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感謝のしずく

「あっ。・・・ありがとうございますっ!!」


100円でそんな反応が貰えるなら。

そんなことを思った日。

ちっちゃなこと、でもおっきな感情。


某日、とある友人にプレゼントを買いに、私は有楽町にあるSuiSavon-首里石鹸-という店に出向いた。

その名の通りSuiSavon-首里石鹸-は沖縄・首里発祥のボディケアブランドなのだが、東京にはこの有楽町店1店舗のみ、その他は大阪・名古屋に数店舗、残りは本店のある沖縄、と、私も姉から教えてもらうまで知ることのなかった隠れた名店だ。

そして、ここのハンドクリームが逸品なのである。
宣伝大使でもなんでもないのだが、
ベタつくのが嫌いな人に本当におすすめである。

特徴的なのが、その素材の”水”っぽさにある。
手の甲に乗せた途端、それはクリームから朝露のような水滴と化する。

そしてそのままするすると皮膚に吸収されていき、ベタつきなどとは無縁となる。
究極のサラサラ感、それでいて、高保湿。


これ以上良さを羅列するとこのハンドクリームのための文章になってしまいそうなのでこれくらいにしておくが、とにかく、人に勧めたい商品である。


その目当てのハンドクリームをプレゼント用に購入しようとレジに向かうと、レジ横の募金箱が目に留まった。

『首里城復興寄附』

そっか、首里石鹸・・・首里・・・首里城があるとこだ。

首里城が焼失してしまった痛ましい事件は2019年10月のこと。あれから三年が経過していた。
私は残念ながら焼失前の首里城をこの目で見たことはなく、
来場受け入れを再開した頃に一度だけ訪れたことがあった。

きっと、焼失前はさぞかし荘厳で、地元の人のシンボルだったのだろう。
沖縄にゆかりのない私でも、焼け跡や資料館からひしひしと伝わる何かを受け取った。


そんなことを思い出しながら、
私も再建されたらまた訪れたいという願いを込めて、レジの店員さんがプレゼント包装をしている間にチャリン、と100円玉を箱に入れた。


その時だった。


その音に気づいた店員さんが、
まるで自分が何かプレゼントを受け取ったかのように蒸気した顔で
「あっ。・・・ありがとうございますっ!!」
とお辞儀した。


自分の働く店先に置いている募金箱にお客さんがお金を入れてくれたら当たり前にみなそう言うのかもしれないし、そう対応しろ、と教育されているのかもしれない。

ただ、私にはなんだかそれ以上のものが感じられて、込み上げるものがあった。
じんわりと、胸が温かくなった。

この店員さん、本当に嬉しそう。

箱の中には1000円札なんかも入っていて、正直私の募金した100円などむしろ恥ずかしくなるくらいだったが、
気恥ずかしさに勝るくらい、私はその店員さんの反応を見てとても幸せな気持ちになった。


それは募金をしたことによる満足感でも、それを褒めてもらえたことへの嬉しさでもなくて、

ただただ純粋に、店員さんの心からの”嬉しい!”という気持ちや本気の感謝が伝わってきて、わぁ、なんか、募金しただけで想像以上のものもらっちゃったな、みたいな感覚である。


100円でそんな反応が貰えるなら。
たった一言、
たった数秒のやり取り。
その一滴のしずくで、温かいものがどんどん広がっていく。
毎日きっと、こうやって小さなことでも楽しさや幸せが生まれる。

ちょっとのことでも、おっきな感情。




そんなことを思った日。

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