見出し画像

現職でくすぶっている人に読んでほしい書籍版『完全SIer脱出マニュアル』

(この記事は無料で最後までお読みいただける投げ銭方式の記事です)

『完全SIer脱出マニュアル』を読みました。こういうのにありがちな転職斡旋本・サイトではなく、あくまで現職に留まる選択肢を残したまま行動する、戦略的で地に足のついた具体的な行動指針が書かれている良書でした。

SIerに限らず現職でくすぶっている人たちにも読んでもらいたいので、その足掛かりとして内容を紹介したいと思います。

第1章 なぜ「エンジニア」はSIerを去るか

SIerに入るとどのような開発現場が待ち受けているかが書かれている(モダンな開発はどこに…)。
Twitterで語られるモダンな開発はできず、現実と理想のギャップに悩むことに。 

  生産性を上げると売り上げが下がる。
生産性について、企業と個人のギャップについて語られている。
企業と個人の利害が一致しておらず、能力を上げるインセンティブが上がらない。向上心のある人からやめていく状況。

身近に目標となるロールモデルがいない。
頑張ってSIerで働いたとして、自分の将来と重ね合わせられる人物がいない、ということが書かれている。優秀な先輩は上述の通りすでにやめているのだ。

第2章 自分や環境を変えるための前提知識

自分の置かれた状況を正しく認識するために、6つの言葉の誤解を解く説明が書かれている。

「仕事」
仕事に対する、「つまらない仕事しかない」という認識が誤解であることを説明している。

「成長」
何のために成長するか、ということが書かれている。成長は楽しく仕事をするため。

「IT企業」
IT企業にも受託開発/自社サービス開発、外部発注/自社開発、…などいろいろな形態があり、それぞれの特色が語られている。

「ベンチャー企業」
ベンチャー企業でもポテンシャルで採用されることもあるし、年収も期待できることもあるなど、「ベンチャーもこわくないよ」ということが語られている。

「エンジニア」
プログラミング以外にも活躍の場があり、それらの役割が書かれている。今までなんとなく認識していた役割が多かったので、このように俯瞰して読めるとわかりやすい。

「転職」
転職に対するネガティブなイメージを払拭する内容が書かれている。そもそも何もわからずにたまたま新卒で入社した会社が骨をうずめられるほど自分と合っていることはほぼない。

第3章 完全SIer脱出マニュアル

ここからいよいよ転職活動のノウハウ。本書の肝。まず前段として、転職活動を始めるにあたり現職との関わり方(やめるorやめない)について書かれている。私も基本現職続けたまま転職活動した方がいいと思う。いざとなったら転職しなければいいので。

ステップ1:1人でできるインプットとアウトプット
実績づくり

まずは手を動かして公開する、それを対外的に示せることが重要。

PCを買おう
できればMac。なぜなら開発環境を整えるのが楽なことが多いから。

アウトプット先のアカウントを作る
各種アカウントはどれを作りどのように運用するか。

一人でできるインプット
インプットといっても無限の選択肢があるので、何をやったらいいか。Railsチュートリアルが薦められている。モダンな開発を一通り体験できるようなので、私も時間を取ってやってみたいと思う。

一人でできるアウトプット
インプットしたことをいかにアウトプットするかについて、レベル0からレベル2の3段階で書かれている。レベルが上がるほど対外的なアピールになると思う。

ステップ2:社外の人の話を聴きに行く
勉強会への参加や、カジュアル面談について書かれている。カジュアル面談についてはあまり聞いたことがなかったので参考になった。

ステップ3:会社にいながら自分の環境を変えられないか試みる
「転職せずに環境を変えることはできないか」ダメもとで一度試してみる価値はある、というようなことが書かれている。それで環境が改善するなら現職に留まるも良し、愛想つかして転職するも良し。改善については『カイゼン・ジャーニー』を読め(私も早速買いました)。

↓ここから書籍版で追加された内容です。※本書は元は技術書展で頒布された同人誌です。

第4章 転職したその先のキャリア

転職した/しなかったとしてその後のエンジニア人生でどのようなキャリアを積むかの選択肢が、企業や事業レベルのことからエンジニアの役割レベルのことまで多角的に書かれている。第2章の補強的な内容だが、より突っ込んだ内容になっており、自分が気になるキャリアが見つかる気がした。

第5章 一生楽しく働くために

転職しても仕事は続くわけで、じゃあその後も楽しく仕事をするためにどうしたらいいかということが書かれている。要は一目置かれるエンジニア・ひと味違うエンジニアになるにはどうすればいいか。スキルを掛け合わせてスキルセットを掛け合わせる話はホリエモンの『多動力』でも語られており、やはり差別化の点では有効なのだと感じた。

全体を通しての感想

上記ではだいぶ簡単に紹介しましたが、内容はもっともっと濃いです。上記のは安い居酒屋で出てくる薄めすぎて炭酸の味しかしないチューハイレベルです。

冗談は置いておいて、転職斡旋本やサイトでありがちな「転職をごり押ししてくる感じ」が無くて好感を持てました。大抵そのような本やサイトでは現職に対する不満につけこんで転職を煽り、転職サイトへ誘導するのが定石な感じがします(どれだけそういうの読んでんだ、というのは置いておいて)。

ですが本書は、あくまでモダンな開発の知識をつけて転職に向けて動きつつ、環境を変えられるなら現職に留まるのもアリと、とても戦略的で現実的なことが書かれています。

SIerに限らず現職でくすぶっている人も、最初の一歩の踏み出し方がわからないだけだと思います。本書は具体的で実践的な内容が書かれているので、実際に転職活動する/しないにしても読むだけで参考になると思います。「もし転職したくなったらこれをもう一度読めばいい」というのを心の隅に持っておくだけでも現職との向き合い方に余裕が出ると思いますので、一読してみてください。

そしてお互いIT業界で楽しく仕事ができる日が来るのを心待ちにしています。


ここから先は

0字

¥ 100

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは記事執筆の活動費に充てさせていただきます!