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窓のない古民家 一体誰が住んでいたのか

この3日間、めったに泊まれないような家に泊めていただいた。
いわゆる、古民家をリフォームした家。
広い土間がある、昔の商家の姿をかなり残した家。
素晴らしい仕上がりだった。

自転車なんかもおけちゃうくらい、玄関は広い。

そして、当時のガラスがとにかくうまく残されている!

あ〜 こういう改装やりたいなぁ。こういうところに住みたいなぁ!
と思う仕上がり具合。

おうちは、海から10分もしない所に立っていて、海風が気持ちがいい。
そう思って玄関の引き戸を開けて中に入ると……
全く空気の動きを感じない。
そこが、この家に入って最初にアレと思ったことだった。
日本家屋は、大体風がぬけるようにできているものだけれど、
この家、全く、風が抜ける感がない。

そう思って、家の中を見回すと。
そう。窓がない。


あるのは、トイレの窓と、玄関脇の壁につけられた小さな窓のみ。
完全に閉じられた空間なのだ。
その割に明るいのは、そこここにつけられた天窓のお陰。

廊下も半分くらいは天窓。
なので、出かける時に、スイッチを消さなくちゃと思ってしまうくらい、
電気をつけていなくても、家中明るい。
窓がないから、風は入ってこないけれど、窓がある以上に明るい家。

しかも、この家、外から見ると、入り口が4つある。

なんじゃこりゃ?

一体どうなっているんだろうと、オーナーさんに
根掘り葉掘り聞いてみたところ、
昔は女郎屋さんだったのだのだという。

街道の関所沿いにあった女郎屋さん。
その一つが残っていて、それを買い取って改装したのだそう。
入り口が複数あるのは、入る口と出る口があるから。
お客同士が鉢合わせにならないように、
一方向に流れる動線だったのだそうだ。

なるほど。だから、同じ大きさの部屋が廊下沿いに並んでいたのか。
と納得する。
それぞれの小部屋に窓がないのは、お客がそこから逃げないように!

といっても、恐らく、入る時にお金は払っているでしょ?
私がそう言うと、オーナーが
「恋仲になって女郎と一緒に逃げたりっていうことがあったらしいよ」
という。「江戸時代の話だろうけどね」と。
曽根崎心中の世界だ。
それを予防するために、窓がなかったのか……。

上がりがまちをあがるとすぐに、三畳間、その奥に
4畳ほどの部屋があり、その間がガラスの引き戸で敷きられている。
手前の三畳間がお客の待ち部屋だったに違いない。
なんといったってここだけ特別待遇で、天井にファンがついているし、
ガラスの意匠もこっているから。

待ち部屋には、小さなランプが5つ。

使用中の部屋にはランプがつくしかけだったという。
ガラスの向こうの部屋には客待ちの女郎さん達が入れられていたのかなぁ。

家に歴史あり。
古民家に住むってそういうことだなぁを、
恐ろしく実感した三日間。

得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)