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🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その4)

第三楽章 雅楽風ガムラン(龍笛・月琴+チブロン・ゴング)

 「ムーンリバー」だから月琴も入れてよとランバンサリの有志からのリクエストで、龍笛の旋律に月琴が楽琵琶のように主要な音を押さえて演奏します。

日本大百科全書(ニッポニカ) 「月琴」の解説より
龍笛

 雅楽の鞨鼓の「来」(トレモロ奏法)と「正」(一打)をチブロン(ciblon)の太鼓で、鉦鼓(チチンと鳴る楽器)をクンプル(Kempul)で、終始音を決める親分の楽太鼓をゴング(Gong)で演奏します。

ジャワガムランの太鼓の一つ「クンダン・チブロン(Kendang ciblon)」
水面を手でパシャパシャと叩く音、という意味だそうです
真ん中と右側がクンプル(Kempul)
左側がゴング(Gong)

 古代のベトナム宮廷音楽みたいというか、15世紀末にインドネシアに渡来してガムランを伝えたというワリ・ソンゴ(ガムラン九賢人、Wali Songo)のやっていた音楽ってこんなのかなぁ、みたいな曲になりました。

 調は雅楽の壹越(いちこつ)調。「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」で主音はレ(壹越)。

第四楽章 日本現代語、古語+クマナ、ポリゴノーラ

 「ムーンリバー」を古ジャワ語、ジャワ語、インドネシア語とインドネシア人にとってわかりやすい言葉へと変遷してゆく組曲の中で、「日本語コーナー」である第4楽章は、

現代語「父ちゃんから殴られる毎日から逃れるために、ぼくはミシシッピー川を下った…」 
古語 「♪果てしなき 光揺らぎ われいつか 君を高しらして 渡らん」

 「ハックルベリー・フィンの冒険」の物語と「ムーンリバー」の日本古語訳を交互に語り、歌います。そして、

古語(ゲロン)「♪川を下りし思いでは、常にジムと共にあり 昼夜(ひるよる)月影(つきかげ)の中を 漂(ただよ)ひ 語り歌ひ」
古語(白拍子)「♪我らはともに、虹の渡されし先」

 とゲロン(男声斉唱)と白拍子の歌を重ねてゆきます。音高を重ねるというよりかは、言葉の二重唱。

 バナナの形をしたガムランの楽器クマナ(Kemanak)と、スイカの振動から作ったポリゴノーラが交代しながら「ミレミ♪ミレミ♪」と延々と続けてゆきます。

ガムランの楽器クマナ(Kemanak)
ポリゴノーラ(Polygonola)

 この単調な流れの区切りを教えてくれるのが、「コーン」という音を出してくれるクノン・レンテン(Kennong Renteng)、「シャラン」という音のグントラッグ(Gentorag)、そして一まとまりの最後を教えてくれるゴング(Gong)です。

4つ繋がりになっているのがクノン・レンテン(Kennong Renteng)
右側手前にあるのが、グントラッグ(Gentorag)

 調は壹越調から果てしなく転調、移調してゆきます。言葉でありながら、言葉として聞き取れなくなってゆく時に「歌」かもしれないと思って頂ければと思います。

<つづく>


白拍子+ジャワガムラン 「月影之川~Benewi aweayang wulan」

ご来場を心よりお待ち申し上げます。
日時:9月30日(土)16:00開場16:30開演
場所:松本記念音楽迎賓館(東京都世田谷区岡本2丁目32−15)
公演の詳細はこちらをご覧ください。
https://www.sakurai-makiko.com/tsukikagenokawa2023


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