首を吊ってみた、否、吊ろうとした

それは、あまりにも悲しくて。
私はつい最近、タイツをクローゼットのドアノブ部分に巻き付けて首を吊った。
否、吊ろうとした。
出来上がった輪っかに首を通した。
でも、待てども待てども意識は飛ばない。
その間、私の異変に気付いた友達から電話が鳴ってた。
ここで出たら、また機会を逃してしまうから、友達には悪いけど電話には出なかった。

悲しかった。ただただ、悲しかった。
健康体でない自分。
それが生まれつきでも自業自得でもなく虐待という第三者によって健康を壊されたこと。
そのせいで色んなことが上手くいかないこと。
皆が簡単にやってのけることを、自分は出来ないこと。
自業自得なところもあったかもしれない。
だけど、私の人生には平穏な時期が無かった。
実家に居た頃は親から暴力を振るわれる日々。
社会に出たときは既に精神病になってたので、無理矢理働かなければならない。
親からの愛情を獲得出来なかった私は愛着障害になって、恋人への試し行為をやめられない。
そして、壊れてゆく人間関係。

自分はそこまで悪いことをしたのだろうか。

ときに、私には自殺した弟がいる。
弟は独りで逝くとき、何を思ったのだろう。
泣いていたのだろうか。
少なくとも、私は首を括ったときに泣いた。
泣いて、泣いて、いっぱい泣いた。
迫り来る死、自分という個体の生命活動が停止へと向かう感覚、この先の世界に自分は居ないこと、これらはとても辛くて悲しくて、何より怖かった。
もうこの先の世界に自分がいない。
自分がいないのに世界は今日も回る。
それが私には、酷く怖く感じた。

こんな恐怖心を抱いているうちは死なないんだ、と落胆する。
だけど、もう楽になりたい。
疲れたのだ。病気のせいで記憶力が低下して、昨日自分が何をしてたかを、人に聞かなきゃ思い出せない。
ちょっとした会話なんてすぐ忘れる。
なのに、嫌な記憶ばかりしつこく頭にこびりつく。

私は、視界に入る全てのものが許せなかった。
たとえ、それが八つ当たりだとしても、毒親と無縁の人達、健康であることを当たり前と思ってやまない人達、私に絡んでくるわけのわからない連中、私を苦しめておきながら自分は幸せになろうとしている奴、もう何もかもが許せなかった。
全てを壊して、燃やして、許されるのなら灰にしたかった。

でも、そんなことをしたらきっと後悔する。
だったら。この世界を許せないのなら、壊すわけにいかないのなら、私がこの世界から「一抜けた」をするしかないじゃない。

憎い。憎い。憎い。
女で良かった。
私が男だったら、きっと無敵の人になってた。

#創作大賞2023 #エッセイ部門

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