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【詩】こころやさしく怒らぬ者共

やさしさにつつまれて怒らぬ者よ
怒りのないその場所でしあわせかい?

おおらかなこころで憎まぬ者よ
憎しみのない場所でしあわせかい?

つよいこころを持ち悲しまぬ者よ
悲しみのない場所でしあわせかい?

あなたたちはやさしく
      おおらかで
      つよい

殴らずに笑い
怒鳴らずに許し
泣かずに去った

やがて時が過ぎ

無言で殺すのだ

無憤怒無憎悪無悲哀のまま

無言で殺すのだ無慈悲に

怒りが悪であるかのように
憎しみが悪であるかのように
哀しみが悪であるかのように

どこかでそれを知り
繰り返しつぶやいた
ただ平坦に 平坦に

やがて
無言で殺すのだ

星の輝きを讃えて褒められ
星の遠さを嘆けば叱られる

殴らぬ勇気は讃えられ
震える拳は詰られる

堪えて立てば許されて
泣き崩れれば踏みつけられる

星の輝きを讃え殴らぬ勇気を持ち堪えて立ち上がりやがて
無言で殺すのだ

こころやさしく怒らぬ者共
殺す前に殺された者共
誰を殺した?
誰に殺された?

くだらない名誉のために
誰を殺した?
誰に殺された?

きみを殺した者たちは今
きみの命で酔っ払い
きみの命で肉を喰む

きみは牢獄で怒り
きみは牢獄で憎み
きみは牢獄で泣く

やつらは笑っている

手遅れだが言っておこう
怒りを制するな
憎しみを制するな
哀しみを制するな

揺れ動く心と涸れぬ情動の支配を受容し
全開でまさに今この瞬間
       発動せよ

手遅れだが言っておこう
きみから湧き出る感情には
ただのひとつも

そう
たったひとつの悪もないのだ

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