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はじめての寄席

書籍だと
・吉田修一著『国宝』
・青崎有吾著『アンデッドガール・マーダーファルス』

アニメだと
・『昭和元禄落語心中』
・『物語』シリーズ通しての言葉遊び

ドラマだと
・『相棒』鑑識課米沢さんの立ち振る舞いとそれを切り返せる右京さん

朧な記憶だと
子供の頃になんとなく観ていた『笑点』

ここに上げた以外にも、生活の中で聞こえてくる音に『落語』というのか『噺家の話し方・間の取り方』に心地よさを感じていたのだと思います。

何年か前に斑鳩町のコーヒー屋さん『CAFE鍼灸ZADAN』さんで、お名前は失念してしまいましたが女性の噺家さんの『鹿政談』の演目を観させて頂く機会があってからというもの、
・古典落語の演目
・話の概要
・登場人物
・演目ごとの落ち
は、一般教養とまでは浸透していなくても、知っていた方が話題や見聞きするものの面白味が増すだろうな、と感じていました。

いつか寄席に行こう

この『いつか行こう』が積もり積もって、昨日(7月22日土曜日)『天満天神繁昌亭』で朝席を観に行くに至りました。

失礼ながら噺家の方々もどなたがどのような立ち位置で、どのようなお噺を得意とするかさえも判らない状態ですので、天満天神繁昌亭のホームページから比較的入り易そうな公演名を探すと

『~夏だ!お酒だ!カラオケだ!~ おはよう落語会』

朝席

という公演を朝席に見付けて、これなら『〇〇門弟会』とかよりは、初見でも受け入れて頂けるのでは。と、とにかく常連さんの邪魔にならない端の席を予約させてもらいました。

そしていざ当日、15分くらい余裕を見て公演場所を目指したのに、南森町の駅を90度間違って出てしまい、急遽携帯電話のGPSをオンにして現在地と目的地の間を詰めながら開演2分前に到着。「まだ始まっていないから大丈夫ですよ。」と扉を開けていただいて、端っこの席に着席。周囲の様子を見まわすと、公演を観に来ているお客さんたち『緩さ』にびっくり。自宅の居間のようなくつろぎ方で、映画館の『これからようやく公開された観たかった映画を観るんだ!』というより、『そうめんでも食べながら高校野球でも観ましょうか』のような、場の雰囲気がとても気持ちいい。

なんなんだこの場の雰囲気は・・・

と思っていると、幕が開いて最初の、月亭秀都さんのお噺がはじまりました。

なんなんでしょうこの柔らかい場の空気。大人相手の公演だけでなくて、落語の楽しさを伝えるために、子供たち向けのイベントにも参加されているお話もされていました。自身は子供のころに噺家さんのイベントに触れる機会はなかったけれど、子供のころの経験ってその後の人生の通過ポイントに設定されたり、興味を向ける対象になるので、落語を知る機会に居られた子供たちは幸せだなって。

続いて、桂勢朝さんのお噺。

間の取り方が素敵。〇くざ屋さんのそれみたいで、こういう間の取り方を仕事でしていたら、周囲を完全に自分のペースで動かせてしまいそうな。自身の人生の視野を広げるために『一番やりたくない職種を3年間続ける』と宣言して営業職に就いたことがあって、その時に営業の仕方を盗もうと目標にしていた方も、〇くざ屋さんのような間の取り方で、雰囲気が重なりって『その方は元気にされているのかな』と頭を過ぎりました。

噺家さんは、ご自分で面白いお話をしていても笑わないものだと思っていたのですが、桂勢朝さんはお客さんを喜ばせるぞ、喜ばせるぞ、いいか喜ばせるぞって気持ちが出ていて、ご本人も笑ってしまっていました。観させて頂いていると、つられて楽しさが累乗されてしまいました。

お二人のお噺を聞かせていただいた後は『座談会』。

『座談会』というくらいだから、三人出てこられて座ってお話されるのかな?と思っていたら、床に座布団は一枚もないし、立ち話のまま座る様子がなくて『あゝそういうことなんだ。』と一つ知恵が付きました。

最後は、笑福亭伯枝さんのお噺。

『最後を締める噺家が、その公演の大将』なんだろうなという、空気はなんとなく察していたのですが、笑福亭伯枝さんと桂勢朝さんは同い年と直前の座談会でお話されていて、今回観させて頂いている公演では、比較的噺家の方たちもお互いに遠慮のいらない公演なのかなと感じました。

それでもやっぱり、月亭秀都さんは大先輩二人を前にとても気を使っていた様子がしっかり伝わってきました。

『座談』なのに一向に座らない一行

笑福亭伯枝さんのお噺(演目)は『らくだ』、寄席で初めて観させていただく落語なので、公演の席を予約するときに「『らくだ』とはどんなお噺なのか」しらべてみると、
・古典落語の演目
・上方落語
・真打の大ネタ
・全てを演じると1時間近くなるため、途中で切られることがある
と、なんだか凄い由緒正しい落語を初見で観させていただけるみたいと、寄席そのものが初めてで楽しみだったのですが、この演目が『鹿政談』に続く二演目めになるので、師匠に二つめの持ちネタを許可されるのと、似たような嬉しい気持ちになったのかもしれません。知らんけど。

登場してきたのは5人。全員笑福亭伯枝さんが演じているのに、顔が違うのに驚きました。中盤は酔っぱらって紙屑屋さんの久六の人格が変わるので6人。あれだけ長いお噺を暗記するのもとてもとても真似できないし、抑揚をつけて複数の人の性格まで表現してしまう。笑福亭伯枝さんをはじめ、そういうお噺を一人で何話もできてしまう表現の職人集団。『無形文化財』っていう分野みたいなのだけど、自身から見たらそんなことができる人たちは、みんな国宝です。

噺家さんみんな国宝大認定。

今までに体験したことのない、すーっと入ってくる楽しさと、自然にこみあげる笑い。噺家さんはもちろん、場の人たちも素敵。仕事や人間関係のもやもやが吹き飛びました。

また席を予約して観に行きます。

余談ですが、桂勢朝さんがお噺のなかで『天満天神繁昌亭は大阪天満宮さんがずっとタダで土地をかしてくれているので、毎回お参りしています。皆さんも是非。』という一節があったので、公演の後お参りしてきました。

暑かった。


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