見出し画像

チェンバロ⑴〜楽器の特徴

この記事では、チェンバロという楽器の特徴、音を出す仕組み、チェンバロと類似の楽器についてまとめています。


チェンバロとは?

16世紀〜18世紀末のおよそ250年間、西洋で栄えた"撥弦(はつげん)"鍵盤楽器です。
撥弦とは「弦をはじく」という意味で、チェンバロはプレクトラムという部品が弦をはじくことによって、音を出す仕組みになっています。

よく「ピアノの前にはチェンバロという楽器が使われていた」という風に言われがちですが、実は共存の時代が長かったようです。
(ピアノは遅くとも1700年には発明されており、本格的にピアノの時代になるのは19世紀になってからです。)

チェンバロはピアノとは楽器の構造が違うので、奏法や音楽作りもだいぶ違います。
非常にデリケートな楽器で、ピアノのように強く打鍵すると、調律がすぐに狂ってしまったり、弦が切れてしまったりします。

そしてチェンバロは、強弱があまり出せないので、アーティキュレーション(スラーやスタッカートなどの音の切る・つなぐのこと)が、音楽を作る上で重大な役割を果たします。
ただこの時代の楽譜には、作曲者によるアーティキュレーションの書き込みがあまりないので、
演奏者が良い趣味を勉強して補ってあげる必要があります。

楽器の仕組み

次に、チェンバロが音を出す仕組みを見てみましょう。

❶鍵盤を押すとジャックが上がります。

プレクトラムが弦をはじき、音が出ます。

❸鍵盤を離してジャックが下がるときは、タングが回転することにより、プレクトラムが弦を通過しない、という仕組みです。

ジャックの略図

ジャック…木製で棒状の部品。
プレクトラム…弦を弾く部品。鳥の羽軸でできている。
タング…プレクトラムに下から力が加わった場合、回転することにより音を出さないようにするための部品。




チェンバロは、製作された時代によって大きく2種類に分けられます。

ヒストリカル・チェンバロとモダン・チェンバロ

1つめはヒストリカル・チェンバロで、
当時の楽器の修復、またはその設計で作られたもののことをいいます。
ピリオド楽器(古楽器/オリジナル楽器)ともいいますね。

対するモダン・チェンバロは、20世紀に入ってからピアノメーカーが作り始めたチェンバロのことです。
ケースや響板は厚く頑丈に作られていて、近代的なピアノのように底が開放された構造をしています。
また、ペダルでストックをかけることにより、レジスターを瞬時に変えることができるという機能をもっています。 

モダン・チェンバロのための楽曲としては、フランス6人組の作曲家、プーランクの《田園のコンセール》などがあります。
この作品は、20世紀のチェンバロ復興運動の立役者、ワンダ・ランドフスカによる委嘱作品で、ジャンルとしてはチェンバロ協奏曲に分類されます。

♪田園のコンセールより 第3楽章 




類似の楽器

チェンバロには、ヴァージナル、スピネット、クラヴィツィテリウムといった類似の楽器があります。
これら3つの楽器は、広義にはチェンバロに区分されますが、それぞれ形が違っています。

①ヴァージナル virginal

イタリアのヴァージナル
フランドルのヴァージナル

ヴァージナルは、鍵盤に対して平行に弦が並んでいるタイプです。
イタリアは多角形、フランドル(今のベルギーやオランダ)は長方形の型が多いです。

②スピネット spinet

イギリスのスピネット

スピネットは、弦が斜めに張ってあるタイプです。
18世紀のイギリスで、家庭用楽器として愛好されました。

③クラヴィツィテリウム clavicytherium

クラヴィツィテリウムは、縦に弦が立っていて、アップライトピアノのようなタイプです。
現存する最古のチェンバロは、クラヴィツィテリウムの型をしています。


また当時はクラヴィコードという鍵盤楽器もよく使われていました。

④クラヴィコード

チェンバロと同時期に栄えた打弦楽器です。
小さい音ですが、強弱をつけることが可能でした。

C.P.E.バッハやハイドンの作品などには、このクラヴィコード用に作曲されたものもあります。


まとめ

①チェンバロは16〜18世紀に栄えた撥弦鍵盤楽器です。ピアノより構造が軽く、音を出す仕組みが違うので、奏法や音楽作りが異なります。

②チェンバロが音を出す仕組みは、まず鍵盤を押すとジャックという棒状の部品が上がり、ジャックに取り付けられたプレクトラムが弦を弾くことによって音が出ます。
ジャックが下がるときは、タングという部品が回転して、プレクトラムが弦を通過しない仕組みになっています。

③チェンバロにはピリオド楽器であるヒストリカル・チェンバロと、20世紀に入ってからピアノメーカーが製作したモダン・チェンバロとがあります。

④チェンバロの類似楽器には、ヴァージナル(横型)、スピネット(斜め型)、クラヴィツィテリウム(縦型)といったものがあります。
またクラヴィコードという打弦楽器もありました。


チェンバロ⑵〜地域ごとの様式では、イタリア、フランドル、フランス、ドイツ、イギリスのチェンバロの特徴についてまとめています。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

さくら舞🌸

サポートお待ちしています♪励みになります🌟