書評「追跡・アメリカの思想家たち」会田引継著

フランシス・フクヤマの訳者でもある著者のアメリカ現代思想の案内である。単なる解説書ではない。著者は、フクヤマとも親交があり、相手の懐に入る深い理解からそれぞれの思想家を論じている。この著作の白眉は、日本でほとんど知られていない、ネオコンの思想的位置付けについて整理してあるところだ。基本的には、元社会主義、リベラリズムの若者たちが、旧ソ連への失望などから、ネオ・コンサーヴァティブと言われる思想潮流を作り出す様が描かれる。理論的には、レオ・シュトラウスやフランシス・フクヤマ。もっと政治評論、現実政治に近いところでは、アーヴィング・クリストルなど。逆に伝統的な共和党系の保守主義者についても、描かれている、ウィリアム・バックレーなど。この著作は、ほんとうに満遍なく、各潮流が描かれているのでアメリカ政治思想の把握にもってこいである。ロールズ、ノージックについても描かれている。また以外なところでは江藤淳についても描かれている。著者が、単なるアメリカ思想の研究者ではなく、思想家と臆することなく交流しながら、自ら考える人であることが分かる。好著である。

スピリチュアルに目覚めた妖怪。