち方まで。

ゆえに憧れすぎて、もちろん反抗期もやってきた。
認めてほしいのに、まったく褒めてもらえない悔しさに、卑屈になったり一時期離れたり…
今思えば、どれも愛の鞭であったのだし、むしろ厳しく育ててもらえる、それほど私に対してエネルギーを注いでもらえるなんて、感謝こそすれ、卑屈になることではなかったはずなのだけれど。

そんな反抗期も経て、確実に私の細胞にまで染み込んでいった、師匠イズム。

話は戻り、私がまだ師匠の生徒としては新人であり、毎回のレッスンもただただ緊張していた頃のこと。
ようやくレッスン後の、"師匠を囲んでちょい飲み会"にも、参加する勇気が持てるようになった私に、

『さきちゃんはさ、何やりたいの?』

突然師匠から興味を注がれ、硬直しながら恐る恐る答える私。

『…バ、バックダンサーです。師匠が踊っている姿を見て、憧れました…』

本当は、メインのアーティストよりも、バックアップで踊っている師匠ばかりを目で追っていた…とまではさすがに伝えられず。笑

『そっか、そういうの、どんどん声に出していった方が絶対いいよ!何か仕事があった時に、そういえばさきちゃん、やりたいって言ってたな、って、思い出してもらえるから。』

もう15年以上も前のことなのに、
この話を聞いた時のシチュエーションを覚えている。

師匠のレッスン後、目黒の居酒屋で。
師匠をみんなで囲んで座っていたけれど、私はちょうど師匠の向かいの席で、師匠のこの言葉を聞いていた。
これから始まるダンスライフへの期待と希望でワクワクしたこと、
この数日後に、さっそく師匠からいただいた、番組収録でのバックアップダンサーのお仕事。

それから約15年。
生活すべてがダンスに彩られ、
師匠と、師匠をこよなく敬愛する生徒達と、
数えきれないくらいの "乾杯" をしてきた。

"乾杯" の時間って、
いつも師匠が素敵な話をしてくださる時間で、
それをみんな聞きたくて、
レッスンの時間とはまた違う、深い繋がりと信頼関係が、自然と出来上がっていく、
大切な大切な時間だった。

ダンスの練習、公演本番に向けて汗も涙も流しまくっていた時間と同じくらい、
今思い返すと、まだ切ない気持ちが勝ってしまう程、楽し過ぎた、濃過ぎた時間。

かけがえのない、とっておきの思い出。

また師匠を囲んで、"乾杯" したい。

#師匠と乾杯 #ダンス人生を彩る乾杯 #また乾杯しよう

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