2024-01-20 夏目漱石『こころ』
Kの自殺は失恋によるものではない。
失恋は、Kの中でこの世を去る思考が始まったきっかけに過ぎない。
学問に生きる理由を見出していた優秀な学徒が、
初めて異性へ好意を持ち、浮ついている自分に戸惑っていた。
そのとき、懇意にしていた友人がその異性と結婚すると聞き、
友人やその異性に対して不愉快な感情を持つ自分を目の当たりにした。
学問に邁進する高尚な自分が、他人への(特に色恋が絡む)感情という、
生産的でない、説明のつかないものに精神を支配されている。
生きる理由であった学問