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〈豆めし〉の廣田家

「阿倍野の・・・ほらほら、あっこ・・・」

 二人して『あれ』『それ』『これ』は言わずにおこうと言ったばかりなのに・・・

「豆のご飯の・・・」 
「あゝそうそう、廣田家さんね」
「なんで、あっこにしたんやろなぁ〜」
「お宅の指定やったで」
「そやなぁ、そうやったな、親父の趣味か・・・」

 知人の世話でプチ見合いをし、思わぬ結婚へとトントンと物事が進み、一応、家族の顔合わせをしときましょと相なったのであった。

「あのご飯はあかんかったなぁ」
「美味しかったよ、私は好きやったわ。結婚してから一回作ったけど覚えてへん?」
「知らんなぁ」
 
 もとより炊き込みご飯全般がダメな夫、しかもその中でダントツ嫌いなのが早春のウスイエンドウ豆ご飯。皮肉なことに、その廣田家さんは鶴の子(大豆)を炒った豆で炊き込んだ『豆めし』で有名なお料理屋さん。

「あんな席に縁のなかったウチの親は、二人ともガチガチに固まってたわ」
「そやったか?あんたは着物やったなぁ」
「へぇ〜、えらいこと覚えてるんやね、何を着てたかなんて思い出せへんわ」

「あの店は、まだあるんかいなぁ?」
「阿倍野は無くなったで、確か松屋町の天王寺公園の突き当たり手前左っ側にも店があったけど、そこはまだあるんかな? ちょっと待って、調べてみるわ」

さっそくiPadで調べると
「『天王寺の廣田家さんは2003年10月15日廃業されました』やて」
「あ、ちょっと待って、住吉さんにもあるみたいやで、、、あらら、あかんわ、去年12月1日閉店て書いたぁるわ」

画像はHPより拝借

「そやろなぁ、あんな店はもう流行らんやろ」

「お庭に面したええ部屋やったなぁ、老舗を保つのは大変なことやね、ウチかって100年以上続いた店をたたんだやんか」
「そやなぁ、しゃぁないなぁ、ご時世ちゅうもんやろな」

 廃業された『豆めし』廣田家さんの記憶が消えないよう、iPadのメモの【老舗】の中に、今は、まだみることができるHPのスクショを取り込んでおいた。

TOP画像は、下記HPより拝借



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