桜染

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最近の記事

呪いが解ける話

私のタイムラインで話題になった呪いが解けるnoteを読んで、もうずっと思い出さないようにしていた記憶がふと頭の中で存在を主張し始めた。 誰かに話してしまおうと思うのだけど、本名のまま語るほどの度胸はなくて、名前も顔もないこのアカウントで語ってしまうことを許してほしい。 思い出したのは中学一年生の時、憤った母親が私にのしかかって首を締めた記憶と、高校で不登校になった私に嫌気がさして包丁を向けてきた記憶だ。 その状況を時折思い出して苦しくなることはあったけれど、その時に感じた感

    • 理由なんてない

      理由なんてない。 光が、庭先を刺して、小さく虫を殺す。 理由なんてない。 うさぎが欠けて、わたしが飛んで、月が落ちて、 そうしてすべてが循環していく。 私の身体も、いつか君が喰べて、 血になって、花になって、宇宙に溶け出していく。 そうやって、わたし達はいつか、地球を飛び出すの。 彗星が太陽にぶつかる頃には、 あの日のうさぎも飛び出していくから、 理由なんてない。 理由なんてない。 君が好きだというあの花に、 理由なんてない。 それでも、いつでも、ここにいる。 実

      • 飛び込む

        夕焼けの向こう側に、幼いわたしが隠れているような気がして、鬼ではないわたしは、その子を見つけに行ってあげられない。 日の入りが、一日の刻限だった時代。明白な限りが、確かにそこにはあって、わたしたちはその時間を境に、すべてが変わってしまう。 さようなら、と手を振ったあの日の思い出が、 今もまだ、さようならをするたび、息を吹き返す。 大人になってから、さようならをする機会も少なくなって、 だからあの日の思い出も、もう息をしていない、大人になる。 何も変わらない日に、何かが変わ

        • 止まれ

          止まってしまえばと願うこと。 確かにどこかにあっただろうに、 どうして、今では何処にもない。 海が通り過ぎて、雪が溶けて、桜が散って、 わたしはまた読書をする。 変わっていくものに、 すべてが置いていかれるような気がしてしまうけれど、 本当にわたしを置いていくのは、わたしだけだ。 春が閃いて、 そうしてわたしは、春を置いていく。 過去に笑った君を、抱えたわたしが、夏で泣いているから。 だけどその夏は、 もう遠の昔に置いてきてしまったんだ。 欠けらが、身体の中に刺さって

        呪いが解ける話

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        • エッセイ
          9本
        • 30本
        • 小説
          1本

        記事

          本物

          誰もが偽物のように動く街で、君だけが本物です。 人は、それを恋と呼んだ。 窓を開けて、風が吹き込んで、私の心臓が、拍動を覚える。 子犬のように、明日へと駆ける。 未来と君が遠ざかるから、追いかける。 走っている間が、幸せだった。 心臓の痛みは必然だった。 全てが偽物だって、それでも、 痛みだけは本物だと、あの日の月が言っていました。 ぬいぐるみを押し潰して、人生が歩いていく。 沸騰した思考にも、滲み出す水滴にも、本物の君にも、なにも理由はない。

          桜が舞う

          遠くの家で犬が吠えると、北の国では雪が降る。 そんな事、ちょっとも気にせず、春はここに居る。 春になったら、すべてが新しくなるのだと、信じていました。 すべてが死に、生まれ変わり、そうしてまた生を紡ぐのだと、信じていた。 だけど似たような事を、きっと年末にも言っていて、冬はみんなが死ぬ季節だった。 春を授かる罪悪感を、恋と例えた時、君は庭先でワルツを踊っていました。 桜の花弁が、踊るように宙を舞って、だけどゆっくり、地面に落ちていく。 へばりつく。 桜が舞うのは永遠な

          桜が舞う

          不公平を笑って

          世界から音がなくなってしまったような日、 空腹に耐えかねて起き出すわたしの体と、音のない朝は、 一体化して、消えていく。 わたしは、いつでもわたしを越えようとしていて、 出て行こうとするその意思が目指すドアには、もうとっくにノブはない。 金魚が一匹死んだとて、何一つ変わることのない世界は、 君が死んだら、崩れてしまうみたいです。 不公平だと誰かが言ったが、不公平なのは世界の方だった。 世界に音があるから、なくなってしまうと、悲しくなる。 生きることに特化した体は、その

          不公平を笑って

          私の足の裏

          君が私の世界のすべてだと思っていたのに、 それでも君は、夜の浜辺、 サラリとした砂に潜む小さな貝殻のように、 私の柔らかい足の裏を、刺してしまう、 それだけの存在でした。 世界にとって。私という、宇宙の中で。 手を振った。愛していると伝えるために。 挨拶をした。それだけで、よかった。 絡まり合う私の足と冷たい海水が、月の光を沁みこませ、 生命をその身に宿す。 宇宙が広がっていく。 海の冷たさが、海月の優美さが、足の裏の痛みを消していく。 幻想が、記憶の中だけで息をし始め

          私の足の裏

          しゃぼん玉、飛んだ

          人生に邪魔なものが増えて、隣のブロック塀が低くなった頃、必死に隠していたものまでも、目の前に差し出されて、いただきますをしている。 知らないふりを綴る私たちは、ゆっくりと息を吸い、コンクリートの道を歩いていく。 夜。ネオンが消えていく街並みを、諦めて立ち尽くす私が、その実どこへいくかなんて、誰も知らないのに、生きている私は、いつもどこかへ向かっているような、そんな捉え方を、世界がしている。 不思議だね。シャボン玉が空に昇っていくなんて。 パチリと音を立てて、消えてしまうな

          しゃぼん玉、飛んだ

          レモンの搾り滓

          魂を置いてきてしまった。夏の日に。あの、青い匂いのする季節に。 抜け殻が、酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出している。ただ、それだけ。 反応のように感情を返して、そうして海へと溶けていく。 熱い塊。マグマのような、轟き。花畑の奥に巡る、生命の息吹。あの夏の日が、まだ胸の中で、息をしている証。 花は何よりも美しい。それは、嘘だらけのこの世界に存在する、数少ない真実だった。私たち、いつ、花を好きになったのだろう。 好きの理由なんて、もう、覚えてはいないよ。 私とあなたの間に

          レモンの搾り滓

          蜘蛛の糸では、夜を越せない

          胸の中で誰かが踊っていた。 暗い底、手を伸ばしたら、あの日の君がいる。 きみの幸せを願う時、僕の中にきみが宿っているような、僕の一欠片がきみになってしまったような、そんな熱が燻る。 暖炉の中。きみを胸で飼っている。愛とは、そのようなものだった。 蜘蛛の巣が張った庭。そこに佇む木の陰でだけ、息ができる。 脆く、繊細で、それでいて剛胆な、愛の糸。きみを見るたびに高鳴る胸が、確りと僕に痛みを伝えてくるから、いつのまにか、きみが、僕の心に居座っていた。 桜が咲く前の冬。下準備

          蜘蛛の糸では、夜を越せない

          いつかの、冬。

          人間性を削ぎ落とすように、勉強をしていた。 「こんなことやりたくないんだよ」「私はこんなの好きじゃないのに」 心の声を押し殺しながら、勉強していた。それが正解だと、信じていた。 辛さで共感しあった仲間たちと過ごす。 中学までの友人の中には、受験をしない人だっているらしい。 そういえば、あの彼、免許もないのにバイクに乗って事故したらしいよ。 そんなこと、どうでもいいと、言えるだけの勇気すら、私は持っていなかった。 昔は、下がってきた気温にさえ感傷を揺さぶられていたはずなの

          いつかの、冬。

          何もかもが足りない

          人というものは、生まれた時から何もかもが足りない状態で生まれてくるのだと思っている。人といないと何かが足りない。愛がないと、全く足りない。そういう風にして生まれてくる。 一人では生きていけない。誰かと一緒にいないと、寂しくて死んでしまう。そんな私たちは、本当に強いのだろうか。一人で生きていける単細胞生物の方が、よっぽど、強いように見える。だけど、時代は、私たちを選んだ。 進化の過程で、集団を作った。だから、一人では生きていけない。それが、私にとってどれだけ息苦しくても、生

          何もかもが足りない

          「すき」

          (Twitter企画『 #すきの言葉が消えたなら 』参加作です) ・・・ すきを意識化できないからこその辛さが和歌で表現されている。 なぜかわからない、だけどこういう現象がある。 意識化できないことは辛いのか。 意識化できないからこそ、振り回される。 すきの言葉が消えたなら、私たちは好きに振り回されるしかなくなってしまう。 すきの手綱をつかんで置くことができなくなってしまう。 だけれど、それが、本来の『すき』なのではないだろうか。 私たちは言語化することで、それを

          「すき」

          明けましておめでとう

          おめでとう、というだけで活力がわくような、そんな魔法が言葉にはある。 おめでとうが熱気を生み出した朝。 息も白む季節に、汗をかいて笑いあえるのも、その言葉のおかげなのかもしれない。 一年に一度、初まりの日に心を描く。 そんな行為に意味があるのかはわからないけれど、年末、大切な人とふりかえりをするためだけに、私は祈るのかもしれない。 最初の日のお祈りが、私に希望を運んでくるから、ああ、年末までは生きても良いかもしれないと、柄にもなく思ってしまう。 生み出された熱を、雪が根こ

          明けましておめでとう

          クリスマスの詩

          まばゆい光に包まれて、赤んぼうが産声をあげる。 まっしろなその手に、ほおの赤ささえ眩しくて。 ふっくらと笑う音が、師走の喧騒をすり抜けていく。 あたらしく生まれるあいを、プレゼントにそっと包んで、来年へと渡そう。 悴んだ指を温めるような魔法をひとつ、ポケットに忍ばせて、早足で君のもとへと駆けていく。 小さい頃にもらったお祝いを、ずっと抱えて生きている。 すべてが許される日の、温かい孤独。 溶け合うことすらできない僕らを、白い雪がチラついている。 温かな傷みに喘いで、愛して

          クリスマスの詩