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自分のことを頭がいいと思い込んでしまうあなたへの処方箋、 住野よる『また、同じ夢を見ていた』

「やっぱり、お嬢ちゃん。誰とも関わらないなんて、駄目なんだ。人と関われば、こういう素敵な出会いがある」

住野よる『また、同じ夢を見ていた』

今回処方する本は、住野よるさんの『また、同じ夢を見ていた』です。

この本は「自分は頭がいいと思い込み、プライドが高いことで、周囲から孤立してしまう人」におすすめの本です。

主人公である小柳奈ノ花は頭が良く、おませな女の子であり、それを鼻にかけてクラスメイトを下に見てしまい、そのことにより、クラスで孤立していました。そんな奈ノ花が、夜の仕事をするアバズレさんや手首に傷がある南さん、とても親切なおばあさんに会う中で自分の行動を見つめ直していき、人生をよく変えていく物語です。

自分の能力を過信せず、自分の知識の限界を把握できている状態を知的謙遜と呼ぶのですが、奈ノ花は自分のことを頭がいいと思い込み、自分を正しく認識できていないので、この状態は知的謙遜ができていないことになります。

自分の頭の良さや要領のよさに酔っている状態は知的謙遜とは正反対です。
自分の頭の良さや要領のよさに酔ってしまうと、客観的に自分や周りを認識することが難しくなり、「自分は頭が良く、他の人はバカ」などという思考に陥りがちになります。

知的謙遜ができていない人は、自分が持っている知識や考えに囚われ、それを押し通し続けることに必死になってしまいます。
その結果、柔軟な考えができず、周囲から孤立してしまいます。

また、「頭の良さ」という概念はとてもあやふやなものです。一般的には、テストの点数がいい人、物事を素早く処理できる人などが「頭がいい」と思われますが、養老孟司さんは『バカの壁』の中で他人の気持ちが理解できることが「頭の良さ」だと述べています。つまり、「頭の良さ」の定義は思ったよりもあやふやです。

そのようなあやふやなものにすがってしまうしまうこと自体馬鹿馬鹿しいのかもしれないですが、自分に自信がない人ほど「頭がいい」という概念にすがってしまいます。

この物語はそんな人に「自分の頭の良さを鼻にかけず、心を開くことが大事」という教訓を教えてくれます。

今、自分のことを頭がいいと思い込んでしまっているあなたも、奈ノ花の行動やその周辺の人たちを見て、自分自身の行動や考え方を見つめ直すことができると思います。


ぜひ手に取ってみてください。


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