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キッチンの床下収納

先日の旧安田邸の写真を実家で母に見せたら、
極めて見慣れた台所だったらようで、
昔の典型的なお台所ね、という反応でした。
そうだ。母の実家は材木屋で、職人さんもいたらしいから、
結構大所帯。安田邸ほど立派じゃないにしろ、
それなりの規模があったんだろうな、台所。

水回りが真ん中にあるのは便利ね、という私にも比較的無反応。
水回りが真ん中の家は昔もあったのかもしれないと、
母の反応を見ながらチラリと思う。

個人的には、戦後の公団あたりから始まる、無批判で理由のない住居の西洋化は、今日のおうちの中の混乱を招き、家が散らかる遠因になっていると思っているので、母のこの反応は興味深かったです。昔のおうちの台所探索ツアーなんてどこかにないかしら。いってみたいものです。

もう一つ非常に気になったのが、台所の床下収納。
これ、指一本であけられるような板がフタになっていた。床中!
といったら、そうよ、昔はみんなそうだったの、と母。
見たことのない息子は、今だって、台所に床下収納あるじゃん、というのですが、そう言われて気がついたけれど、全然便利さが違うんだな、今の床下収納と、きっと。

一番の違いは、いたの開けやすさ。指一本でパッとあけられる手軽さは、今の床下収納にはないわけです。
そして、恐らく、昔の床下収納はもっと浅かったのではないかと……
今の床下収納は、収納力(ℓ数)を誇るべく、結構深いわけですが、
これ、ものを取り出すのに結構手間なんですよね。
特に重いものをかがんで取り出すのは危ない。

母も、床下には、梅干しとかぬか漬けとかが入っていたと言っていたことから推測すると、せいぜい、その瓶が収まる程度の深さだったのではないかと思います。もちろん、一升瓶を入れるような場所もあったかもしれないけれど、基本的には今の床下収納より浅くて板のフタがひょいっと乗っかったようなものが、台所の下全体にあったのではと思われます。

ネットで検索すると、今のプラスチックの床下収納ばかり出てくるのですが、1枚だけ、60年前のおうちのリフォームの写真を発見。
これを見ると、床は今の収納より浅そう。

となると、出しやすくて、かなりの収納力。
気温も安定しているので、しまおうと思えば、季節外の漆なども
しまえたのかもしれません。
こういういいものを、どうしてなくしちゃったんだろうなぁ。
こういうキッチンだったら、かなりの収納力があって、
アメリカみたいなパントリーがなくたって、
かなりの食糧が収まるっていうのに。

かつての日本の家は、ほんとにかなり機能的だったよな、と
こういう昔の家を見るとつくづく思います。その知恵がどんどん失われていくのは、残念なことこの上ないですねぇ。


得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)