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MBTI:「NeとSe」および「NiとSi」

 MBTIというよりも16パターン性格診断の話である。

 さて、SとNの違いが関わる世界の違い、すなわち観念世界の住人か現実世界の住人の違いであることは、私はnote記事で幾度か論じてきた。本稿ではその区分けを前提として、8つの心理機能(※ただし本稿で扱うのは4つ)における小文字の「eとiとの違い」について述べたい。そして、「eやiが指す概念とは何か」の考察結果を一先ず報告しようと思う。


■eとiの違い

e:視点の空間移動は自由だが、時間移動は制約的である
i:視点の時間移動は自由だが、空間移動は制約的である

 e型はタイムシリーズ分析よりクロスセクション分析に関心があり、逆にi型は、クロスセクション分析よりタイムシリーズ分析に関心がある。e型は共時的視点、i型は通時的視点を重視しているとも言える。つまり、"全体"に対する意識の基本的な方向が、空間的全体に向かうのがe型で、時間的全体に向かうのがi型である。すなわち、時間的視点を固定して空間的視点を変化させて全体像を掴もうとするのか、空間的視点を固定して時間的視点を変化させて全体を掴もうとするかの違いである。

 基本的にe型は現在に時間的視点を固定することが多いが、必ずしも現時点以外からの視点を持たないわけではない。過去や未来の時点の視点を取ることも可能である。しかし、時間の流れを考慮した分析に関しては比較静学の手法が多いように感じられた。

 一方、i型に関しては、時間の流れを考慮した分析に関して動学的手法が多く感じられる。また、i型は必ずしも自己視点以外の視点を持たない訳ではないが、基本的に空間的視点を自己に固定することが多い。もちろん、i型であっても他者視点を取ることもできる。ただ、他者視点であっても時系列に関心を持つために空間的広がりのない認識であることが多いように見受けられる。

 eとiの違いに関して、「客観-主観の違い」通俗的にいえば「他者視点-自己視点」の違い、あるいは「公的-私的」といった立脚点の違い等、いろいろ検討したのだが、もっとも整合的なのは時空に関する関心の方向の違いであるように思われた。

 具体例でSe・NeとSi・Niとの違いを説明する前に、SとNとの違いについて確認しておこう。


■SとNの違い

 Sが現実世界の住人でNが観念世界の住人と先に述べたが、実際どういう違いなのか明らかでないように感じた人もいるのではないかと思う。そこで、もう少し詳しく説明しよう。

 高校時代の世界史で「中世神学論争"唯名論と実在論"ウィリアム・オッカムvsトマス・アクィナス」との(名前だけの)知識を暗記した人も多いのではないかと思う。実は、この実在論と唯名論の違いがSとNの視点の違いである。つまり唯名論のウィリアム・オッカムと同じ視点で物事を見る人がS型であり、実在論のトマス・アクィナスと同じ視点で物事を見る人がN型である。

 このことは、以前私のnote記事で具体的に説明したので引用しておこう。

 具体的な対象に関心が向かい、抽象的概念は付属品に過ぎないと感じるのがS型である。一方、具体的対象は抽象概念の一事例に過ぎないとして抽象概念がメインの関心事になるのがN型である。

 本稿は16パターン性格診断という性格がテーマの記事なので、「優しさ」という性格に対する認識を二つ目の例にしてS型とN型の違いを見よう。

 例えば、Aさんが「一人暮らしの友人が風邪をひいたときに薬と栄養ゼリーを差し入れに行く」「電車で妊婦の人に席を譲る」という行為をしていたとしよう。S型は「病人へのお見舞いや席を譲る行為をできることこそが優しさなのだ」といった認識の仕方をする。つまり、「優しさとは具体的行動の評価の総称である」と考えるのがS型の認識である。一方、N型は大抵「Aは優しいからそういう行為をする」という認識をしがちである。つまり、Aさんの優しさの現出として病人へのお見舞いや席を譲る行為をするのだと考えがちなのである。

 S型の現実世界中心の認識、N型の観念世界中心の認識は、現実世界と観念世界の齟齬が生じたとき、その違いが明らかになる。

 例えば、人口に膾炙した「やらない善よりもやる偽善」といった言葉などは、S型の現実世界中心の認識からN型の観念世界中心の認識を揶揄したものである。また、N型が行動で見れば親切な行動をとっているにも関わらず、「私は親切じゃないよ。だってそうしたのは親切心からじゃないし」といった自己嫌悪と綯い交ぜになった認識をすることが多いのは、このN型のデフォルトの認識様式による。そんな自己嫌悪に陥っているN型に対してS型が「いやいや、親切にしているならお前さんは親切なんだよ」と主張するのもS型のデフォルトの認識による。

MBTI:EI軸とSN軸 丸い三角 note記事

 引用した私の下手な説明ではイマイチ理解しずらいと感じた人は、「中世神学論争"唯名論と実在論"ウィリアム・オッカムvsトマス・アクィナス」に関する分かり易い説明がネット上にはあるので、そちらを参照して頂きたい。

 以上から理解してもらえたと思うのだが、Sの視点とは唯名論的視点であり、Nの視点とは実在論的視点を意味している。


■Se・Ne・Si・Niそれぞれの関心の違い

 本稿の目的は「eとiの概念の違い」である。そこに着目しながら次の具体例に表れる違いを考えて欲しい。

 さて、いま出会ったばかりでまだどんな人か知らない恋人が居たとする。あなたはその恋人の何を優先的に知りたくなるだろうか。たった一人の人間とはいえ、その存在は時間的広がり・空間的広がりを持つ多面的存在だ。どこを見てどんな人であると理解しようとするだろうか。

 このとき、その人の様々な場面での有様に関心が向くのであれば、e型だろう。一方、その人の過去(あるいは未来)の有様に関心が向くのであればi型だろう。また、様々な場面での恋人の行状をそのまま「この人はこの場合にこのように振る舞う人である」と直接受け取るとき、その人はS型である。一方、「この人は行状に表れた性格だからそんな振舞をした」と考えるのであれば、N型である。

 例えば、この恋人が「虎屋の羊羹の"おもかげ"が好きなんだぁ」と言ったときのことを想像しよう。

  • Se型は別の局面での声音・言い回し・表情等を思い浮かべながら当該発言を位置付けて恋人が好きなものに接したときの振舞を知り、虎屋の羊羹が好きな恋人を理解する。

  • Ne型は当該発言と他の恋人の好物からスイーツや食事全般の好みの体系を推測して恋人の嗜好体系や保有する文化資本を知り、虎屋の羊羹が好きな恋人を理解する。

  • Si型は虎屋の羊羹と恋人の人生行路を結びつけ(例:「茶道部だったから好きになったのかなぁ」といった推測)、虎屋の羊羹が好きな恋人を理解する。

  • Ni型は虎屋の羊羹を嗜好するに至った恋人の食の好みの品位の変遷を予想して価値観形成の有り方を推測することで、虎屋の羊羹が好きな恋人を理解する。

 上記は一例として挙げたもので、恋人の当該発言の解釈は多様で有り得る。しかし、上記の例からNe・Se・Ni・Siそれぞれからの解釈が、e型の共時的視点、i型の通時的視点、S型の唯名論的視点、N型の実在論的視点を対応する形で組み合わせたものと理解できるだろう。


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