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うちの子の脳腫瘍が発見された経緯

こんな重いタイトルの記事に興味を持って頂きありがとうございます。
先日、このブログを書こうと思ったきっかけになる事がありました。娘の脳腫瘍と同じ種類の病気の本人や家族が集うコミュニティーに参加しているのですが、そこで「頭痛は精神的なものだから心配ない、と言われ続けていて発見が遅れてしまった」という話を目にしました。その内容を何度も目にしてきましたし、我が子も同じく。と思って読んでいるのですが…。その方の投稿と現状に思っていた以上に胸を痛めてしまいました。何年経っても発見が遅れるということは変わらないのだな、と痛感しました。

小児の脳腫瘍の患者は年間500人もいるそうです。うちの子もかつてこの中のひとりでした。病状は人それぞれでなかなか共有し難いものですが、なぜ脳腫瘍が発見され辛いのかということは万人に共通して言えることなので、改めてそこを振り返って記録しておこうと思います。

症状の出始めた頃

娘の調子が目に見えて悪くなったのは、水疱瘡にかかった直後でした。小学五年生の夏のことです。大きくなってからの水疱瘡だったので、発疹に塗る薬の範囲が広いなぁ…とぼやいた記憶があります。
娘は当時、平均より背が小さくて小児喘息持ちで少し身体は弱かったのですが、とても気の優しい元気な女の子でした。腫瘍は生まれたときからあったものだと診断されているので、このときの高熱や水疱瘡との因果関係はわかりません。ただ、水疱瘡の発疹がすっかり治った後、急に視力が悪くなりました。何か視界が狭いかも、という本人の話もあったのですが、眼科の視力検査ではなにも見つからず、脳腫瘍を疑うことはありませんでした。ここでもし視野の検査(白内障の疑いのある方などにする特別な検査)をしていたら、両目の耳側の視野が半分近くなくなっていることがわかったと思うのですが、視野の欠損はもう片方の目の視野で補ってしまうものらしく、日常生活に支障はなかったのです。
ちなみに、脳腫瘍の中でも視野欠損が出るものもあれば出ないものもあります。娘の場合は腫瘍が視神経を圧迫し、見えなくなっていました。ほとんど失明した状況で脳腫瘍がようやく発見されることもあり、とても大切な兆候です。

小学2年生の頃

それよりも少し前の話。頭痛やめまいの症状は小学二年生の頃からよくありました。少し不登校気味の長女がいたので、次女もその影響を受けて「起立性調節障害」と診断されたり、気分的なものではないか、と言われていました。
私は何か解決策があるのではないかと、良い耳鼻咽喉科を探したり、都内の「頚椎からくる不定愁訴やめまい」を専門とする病院を受診しました。頚椎のMRIを撮り「ストレートネックがあります」などと言われましたが、娘の腫瘍は首よりほんのちょっと上の脳下垂体にありました。その頃にはもう腫瘍があったはずなので、そこであともう数センチ上までMIRをしていたら…。そもそも、子どもはあまり眩暈の症状は出ないと耳鼻科で聞いたことがあります。漢方薬などを処方され、身体を温めましょう、などと言われていました。

担任の先生の勧め

小学5年生で視力が悪化した後、目がまわってふらふらするようになりました。私が支えながら歩いていたのですが、まっすぐ歩くこともできなくなってしまい公共施設で車いすを借りました。これはおかしいのではないかと思いながらいると、担任の先生との学期末の面談があり、先生が意外な経験談を話してくれました。
先生が受け持った子どもで学校生活でよく吐き気がする子がおり、ある日突然眩暈により階段から落ちて亡くなってしまった。亡くなった後に脳腫瘍が発見され、既に取返しのつかない状態だった。同じかもしれないので、そうなる前に病院へ行ったほうが良いと。
その話を聞いたときから、脳神経外科でちゃんと調べよう!と思うようになりました。聞いてすぐに、紹介された総合病院へ行ったのですが、子どもならではの精神的なもの、と言われ残念ながら検査しませんでした。車椅子で生活していたのにです。私の説明が下手だったのかもしれません…。

もっと大きな病院を受診

総合病院の結果に納得できず、その町で一番大きな市立病院へ行きました。そこではまず、てんかんを疑い脳波の検査をしました。コードの付いた吸盤のようなものを頭に沢山付ける検査です。結果、異常はなく、先生に「レントゲンを撮ってみますか?」と聞かれました。ようやくここでレントゲンになりました。私は担任の先生の話があったので、一も二もなく「お願いします」と答えました。後日撮影するとすぐに「頭蓋咽頭腫瘍だと思われます」と診断されました。ようやく原因が判明し、この病院には感謝しかありません。遠回りをしましたが、娘はその後、都内の病院に紹介状を書いてもらい無事に手術を受けることができました。ほぼ手術は成功し、視野も元に戻ることができました。薬を飲まないといろいろと支障の出る生活ではありますが、元気に生活しています。

早期発見に向けてできること

子どもが頭部のレントゲン撮影をすることを、医師は積極的には勧めてきません。おそるおそる「やりますか?」と言うくらいです。でもそれには理由があり、レントゲンによる被ばくを心配しているからです。成長しきった大人と違い、成長過程の脳へのX線の影響はなるべく避けたい、という事情があると思われます…。よっぽどの理由がなければ検査してみましょう、とも言ってくれません。その結果、子どもの脳腫瘍患者はなかなか発見されません。
ではどうすれば良いか。それはおそらく、脳腫瘍の可能性を最初から視野に入れずに問診をしている現状を変えることだと思います。

素人の母親が、めまいが酷いということと「視野の低下」「身長が低い」を結びつけることはできませんでした。もし頭痛で受診したときに、医師が「視力は低下していませんか?」と言ってくれていたらよかったのにな、と思います。頭痛で受診する子どもには、内科でも外科でも心療内科でも、問診での項目に「頭痛の頻度、箇所」や「視野の低下」あるいはホルモンの影響からくる尿崩症や低身長がないかなどを聞くという決まりがあれば良いと思うのです。(脳下垂体に腫瘍がある場合の症状です)医師もそれぞれの専門の科があるので難しいと思うのですが「精神的なもの」という前にちゃんと話を聞いて検査していれば、早くに気付くことができるかもしれません。

コロナ禍で、子どもの不定愁訴は増えています。そして見過ごされる可能性もどんどん高まっています。内科的なことに加えて外科的なことも考えてくれる医師がひとりでも多くいれば発見は早まります。
娘の場合、視力の悪化から発見までの時間は、およそ三か月ほどでした。腫瘍は倍倍に増えるので、娘のような大きさ(3センチ)になるまでに10年かかりましたが、その倍になるのはすぐです。一日でも早く発見されることが望まれます。手術の順番待ちでさらに一か月を要したので、四か月後にようやく手術を受けることができました。

まとめ

・脳腫瘍は一日でも早く発見されるべき
・頭痛を訴えている子どもの頭痛の度合い、めまいの度合いが酷いときは被ばくのおそれは多少あるがレントゲンやMRIを撮影してみる
・大きな病院へ行って、いろんな専門の先生の目で診てもらう
・小児科の先生、診療内科の先生が、頭痛やめまいの状態を詳しく問診する




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