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楽語⑵〜強弱記号


この記事ではp、fなどの強弱記号のほか、
sf,sfz,rfなどの強調記号のニュアンスの違いについてまとめています。


《ポイント》
p …弱いだけでなく「平易で静かに」演奏する。
f …「強烈に激しく」だが、乱暴はNG。

pp…特に古典派の曲では、ppの部分には劇的な変化が起きている。


【強調記号】
con forza    …高圧的に力強く。
forzato        …不自然な強調。
sforzato     …フォルツァートより強く。
sforzando  …その音を特に強める。
rinforzando…そのフレーズを特に強める。

【編集情報】
2022年4月9日 モーツァルトの部分を加筆

pやf

ピアノとフォルテは単なる「弱い」と「強い」の対比ではなく、
元々の言葉のニュアンスを念頭においた表現を心がけましょう。

★p ピアノ

①「平らな」「平易な」という形容詞。
②「弱く」「慎重に」「静かに」という副詞。
③「平面」「〜階」「計画」という名詞。
④「楽器のピアノ」という名詞。

単に弱くするだけでなく、平易で静かに演奏することが必要です。


★f フォルテ

「頑強な」「毅然とした」「丈夫な」「激しい」「強烈な」という意味の形容詞。

強い音や強い感覚を表しますが、乱暴な音になってはいけません。


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★ppやff ピアニッシモやフォルテッシモ

強弱記号の通常の範囲はpからfまでなので、それを逸脱したppやffがついている部分は、
単なる音量変化というよりも、転調や場面変化などの特別感を表現するためにつけられていると考えた方がしっくりくる場合が多いです。


例:♪即興曲op.90-2 /シューベルト

ppになっている25小節からは、曲が長調から短調へと同主調転調しています。
明るい気持ちから暗い気持ちへと変化したことを、音量や音色で表現しています。




sf,sfz,rfなどの違い

①con forza コン・フォルツァ

「力強く」「力を込めて」「激しく」
高圧的なニュアンスを含みます。


②forzato フォルツァート

動詞forzare 「押し込む」「ねじ込む」「無理強いの」から。
☆強調の中でも、故意で不自然な意味合いを含みます。


③sforzato スフォルツァート

「力をふりしぼる」「酷使する」
☆forzatoより「もっともっと強く」します。


④saforzando スフォルツァンド

「その音を特に強めて」という意味です。


⑤rinforzando リンフォルツァンド

動詞rinforzare「増援される」「強化される」「元気にされる」から。
☆楽語としては、「その部分(フレーズ)を強調して」という意味をもちます。



また強調記号は、作曲家ごとに用法が異なります。
ここではハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンの強調記号の用法を見てみましょう。


ハイドンの強調記号

ハイドンはfz,ffzを使いましたが、sfは使用しませんでした。

演奏効果の高い曲であるアウエンブルッガー姉妹に献呈した6曲のソナタには、それまでとは打って変わって、強弱記号がかなりたくさん使われています。


ピアノソナタ第20番Hob.ⅩⅥ:20
…4:25頃からfzが現れはじめます。




モーツァルトの強調記号

KV457以降のソナタには強調記号がみられなくなります。

モーツァルトはsf,fpを使いましたが、fzは使用しませんでした。

mfp 比較的軽いアクセント
fp 中庸のものから強いものまで輻広いアクセント
rf より長い音やパッセージの強調、poco forteと同義
sfp fpよりも強い
sf アクセントの一番強い形、時としてforteの頂点

『モーツァルト 演奏法と解釈』よりp88


ピアノソナタ第12番KV332


ピアノソナタ第14番KV457




ベートーヴェンの強調記号

ベートーヴェンはf,ff,sfを多用しました。

古典派の時代はpの方が美しいとされていたので、ベートーヴェンの音楽は、当時の人の耳には騒音のようにきこえたといいます…
(ただ全体の強弱記号の数を数えると、実はpの指示の方が多いのだそうです。)

またベートーヴェンのrfは、緩徐楽章にも使用していることから、ショパンの「con anima」同様、「心から強調したい」ことの現れだと言えます。


ピアノソナタ第1番op.2-1
…4:02、第二楽章の右手のオクターブにrf。



ピアノソナタ第21番op.53
…12:01、第二楽章の左手の旋律にrinf.の指示。



ピアノソナタ第32番op.111
…2:20、主題の1つのフレーズのおわりにrinforz.の指示。





ショパンの強調記号

ショパンの曲は、他の作曲家にくらべると強調記号があまり多くありません。

スケルツォなどでは、最重要の音(たとえばバスの低音など)にのみ、fzが記されています。

スケルツォ第2番 op.31


ノクターンでは、一番盛り上がる部分にcon forzaの指示が多く見られます。

ノクターン第7番 op.27-1





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