眠れる僕らは夢を見る

眠れる僕らは夢を見る


 朝5時に、スマートフォンからアラームが鳴る。目は瞑ったまま、昨晩の記憶と音を頼りに、スマートフォンを探す。いつものところを手で探っても見つからない時は、充電器の線を元の方から引っ張り、スマートフォンを引き寄せる。確かな重みを感じる。よしよし、よしよし、とまるで正体不明の大物を釣り上げる漁師のように、僕は慎重にスマートフォンを釣り上げた。

 アラームを止めた僕は、そのまま何もせず眠りについた。これが僕の毎朝のルーティンとなっている。夢を見るために、起床時間の2時間前に一度起き、二度寝をすること。そうすると、高確率で夢を見られるのだ。しかし、どのような夢を見られるかは選べない。たくさんの友達の中で笑っている、幸せに溢れた夢を見る時もあれば、事故に遭い、体が切り裂かれ、悲惨な終わりを予感させる、最悪な夢を見る時もある。僕は夢を見た後、夢占いをすることもなく、親しい友達にその日見た夢の話をすることもない。なぜ、わざわざそんな事までして夢を見たいのか、それは僕にもわからない。もしかすると、眠っている時も、できるだけ色んな景色を見ていたいのかもしれない。まだ僕が小さかった頃、父親が僕を肩車して、当時の僕には見えなかった色んな景色を見せてくれた。そんな風に、まだ見たことのない景色や出来事が無数に転がっていると、なんとなく思っているのだ。

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朝のルーティーン

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