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身の丈にしなやかに。|76回目のハチロク。イサム・ノグチ展観覧<後編>を兼ねて

今日は76回目のハチロク。8・6。原爆の日。
東京でハチロクを迎える、8年目の夏です。

やっぱり地元広島との東京との温度差はあって、その中でだんだんと自分も離れていっている気がしていて、それでもまわりにはこの日を一つの祈りの日と捉えて過ごしている人もいて、どこにいても大切にし続けたい日だなと改めて思った一日でした。

本当の別れは会えなくなることではなく、忘れてしまうこと。

これは今日の式典の中で、子ども代表のスピーチの中にあった一文。時代を超えて通ずる言葉ですよね。
私たちには8・6以外にも、「1・17」「3・11」「4・14」「8・9」「8・15」「8・20」「9・11」「12・8」などなど、あげきることができないくらい、記憶されるべき日がたくさんありますが、「忘れないでいる」だけでも、それは思っている以上に大切なことなのかなと思います。

さて。東京に来てかれこれ8年目にはなりますが、厳密にいうと東京に越してきてから一度だけ、広島でハチロクを過ごしたことがありました。

1945年からちょうど70年を迎える2015年、今から6年前の大学2年生の夏。日本の大学生とアメリカの大学生70名が1ヶ月間共同生活をしながら議論をするという学生会議の企画に携わっていたのですが、その会議参加者で平和記念式典に参列させていただいたことがありました。
個人的に参列したことはあったものの、正式に席を設けていただいて参加したのはこの時が初めて。
当初は一部の学生のみが参加する可能性もあったのですが「日米の学生参加者全員揃って式典に参列したい」という私の想いを受け止めてくださった広島市や関係者のみなさまあっての実現でした。
過去は敵国であったアメリカの学生とともに、式典という場でこの日を過ごし、自分たちがこれから生きる世界の平和について議論できた、これまでのハチロクの中でもとても記憶に残る1日でした。

平和記念式典が毎年行われる会場は言わずもがな知られた広島平和記念公園ですが、イサム・ノグチ展観覧の後編を兼ねてこの記事を置いたのは(後編という感じではないが)、イサム・ノグチもこの平和記念公園に関連していた(正しくいうのであれば携わろうとしていた)という背景があったから。

実際に平和記念公園(以下平和公園)を設計したのは、戦後日本のモダニズム建築の巨匠とも言われる丹下健三。東京都庁やフジテレビ本社、国立代々木競技場などの設計も手がけられていることでも有名ですよね。

ル・コルビュジエに傾倒していたことも有名ですが、平和公園とあわせて設計した広島平和記念資料館は、コルビュジエが唱えた「近代建築の五原則」、例えばピロティや水平連続窓などを取り入れており、ル・コルビュジエの手がけた国立西洋美術館とも親和性を感じます。

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広島平和記念資料館

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国立西洋美術館

余談ですが、私が高校生の時は、県外から修学旅行で来広される中高生や、視察に来られる国内外の政府職員・国連職員向けに、この平和公園を案内するボランティアなどもやっていたので、平和公園にはかなりの頻度で訪れていました。懐かしい日々です。

地図の南にある石像・噴水から、慰霊碑、原爆ドームまでが一直線に並んでいて、ご案内する際にはいつもその話をしていたのですが、建築物を個別の建物として捉えるのではなく、一つの空間として捉えた丹下健三の創造性ならではだなあと、改めて感心してしまいます(地図を見るとよりよく分かります)。


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式典前日の様子。中心にある慰霊碑に近づくと
原爆ドームがすっぽり入って見えます。

そんな平和公園なのですが、この中心に慰霊碑についてはイサム・ノグチが設計に関わるという案があったんですよね。設計を手がけた丹下健三とイサム・ノグチは長年の仲で、丹下健三がイサム・ノグチに声をかけ平和祈念公園の設計プロジェクトに参画してもらえないかと声をかけたとのこと。

そして候補案の検討に着手し、実際に設計図を届けていますが、イサム・ノグチ案は不採用に。その理由として、諸説ありますがアメリカにルーツがあるからというのが影響していると言われています。この点について審議の中で反対を受け、丹下が代案を立てたものが今の慰霊碑と言われています。

その結果、並行して丹下がイサム・ノグチに依頼していた平和公園近くの平和大橋・西大橋の欄干は、イサム・ノグチのデザインが採用されることになりました。平和大橋には「つくる」西大橋には「ゆく」と命名されています。

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日本とアメリカ、双方にルーツを持つイサム・ノグチが、広島という地に架けた橋、平和大橋


ということで、ハチロクという日に、建築という観点から改めて平和公園を、広島を、振り返ってみました。



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