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🌛白拍子とジャワガムラン「月影之川」(インドネシアの三つの言語、日本語と日本古語で歌い舞う六楽章の組曲)~その創作の舞台裏~(その2)

 2022年に入って、カール・ストーンと即興をすることになり、では、10世紀の古英語で「ムーンリバー」をやってみようということになり、東京インプロカーニバルで、5月21日に演奏しました。

 さらに、「白拍子とガムラン」という構図で「ムーンリバー」をやってみようと思い、ジャワの影絵芝居の人形遣いのローフィット・イブラヒム氏に古ジャワ(カウィ)語、ジャワ語、インドネシア語にそれぞれ、「ムーンリバー」を訳してもらいました。

 ジャワの影絵芝居「ワヤン・クリ」では、神様はもちろんのこと、王子、王女など階級の高い人は古ジャワ(カウィ)語で語ります。ジャワ人たちは、何かよくわからないが、高貴な人々が喋っているという感じで芝居を観ます。するとその下の階級と思われる武人や役人たちがジャワ語で喋るのを聞いて、ジャワ人たちは、ストーリーを把握していきます。さらにわかりやすい言葉で話す人物が登場して、ストーリーを細かく説明をしつつ、笑いを取って楽しませてくれます。

 しかし、わかりやすい言葉で話し笑いをとるスマル(Semar)は、とても徳の高い人なのです。これが、ジャワ・ガムランの文化圏に住む人々の言語の感覚なのでしょう。

 2022年の6月12日、今回共演するジャワガムランのグループ「ランバン・サリ」の公演があり、その時にスマルのマスクをゲット。

 スマルは、宇宙を司る最高神ブトロ・グルの兄で、人間を守護するため、姿を変え、地上に降りてきたのです。

 このマスクの右側に書いてあるのは、

スマルは聞く。小さな人間の声も神の声のように。
そして、スマルはこの国を優れた幸せな国へと間違いなく導いた。

 仏教でいうと、悟りの世界から人間界に降りて、ともに衆生(人々)と歓び苦しみながら、衆生を救おうとする菩薩のような存在です。
ですから、人々が話さなくなった古語が尊い、しかし今の言葉にも真実はたくさんあるのだという言葉に対する宗教観があります。 

 この感性をもとにムーンリバーのガムラン曲「月影之川」を作曲しました。

<つづく>


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