野良の子猫
お盆の帰省中、実家で川の字になって母と妹と寝ていた。
実家には、シニアになったばかりの犬がいる。我が家にとっては初めての犬で、家族全員の愛情を一身に受け、お姫様として可愛がられている。
その犬が深夜3時頃、突然吠え始めた。
あまりの煩さに全員起きるが、犬は吠えるのをやめない。
よくよく耳を澄ませば聞こえる、小さな猫の鳴き声。
実家の地域は野良猫が多く、野良猫の子どもが鳴いているんだろう、と、とにかく眠かった為寝た。
翌朝のこと。
ニャーニャーニャーニャー
必死な声がまた聞こえてきた。
声のする方へ行ってみる。
どうやら車庫の中の、妹の車の後ろにいるようだ。
後ろに置いてあった段ボールをめくると、
いた。
黄土色の身体に、
美しいブルーの瞳。
目が合ってしまった。
何かいけないものを見てしまった気がして、段ボールを再び元の場所に戻し、子猫を隠した。
その後、姿が見えなくなったので、母猫が迎えにきたものと思っていた。
しかし隣の物置小屋に潜んでいたのを母が見つけ、子猫を段ボールに捕獲した。
だが、動物愛護施設や動物病院に電話している間に、子猫は逃げ出して消えてしまった。
それから何日も経つが、未だにあの時見た、子猫の瞳が忘れられない。
後から調べてわかったのだが、子猫の瞳はキトンブルーと呼ばれる青なのだそう。成長し、その猫が生まれ持った色に変化するのだという。
小さいながらもしっかりと人間を威嚇し、
自分の体よりも遥かに大きな段ボールの壁を越えて逃げ出した子猫。
子猫の生命力が青い瞳に象徴されていた。
人間が、小さな動物や赤ん坊に惹かれるのは、その生命力の為かと、初めて思った。
瑞々しい生まれたての命は、それだけでみんなを惹きつける。
それはかつての私の姿かも知れないし、もしかしたらそのチカラは、まだ私の中に眠っているのかも知れない。
そんなことを思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?