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俳句(春)

(ものの芽)ものの芽のほどけ弾ける音のして

(豆のつる)たよりなげよそほひ絡める豆のつる

(夕桜)夕桜きりりと帯の潔き

(花)コンビニの折にひとひら花の舞う

(春心地)子等弾む声に独居の春心地

(堅香子(かたかご)の花)人知れず堅香子の花夢果つる

(春聯(しゅんれん))春聯や倒福いっそう晴れやかに

(春菊)春菊の小鉢ひと添え老の卓

(紅椿)背徳の紅椿踏む午の刻

(蜂の巣)軒下の蜂の巣避けて開かずの間

(畑焼)畑焼の狼煙あがらぬ過疎の村

(畦焼く)畦焼いて兄見送りし午後のバス

(夏隣)新芽食むほろ苦き味夏隣る

(春の夢)面白き一期一会の春の夢

(花楓)絹の雨閑か閑かに花楓

(春闌く)往来の車せわしく春闌くる

(母の日)母の日に何より嬉しありがとう

(春うらら)思ひ出はひとり遊びの春うらら

(初桜)たとう紙やしつけ糸抜く初桜

(春暁)春暁の内海うつろう光かな

(春眠)春眠の無防備なるや軽いびき

(啓蟄)啓蟄やおさまりきらぬ腹の虫

(帷子雪)追いかける帷子雪の下駄の跡

(香篆)香篆は空中伸びて構いなし

(余寒)子等のあと折り紙残る余寒かな

(春日)春日にも別け隔てありかごの鳥

(春日)掌一期一会の春日かな

(春田)故郷のあの山までの春田かな

(葱坊主)葱坊主倒れしままの背比べ

(磯菜摘み)磯菜摘むあはひあはひの波しぶき

(磯焚火)海女の肌透けるに任せ磯焚火

(水温む)たあいなき夫の小言や水温む

(立春)立春の門に三毛猫箱座り

(立春)垣根門立春大吉猫の番

(早春)早春の地にひかりまうひかり舞う

(春浅し)泥濘に足をとられて浅き春

(凍解)凍解てせせらぎの音戻りきぬ



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