書籍:生物はなぜ死ぬのか

こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。


生物はなぜ死ぬのか

生物学者の小林武彦さんが書かれた「生物はなぜ死ぬのか」という書籍を読みました。

生物の死が進化とどのような関係があるのか、といった観点でのサイエンスのお話です。
※社会学や倫理的な話ではありません。

一部専門的な話もありますが、そのあたりは読み飛ばしても大枠の話はわかるようになっています。

誤解・理解不足はあるでしょうが、自分なりの理解を記載いたします。

進化と多様性と絶滅

地球には様々な生物が存在しています。
その多様性を支えるのが、遺伝子の変化と絶滅(死)です。

原初の生物は一つの細胞なわけですが、その細胞は時間経過とともに存在領域を広げていきます。
その時間経過の中で、効率よく増えるものが「選択」的に生き残りました。
そして生き残ったものから「変化」が起こり、様々な細胞ができます。
さらにその中で効率的に増えるものが生き残ります。

このように「変化と選択」が繰り返されることで多様性が生じます。

生物が生息する場所も多岐に渡ります。
栄養の奪い合いを避けるために、集団から離れて生きる細胞もありました。
それらが異なる場所で「変化と選択」が繰り返されることで、生息地において効率的な細胞が選択的に生き残ります。

このプロセスにおいて重要なのが、同種が大量死する「絶滅」です。
ある時点で選択的に生き残った種も、別の新しい種にとって変わられ、絶滅します。

最近に発生した大絶滅は6650年前、恐竜が絶滅した中生代末期白亜紀の大絶滅です。
メキシコのユカタン半島の巨大隕石が原因と言われており、生物種の約70%が死滅したと考えられています。

このとき生き延びたのは小型の生物です。
恐竜の死体等から栄養を得て、穴の中で寒さ・暑さをしのいで生き延び、気候が安定した後、大型爬虫類がいなくなった世界で多様化・大型化していきました。

これにより、爬虫類の時代から哺乳類の時代へと移っていきました。
恐竜が絶滅したことにより、新しい生き物が生まれたといえます。

生物の死に方

生き物の死に方は以下の二つに大別されます。

  • アクシデントによる死:食べられる。病気になる。飢える。

  • 寿命による死:遺伝的にプログラムされた死。

大型の動物は寿命死が多く、小型の動物はアクシデント死が多いです。

更に細かく見ると、死に方も様々です。

単細胞生物の場合、分裂を繰り返す中で老化によって死亡します。
しかし、様々な条件に合致すると、老化のリセットが起こり、再度分裂が可能となります。

昆虫の場合、生殖活動の後に死にます。
カゲロウの成虫は成虫になった後の寿命は24時間であり、その間に交尾・産卵を行って死にます。
カゲロウの成虫は食事を必要としないため、口がありません。

脊椎動物のネズミ(マウス)は、大きさによって死に方に違いが出ます。
小型のものは「食べられて死ぬ」というタイプで、ハツカネズミなどがその代表です。
彼らは、食べられる前に早く成熟して、大量に子を残すものが生き残って今にいたります。
そのトレードオフとして、小型のネズミは長生きに関わる機能である抗癌作用・抗老化作用を失っています。

一方、大型のハダカデバネズミは30年ほど生きます。
長寿の理由は、天敵が少ない環境で生活していたのに加え、酸素が薄い状態に適応していることが挙げられます。
体温も非常に低く、エネルギー消費量と食事量が少なく、省エネ体質であると言えます。
それにより老化の原因である活性酸素が少なく、長生きしやすくなりました。

大型の哺乳類は捕食されて死ぬ可能性が低く、長寿命です。
象の場合は寿命は約80年です。

ヒトは老化して病気で死ぬ

ヒト、特に現代人の多くは老化の過程で死にます。

日本人の死亡原因の一位は癌です。
癌は加齢によるDNAの変異の蓄積により、55歳ころから死亡率が急上昇します。
癌以外の死亡原因の上位である2位「心疾患」、3位「老衰」、4位「脳血管疾患」、5位「肺炎」のいずれも、老化による身体機能の低下による影響が大きいです。

ヒトの細胞も老化をします。
老化をした細胞は細胞自体が死ぬか免疫細胞によって除去されます。
しかし、加齢した個体の老化細胞は、除去が起こりづらくなります。
体内に残留した細胞は、毒といえるサイトカインという物質を発生させ、それが炎症反応を引き起こし、臓器の機能低下に繋がります。

DNAの末端にはテロメアという配列があり、これが細胞を複製するたびに短くなっていきます。
このテロメアがある程度以下の長さになると老化を誘導します。

細胞が老化するとゲノムに変異が蓄積し、癌化のリスクが高まります。
これを避けるために、免疫機能が老化した細胞を入れ替えるという仕組みを人類は獲得しました。
これにより癌化はかなり押さえられるようになりましたが、55歳くらいがその限界となっているというのが実態のようです。

多様性のために死ぬ

生き物が死ななければならない理由の一つは、食料や生活空間の不足を避けるためです。

同種の生物が増えすぎると、食料不足に陥ります。
その場合は食事が取れない個体から減少していき、ある程度のところでバランスが取れます。

生き物が死ななければならない理由のもう一つは、多様性のためです。
バリエーションを増やすことで、変わりゆく環境の中でも生命の連続性が途絶えずにつながっていきました。

そのような多様性を確保するようにプログラムされたものが、たまたま生き残っています。

解説動画

書籍の内容を完全に理解できているわけではなく、わからない部分もありながら記述しました。
理解不足や誤解もあると思いますがご了承ください。

YouTubeに、この書籍の要約動画、著者が登場するインタビュー動画などがアップされているので、こちらもオススメです。


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