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月組公演 「フリューゲル -君がくれた翼-」「万華鏡百景色」感想

フォロワーに誘われて、2年半ぶり2度目の宝塚観劇に行ってきたのでその感想です。初見の感想は美味しいよね、ということを知っているので出力してみようと思い立ちました。記憶頼りのため場面順の違いや抜けがあるかと思いますが、誰かの燃料になれば幸いです。

※本感想には公演の内容が含まれます。ネタバレ直回避のためにTwitterではなくnoteへ書いていますが、問題があれば修正します。

前回(ロミオとジュリエット)の感想はこちら↓
※リプライに続く



「フリューゲル -君がくれた翼-」


今回は「ロミオとジュリエット」の時とは違い、元になった原作がなく(?)タイトル以外は調べずに来たため、どういう内容なのだろう?という新鮮さが最初にありました。
「三度の飯とハッピーエンドが好き」と日頃から公言している僕としては、フォロワーたちの「ハピエンだよ!」という言葉を信じる他ありません。
あと「パン屋と司会者を見ろ!」と言われたので探してみることにしました。


パン屋はともかく司会者ってなんだ…?





冒頭:ヨナス・ハインリッヒの生い立ち

舞台は冷戦下で東西に分断されていたドイツ。
西ドイツ生まれのヨナス・ハインリッヒとその母親の別離から物語は始まります。
冒頭の場面で幼少期のヨナスと母親が歌っていたことから分かるように、タイトルの「フリューゲル」は歌の名前から来ていたんですね。
別離の後の展開は途中で整理して考えてようやく分かった気がしていますが

東ドイツの叔父夫婦に引き取られる→
成人後軍に入る→
アフガニスタンで革命軍の兵士に命を救われる→
その伴侶であるサーシャを託される

なんですね。まだ登場人物の名前すら危うい状態だったので、これが数分で押し寄せてきて初見では理解が追いつきませんでした。理解力の敗北。
愛していた母親が憎むべきナチスの手先だったと突きつけられる幼少期ヨナス。愛が憎悪に変わってしまうきっかけとなったエピソードは辛いものです。


「ハッピーエンドに 憧れていた」 ←これ俺?????????

この歌の最初の歌詞を聞いた瞬間に「歌詞に共感した…」という言葉を理解できました。これ俺だ……



舞台は変わって東ドイツ。市民の日常を見せながら「でも結局社会主義ってこんなものだよ」を主張してきたのが印象的でした。
司会者ってこの人のことか~~!(爆速回収)
→追記:これは違ったらしく勘違いです!!!失礼いたしました!!!!!
時代と東ドイツの情勢を伝える人であると同時に、後述する理由でかなり大事な役どころだなと思いました。
結局職業はキャスター?案内人?先生?
→追記:物理学者だそうです。名乗っていたのを聞き逃していたとは……
パン屋は1人だけ真っ白の服着てカゴを抱えているのでわかりやすすぎました。自然と目がいってしまいます。


堅物軍人と奔放歌手

まず驚いたのがナディアのコンサートシーン。
「ロミオとジュリエット」よりも近代が舞台ということもありますが、曲調も激しく衣装も作中では比較的派手で、とても「アイドル」してるパフォーマンスだなと感じました。ふだんはアイマスやナナシスの畑にいるのでそのあたりのバイアスがかかっているのかもしれませんが。
また、このあたりのシーンから「もしかしてアドリブ入ってる?」と思うところも多くなってきました。全体的にコミカルになり、実際笑いも起きていたので楽しかったです。ルイスはかなり好きでした。おちゃらけている風でその実食えない雰囲気が。

それにしても冷戦下で「break the wall!(壁を壊せ!)」と歌詞に含めるのも何気にすごいですね。しかも対立の片側の西ドイツのアイドルが……。盗聴されているのを「ルームサービスみたいで便利じゃん」で済ませたりもするあたり肝が据わっている…。



コンサートの開催にあたって対面した両国の面々ですが、絵に描いたような堅物なヨナスと自由奔放で言いたいことをはっきり言うナディアの衝突は見応えがありました。
顔を合わせればとんちきだの社会主義最低!だの言い合いが絶えない2人ですが、どちらかと言えば振り回すナディア、振り回されるヨナスという力関係が成立しているように見えました。
真面目な方が振り回されるのっていいですよね。「この世界 二人だけになってもありえない」とか「あり」「ない」が散りばめられたあのデュエット曲めっちゃ好き。

そんな2人ですが、ヨナスがナディアの歌う「フリューゲル」を耳にしたことをきっかけに、関係性を変えていく過程はとても良かったです。
育った環境も考え方も性格も違う2人が、一曲の音楽を共通項として心を交わしていく……。僕は最終的にこの2人の関係を「友人以上恋愛未満」と受け取ったのですが、そこはわりと分かれそう。

あとは、この過程でもそうですが、舞台装置の使い方が上手いな~!と思いながら見ていました。2階席での鑑賞だったので、奈落や回転舞台の稼働が前回以上に見えたこともあり、車に乗って街へ繰り出すシーンや部屋から別の場面への転換でガンガン動くのを見て気分が高揚していました。ああいうギミックじみたものは大好きです。



コンサートとテロのゆくえ

コンサート直前にヨナスが秘密警察に捕まり、テロを企てていたのが同期のヘルムートだったことが判明。彼は、教会のシーンだったり反体制グループにモグラがいたり不穏な雰囲気にも裏打ちされ、社会主義の火を絶やしてはならないの意思と信念を強く感じる人物でした。

テロのため仕掛けられた爆弾はステージ上ナディアのマイクの中、最後の1曲が終わったら爆発する上に今まさにその曲「フリューゲル」の披露中。さあどうする!?からの流れはかなり力技感がありましたが、そこが逆に良かったです。ステージに飛び出してマイクを奪い合うヨナスとナディアの図はちょっと面白い。
正直、後から確認するまでわかりませんでしたが、やっぱりあれはマイクを強引に交換→ルイスに受け渡し→地下で処理だったんですね。受け渡しの場面よりも、至近距離で歌うステージ上の2人に気を取られて全然見てなかった……。

この後の監視塔での密会も良かったですね。一度目は、ヨナスが身の上を明かしナディアが意気込みを新たにする対話の場として、そして二度目はコンサートの成功を経て軽口をたたき合うほどになった2人の会話の場としての舞台で、同じ場所でも物語の時間経過とともに違う意味合いがあるのが好きです。そして「ベルリンの壁が壊れたときにまたここで会おう」という再会の約束の場にもなったのが加点されて劇中でも最上位の好きシーンになりました。
この場面で2人が交わしていた言葉はドイツ語?なんでしょうか。なんて言ってたんだろう?

区切り的にもちょうどよいため、ここで終わりかなーと思っていましたがノンストップで続きに入ったのでロミオとジュリエットのように分割しないんだと驚いたと同時に「ベルリンの壁の崩壊もやるのかな?母親との再会もあるか??」と嬉しくなりました。



ベルリンの壁崩壊と再会

1年後の時間軸にこの作品で一番好きなところがあります。
それはベルリンの壁を挟んで東・西の様子を交互に見せるシーンです。
もともとベルリンの壁のセットは厚さがそこまでないため反対側の様子を察しやすく、回転舞台をここでも大いに活用していたことで東と西の切り替えがスピーディで臨場感がありました。ナディアの扇動により高まる民主化の熱がありありと伝わってくるようで引き込まれてしまいました。
そしてこの場面はなんと言っても、壁の両側で行われる「歓喜の歌」の大合唱からの壁崩壊の流れがとてつもない迫力だったのを忘れられません。崩壊の仕方が「真正面から壁をぶち抜く」だったのがパワー系でちょっと面白かったですが。本当にこの場面は抑えきれなくなっていく市民たちの高ぶりが目に見えるようですごい。
なんで「歓喜の歌」なんだろう?と思い調べてみたのですが、ベルリンの壁崩壊の年のクリスマスに行われたコンサートが元なんですかね。かつて分断・敵対していた国々の音楽家が一堂に集い「自由」を奏でたこの出来事を、時系列は逆ですがストーリーに組み込むのは大胆で、でも音楽を通した心の触れ合いを描いてきた前半からの集大成としてこれ以上ない演出だと思いました。

崩壊後の場面で例の方が「市民の目線から見たベルリンの壁の崩壊」を語るセリフが結構お気に入りのポイントです。言葉にするのは難しいですが、情勢に関するナレーションというメタ的な立場に加えて、あの時代に生きている一人の人間という見方がここで表に出てきた感じが好きなのかもしれません。
あとは、歓喜に沸く多数の市民の中、社会主義の終わりを悟り自決するヘルムートも衝撃的でした。自分の信念を貫き続けた人物の最期としてあまりにも唐突で悲しく、銃声音で暗転というのも重い……。


物語のクライマックス、ヨナスと母親の再会のシーンですが、ここでも「フリューゲル」がトリガーになって母親の後悔と愛を知り、長い時を経た融和を果たすというのは王道ながらも感動的でした。
冒頭の親子の会話がここにも繋がってくるのはズルいな~~~~!

最後はヨナスとナディアの会話で幕引き、ということですが「自由」という翼をもらったと告げどこか清々しい雰囲気のヨナスが眩しく映りました。また、鑑賞後の余韻が爽やかで、心の底から「いい話だったな……」と浸れるような作品だったと感じました。



まとめ

最初の方にも書いた通り僕はハッピーエンド大好き人間ですが、この作品はハピエン判定です。大感謝。
全編通して「音楽は人と人の壁をも超えていく」というテーマが一貫されているようで、コミカルな演出を交えて進行することで必要以上にシリアスにもならず、散々書いたように演出も派手で見ごたえがあるかなり好きなタイプのお話だったと思います。行って良かった。





「万華鏡百景色」

フリューゲルのハピエン具合にほくほくしていたところ、冒頭の「悲しい恋のお話」で脳を焼かれました。えっ?この後に悲恋を!?

江戸・明治・大正・昭和・平成・令和と次々と移り行く東京を「万華鏡」に例えて映し出すのはとても魅力的でした。次々と転換する時代の中、転生して何度も出会うも決して交わることがない花火師と花魁の2人は切ないですが……。
印象に残っているのは「ざんぎり頭をたたいてみれば文明開化の音がする」の一節に合わせた「文明開化」の歌詞で本当に頭を叩くシーンです。

万華鏡百景色では、場面ごとの人物が非常に多く、それが東京という街の雑多さの表れにも見えて良かったです。ただし常に目は足りない。
人数が多いため、メインとなっている人物以外にもストーリーが見え隠れするのが印象的でした。例えばスクランブル交差点のシーンでは「FREE HUG」のスケッチブックを抱える女性やティッシュ配りの青年の動向なんかは目が行きやすく感じました。

後から聞いたところ、鹿鳴館のあたりや地獄変のあたりなど気づかなかったり知らなかったりする場面も多く、満員電車の乗客の持つ傘の色による違いなどの考察要素も多いようで、何度見ても新しい発見がある作品なんだなと慄いています。仕込みがめちゃくちゃ細かい…!

劇中で登場したピンク色のスーツ、とても派手なのにビシっとキマっているうえにあれだけ動いても崩れないのは本当にすごいと思います。あとは銀橋に一列並んでのラインダンスも、綺麗に揃っているわ足なっがいわで圧倒されました。どちらもステージ映えしていて楽しかったです。


これは割とどうでもいい話ですが、今回は2階席からの観劇でかなり天井に近いため、最後に出てくるあの階段がほぼ壁にしか見えず、出現直後は「えっ?壁に上ってない??」と一瞬勘違いしてしまいました。




フランボワーズのアイスの酸味が程よく美味しかったです。


ちいさくてなんかラッピングされてるやつ

2年半ぶり2度目の宝塚でしたが、予想以上に作品にのめり込み楽しむことが出来ました。
実際に大劇場まで行って雰囲気を味わいながら観劇、というのは代えがたい体験であると思っています。お芝居の内容だけではなく、周りの空気やそこで食べたものという+αの要素が加わるのが大きいです。
また、幸運なことに貸切公演の抽選が当たり、月城かなとさんのサインをいただけたのも良い思い出になりました。丁重に扱ってどこに飾っておくかをずっと考えています。
大劇場に来る前、大阪駅でもらったポケみくじの大吉の伏線を回収した気分です。

誘ってくれた・解説してくれたフォロワーに感謝を。また機会があれば行ってみたいですね。できれば次もハッピーエンドの作品で。


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