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営業代行会社と話をするときは、「分母の話」をしないとミスリードされる。

営業代行会社を選ぶときは、「成果を出してくれそうな業者」を探すはずです。もちろん、成果を出してくれるかどうかといっても、成果を左右する要素はたくさんありますから、簡単に判断することはできません。

その中でも「過去の実績・成果」は簡単に聞くことができるので、多くのクライアントが参考にしています。

ただ、過去の実績や成果には落とし穴がいっぱいです。それだけでもたくさん書けることがあるのですが、今回はその第一弾として、「分母の話」をします。

お金と手間さえかければ、誰でも成果は出せる

いきなり乱暴な言い方になってしまいますが、成果は誰でも出せます。
「売上を100万円増やしたい」なら、売上が100万円増えるまで、営業活動を続ければいいんです。

1か月取り組んで100万円増えればそれでいいし、10万円しか増やせなかったのならあと9か月続ければ100万円アップは達成できます。

たったの5万円しか増やせなかったとしても、それを5年続ければ売上は300万円増えるから、目標よりも高い成果が出ましたね。

「そんなことでいいわけがない!」
「早く成果につなげられる方がいいに決まってる!」
「売上が増えてもコストが増えたら赤字じゃないか!」

そんな声があちこちから聞こえてきそうですが、もちろんその通りです。

ここで登場するのが「分母」と「分子」の話です。

営業活動における分母・分子とは?

分母・分子と聞くと、体調が悪くなってしまう算数嫌いの方もたくさんいるでしょう。けれど、それほど難しい話ではないので安心してください。

まずは、分母・分子のおさらい

頭の中にピザを思い浮かべてください。

Mサイズのピザで、8切れにカットされています。

あ。直径が何センチかとかはどうでもいいですし、ちょうど8等分できているかも考えないでくださいね。

では、質問です。
このピザ1切れを食べましたが、その量を分数で表すとどれだけですか?

答えはもちろん、1/8です。

ここで、分母・分子がどのようなものかを言い換えると、次のようになります。

分子:食べた量(=1切れ)
分母:ピザ全体の量(=1枚=8切れ)

他にも、

分子:食べてもらえた量(=1切れ)
分母:作った量(=1枚=8切れ)

と表すこともできるでしょう。

営業活動を分母・分子に置き換える

営業活動でも、分母・分子を使って表現することができます。

分子:成果の大きさ
分母:成果を出すために働いた量

分子:成果によって得られた利益
分母:成果を得るために投資した金額

具体的な営業活動に置き換えると、

分子:アポイント数10件
分母:コール件数1,000件(アプローチした会社数250社)
⇒アポイント率1%(コール数ベース)
 アポイント率4%(会社数ベース)

分子:売上増100万円、粗利増30万円
分母:営業代行会社への支払20万円

といった感じです。

営業での成果を見極めるためには、この分母も分子もわかっていないと判断できません。
しかし、みなさんが算数で割合や分数が苦手だったのと同じように、会社の経営や営業活動においても、分母と分子を同時に見ることが苦手なのが問題です。

分母・分子の片方だけで話しているとミスリードされる

営業代行会社が自社の実績について話すとき、分母か分子の片方だけに触れながらアピールしてきます。

例えば、1か月で5件の契約を取って欲しいと考えていたとします。すると、営業代行会社はこう言ってくるでしょう。

「弊社では、毎月10件の契約を取った実績もあります!5件ならいけます!」

これでは、どれだけ稼働した結果なのかわかりません。スタッフが何人稼働して10件なのか、何時間稼働して10件なのか、それがわからないと判断しようがありません。

けれども、分母・分子の感覚がないとどう感じるでしょうか?

「5件の契約を取って欲しいと思っていたが、この営業代行会社なら、もっと契約を取ってくれるかもしれないな」

となってしまいかねないのです!

「いやいや。さすがにそんな考えはしないよ。バカにしないでくれ」と思いましたか?

しかし、営業代行会社の案件を取る担当者は、その代行会社で一番のエース級人材です。考える暇を与えずに、話を次へと進めてしまうテクニックを持っているかもしれません。例えば・・・

「弊社では、毎月10件の契約を取った実績もあります!5件ならいけます! ・・・でもこの際、予算を2倍にして、10件の契約成立を目指しませんか? 貴社の商品なら可能性は十分にあると思うんですよ」

この瞬間、話題は「営業代行会社の実力を判定する内容」から「どれだけたくさんの成果をあげて欲しいか」にすりかわっています。

エース級の営業スタッフのテクニックは、こういうところで発揮されます。
依頼する側が流されず、確認すべきことをしっかりと確認しなければ、分母・分子の両方を意識した判断ができなくなってしまうのです。

【参考記事】営業代行会社のエース級人材は、あなたの案件にはアサインされませんよという話。

分母・分子をわかっている営業代行会社はほとんどいないが、本能的にそこを避けている

ちなみに、優れた営業パーソンは分母・分子をわかって使い分けているのかというとそうではありません。残念ながら、そこまでできているのは、全体の2~3%くらいだけだと思います。

実際に私が営業代行のスタッフや責任者を選定するときは、この分母・分子の話をするのですが、そのときはこんな感じです。

候補者「私は○○の案件で、1か月に10アポ必ず取っていました」⇒分子
もふ 「どれだけ稼働していたんですか?」⇒分母の確認
候補者「えっと・・・どれくらいだったかな。えーとえーと・・・100時間です」
もふ 「では、アポイント率はどれくらいですか?」⇒分子の確認
候補者「5%です!高いでしょ?」⇒分子
もふ 「何に対して5%ですか?」⇒分母の確認
候補者「何に? 業務での結果がアポ率5%です」⇒分母で考えることができていない
もふ 「アポが5%ということですが、全体は何ですか?」
候補者「電話した会社数です」⇒実は分母ではない
もふ 「じゃあ、1社あたり平均で何回電話していましたか?」⇒本当の分母の確認
候補者「記録には取っていませんが、1社あたり10回くらいですかねぇ・・・」
もふ 「ということは、20社にアプローチして1アポだけど、電話は200回しているということですね。コール件数で考えると、アポイントが取れる電話は0.5%。これはどう思いますか?」⇒本当の分母・分子
候補者「・・・低い・・・です」

他社のエース級人材が営業活動をしているところを見たこともあるのですが、分子だけの話に終始して、自分たちのアピールしたいポイントだけを話して、それ以外の話題に触れさせないようなテクニックの塊でした。

彼らは、自分たちに都合の悪い話だと本能的に感じているのか、上手にアピールできるポイントだけに話を持っていきます。
だから厄介なんです。

営業代行会社の実績は「いいところだけのアピール」と心得る

このように、営業代行会社はエース級人材のテクニックで、いいところだけ(分母・分子の片方だけ)のアピールを繰り返し、その全体像を話すことはまずありません。

営業代行会社との商談は、相手の話をただ聞く場ではなく、その内容が信頼に値するものなのかを検証する場です。

当然に、ある程度、成果は盛って話してきていますが、それはどうしようもないことです。
しかし、彼らが「正しい情報を出そうとする姿勢があるか」「客観的に冷静な目で分析する能力があるか」を検証することはできるでしょう。

その方法には「分母の話」以外にもたくさんあるのですが、今回はここまでにしておきます。

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