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ゲーム分析でも倫理審査は必要?

 倫理審査。研究を行っている方なら一度は聞いたことがありますよね(苦笑)。最近では投稿論文はもちろん、修士論文レベルでも審査会の承認が必要な場合が多いです。
 この倫理審査、場合によっては映像分析を中心としたゲーム分析でも倫理審査が必要な可能性があるというのをご存じでしょうか?

研究倫理とは

 倫理とは、「人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの。道徳。モラル。」(デジタル大辞泉)とあります。科学技術が発展する中、研究対象や方法がより広範になり、研究者が持つ責任と役割がとても重くなってきました。
 しかし、研究を進めていくにつれ、研究者は視野が狭くなりがちであり、一線を越えてしまうこと(怖)も過去にはありました。そこで、研究者になり代わり、専門家による第三者によって研究計画のチェックを行うのが倫理審査になるわけです。

 倫理審査でチェックされるのは、ざっくり言うと、
 a.研究者が倫理を遵守しているか?
 b.研究対象の権利・利益は守られているか?
 c.研究に関わる利益相反があるか?
という3点となります。
 これらに関しては、本当にざっくりとなので、詳しくは指導教官に相談したうえで、自身の所属する大学、研究機関の倫理委員会や投稿する学会の倫理規程を確認してくださいね。

映像を用いる場合の焦点

 以上の点を鑑みて、映像を用いる場合、
 1)著作権に抵触するか?
 2)有料放送やDVDを用いる場合、製作元が不利益を被らないか?
 3)研究対象(選手、コーチ、チームetc)が不利益を被らないか?
が焦点になると考えられます。
 例えば、論文中では匿名としても、論文内容から選手が特定され、
 ・ 弱点が明らかになり、出場機会が激減した。
 ・ 知られたくない側面を他者に知られてしまった。
というのは、研究対象者が不利益を被ったことなります。

 とは言え、今のところ、これらについて、具体的な倫理的な方針は示されていないと思われます。(強いて言えば、文部科学省・厚生労働省発行の『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』)。しかし、放送映像を取り巻く法律はどんどん複雑化しており、常に最新の情報を入手する必要があります。本来であれば、学会や大学の倫理委員会が率先して、分科会や勉強会を作ってほしいところなのですが・・・。(高い学費を支払っているのに、映像使用に関する分科会をなぜ作らないのか、教授に噛みついていました。笑)
 映像を用いた研究はグレーゾーンな部分が多いです。くどいようですが、指導教官に相談したうえで、自身の所属する大学、研究機関の倫理委員会や投稿する学会の倫理規程を確認することをおススメします。

『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』
https://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1859_01.pdf

倫理審査は時間がかかる

 以前の記事で、映像を入手するための時間を研究計画に織り込む必要があるといいましたが、倫理審査の時間はもっとかかります。(某W大では申請してから回答を得るまで3か月近くかかります)
 しかも、倫理委員会の承認後に研究を始める必要があるので、その分前倒しで研究計画を進める必要があります。質的研究や介入研究を行う場合は、倫理審査はルーチン化されているのですが、映像を用いたゲーム分析の場合、先生方も失念していることがあるので、研究を行う皆さんも注意してください。

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