生産技術と言うエンジニアのお仕事

僕は某メーカで生産技術という仕事をしている。

きっと多くの人にとってなじみのない職業ではないだろうか?エンジニアを志す理系学生諸君にとっても、”セイサンギジュツ”ってナンデスカ?といった興味のない声がリクルータの僕に向けられる凄惨(せいさん)な光景が目に浮かぶ。

#だじゃれです 。あしからず。

これは被害妄想でもなんでもなく、実際に生産技術という仕事の認知度が低いのは事実である。しかし個人的には、生産技術という仕事はこの世間的に認知が低く、優秀学生が目を背ける一方で、ビジネス現場からは重視され、工場も持つ企業にとっては必要不可欠な仕事であるので、ものすごく市場価値が高いのだ。

なので、僕はひそかにお得な職種だと思っている。今日はそんなお得な職種、生産技術というエンジニアについて語る。

まず、簡単に僕の経歴を紹介させてください。

世間的に1mmも興味がないことは重々承知だが、得体のしれないやつからの話は聞くに堪えないので、ここは我慢していただきたい。

元々、就職したときはメーカの花形、開発技術部門に配属されたが、自分が手掛けた新製品の開発完了と同時に生産技術へと異動になった。一般的な言葉ではジョブローテーションなどといって企業ではよくある話だ、といいたいが、正直左遷的な意味もあるのではないかと思う。本当に優秀な技術開発者は、技術開発者のままだ。

まあ、それはいい。

僕ももともと、技術オタク(通称ギーク)のようなタイプではなかったし、自分の技術者としての限界も感じつつあったし、僕の会社の生産技術の人たちに不満をたまっていた。

僕だったらもっとこうするのに!

そういう思いがあったので、生産技術への異動は半分残念、半分期待ができた。正直開発後期はメンタルがボロボロだったので、やっと解放されるという思いもあったのは確かである。

おっと、話がそれまくった。

本筋に戻したい。

冒頭でも少し話したが、あなたは生産技術という仕事をご存じだろうか?

おそらく知らないのではないか?

少なくとも僕の奥さんは知らなかった。

#とほほ


僕は地方の工場への出張が多い。

担当している製品が地方の工場で製造されているからだ。

なので多い時には月に2~3度くらいの頻度で地方都市へ出張する。

#コロナ禍でだいぶ減ったけどね


そんな僕の出張中、奥さんがママ友と集まって遊んだときのことである。

ひょんなことから、いま地方の工場に出張しているという話になったときに、「え~工場に何をしに行っているの?」と聞かれたらしいが、奥さんは答えられなかったらしい。工場というと、組み立てをしているイメージが一般にはあるが、僕の普段の様子から(もともと開発職だったし)、そういう仕事ではないことは、なんとなくわかっている。しかしそれ以外に工場でやる仕事が、奥様達の間で思い浮かばない。

「工場に行って何をしているんだろう…。」

結局、誰も答えが分からないまま、次の話題に進んだらしい。

#おいおい

さらに、追い討ちをかけてショックだったのが、奥さんもその時初めて

「旦那さんって一体何をしているのだろう?」

と疑問に思ったらしいのだ。

#興味もってくれー

世間的に1mmも興味がなくても、奥さんには2mmくらい興味を持ってほしかった。さてさて、僕や世界中の生産技術が何をしているか、報われない旦那さん代表で説明させていただく。中には僕の個人的見解も入っていることをご了承いただきたい。僕は僕の会社の生産技術しか経験がないから、これが全部の企業に当てはまるとは言い切れないが、まあおおむねこんな感じというのは間違っていないと思う。

#僕も生産技術の本とか読むしね

とにかく、僕の経験値のままに、わがままに僕は生産技術のことだけを書く。

#ちょいB 'z

生産技術とは会社によって仕事の守備範囲が若干異なるが、大きく分けて、二つのミッションを持っている。

それは、

効率よく製品を製造する方法を開発する。
製造を止めない。
の二つだ。

まず、一つ目の説明からする。

効率よく生産するとは生産性を上げることだ。

生産性を上げるとは、インプット量を減らしても、同じアウトプット量を維持することだ。

製造で考えたときにインプットというのは、時間、人、お金(モノ)だ。

また製品を作るときには、少し乱暴に説明すると”組み立て”と”調整”の二種類があることを念頭に置いて続きを読んでほしい。分かりやすい時間から説明する。

 同じ品質のアウトプットならば少ない時間で完成したほうがいいに決まっている。

長い時間をかけて作ったことが付加価値になることは工業製品においてはありえない。

なのでこの問題をクリアするために、少ない時間で組み立て可能な製造設備導入や調整工程の時間削減を考える。 例えば、組み立てた後に調整をする製品があるとする。組み立て後に調整をすると、ここのカバーを折角付けたのにまた外して調整して取り付けるという無駄な作業が発生する、とする。その解決策として、組み立て途中で調整できるように製造設備を開発する、または製造方法を工夫するなどを行い無駄な作業が発生しないように考える。

こういったモノを作る順番を考えて、どうやったら効率よく作ることができるのか、改善することが生産技術のミッションなのだ。

 次に人だ。

人は能力に個人差がある。

しかし基本的に工賃というのは同じ会社の中であれば誰が組み立てをしても一緒だ。作業者によっては早い人もいれば、遅い人もいる。なので誰もが達成可能な工数(組み立てができる時間)ということで標準工数というのが設定されている。

トラブルがなければこの時間内で全員完成できますよ〜という時間だ。

 こういった人によって差があるというのはチャンスだ。

早い人は何故早いのかを分析すれば改善につながるからだ。

早い人はここをこうやっているのか、遅い人はここをこうやっているのか、と分析して作業手順書に早い人がやっているやり方を反映してしまう。

そうすると遅い人もそのやり方でやり始めるので標準工数がどんどん下がる。

 これは簡単な例だが、一朝一夕ではうまくいかない、器用さなどといった能力の問題もある。

 能力はすぐに改善されない。

なので不器用な人でも簡単にできちゃう製造設備を作って、器用な人と不器用な人の差がなくなくすようにするのも重要だ。イメージとしては何にも知らない茶髪のおねーちゃんでもひょひょいと簡単に組み立てて調整できる設備を開発できる能力があるかが生産技術として求められるものである。

これだけ聞くと、器用な人の良さを奪うようにも聞こえるがそうではない。器用は人は、より高度な技術力が必要な高難度の組み立てをしてもらえばよい。製造設備の開発に使える時間もお金も有限なので、すべての作業を効率化できるわけではないのだから、できないところは器用な人にやってもらうのである。

最後にお金。これは設計まで口を出すことになる。

こうやって加工したものの方が安くなる。

こういう仕込みをいれてくれれば工数が削減できる。

品質にも影響を与えない。

だから設計を変更してくれと技術部門に掛け合うのが生産技術だ。

続いて、二つ目の製造を止めないについて書く。あんまり教科書には書いていないが、生産技術のミッションとは何かと聞かれてこれを答えるベテランも多い。それくらい大事だ。

僕もこれは常に念頭において仕事をしている。

しかし、製造を止めないことが現場の生産技術者にとってとても大事である一方であまり言語化されていない。そのため教科書などで見ることはない。

何故大事なのか?

その理由は至ってシンプル。

生産が止まる = 商品が出荷できない = 売上が減る

なのでだ。

工場は生産することに価値がある。

つまり商品を作り続けることが存在理由である。そこを忘れてはいけない。

 

その一方で、品質も犠牲にしてはいけない。

生産を止めないためなら品質を犠牲にしてよいなんてことにはならない。

技術が設計した要求された品質を達成する必要が勿論ある。

不具合品を市場に出しては元も子もない。

良品を製造し続ける。

当たり前だがそれがミッションだ。

 

まとめると品質を維持しながらトラブった製造設備を立て直したり、不具合品を特定して交換したり、なんやかんや製造が続くようになんとかするのが生産技術の仕事なのだ。

#ザ・力技

 特にこのことを若手エンジニアは絶対に肝に銘じなければいけない。 

製造を止めるな!

である。

この低予算映画のタイトルみたいなミッションを死に物狂いでやらなければいけない。こういった話から、生産技術に求められる能力に迅速な判断と対応力が挙げられる。

とにかく早く動いて、とにかく早く解決する奴が必要だ。

手数を出せ!

論理的に考えろ!技術開発部門、品証保証部門、全部引っ張り出して協力させろ!

何を使ってもいい。

ルール無用。

 僕は結構その点早く動くタイプだ。

何故なら熟考できるほど頭がよくないと割り切っているので、方向性だけ間違いがないことを周囲に確認したら脇目もふらずに腕力でなんとかやり通すタイプ。

最初のベクトル決めたら、後は何も考えずに突き進むことに決めているので。

#僕のことはどうでもいいので説明やめます 。 

僕のことはどうでもいいよっていう声が聞こえた気がしたので、話を製造そのものに戻す。

製造を止めないことっていうのは、具体的にどういうことかを掘り下げる。

具体的には

製造設備のメンテナンス
製造設備の修理
不合格品の原因調査
などが挙げられる。

 製造設備が故障すると製造が止まる。

なので、迅速に修理する。

または迅速に修理できる体制を整えておくことが生産技術のミッションだ。

備えあれば憂いなし。

こういった仕事は会社によっては品質技術といったりすることもあるが、多くの会社で生産技術の業務のひとつのようである。生産を止めないというのはなかなか大変で、工場というのは日々事件が起き、日々解決していか必要がある。

そのためトラブル対応マニュアルも出来る限り準備しておかないとその対応だけで時間を使ってしまい、新しい設備へ時間を使えなくなる。現場に自分と同じクオリティのことができる人間を、増やしておくことも生産技術の大事な仕事だ。

そして製造トラブルを解決する際には各部署との交渉も大事だ。品証部とかけあったり、技術部と相談したり、各部署が納得解を持てるように調整する力がないと務まらない。説明する能力も要求されるのでそこも鍛える必要がある。

 まあここまではほとんどが一般論だ。

 ここからは僕が思う生産技術の話をしたい。

半分は夢みたいな目標だ。

#いや 、君のことはいいってという声が聞こえるがとまりません。

生産技術としてやるべきは、理想の工場の設計だと思う。工場を設計できるのは生産技術だけだ。

理想の工場とは、人、設備、金、時間といった資本全てか最大限活用され、最大限の効果を生むような場所である。

ファブレス化で利益を上げている企業が多い中で、僕はあえてこの工場を設計するということで世界に挑戦したいと思っている。

モノを作るときには必ず工場が必要だ。

そして工場を設計できる人間なんてそうそう多くない。

金がかかるし経験できる人間は一握りだ。

しかし、たくさんの工場を作ってきた日本にはノウハウがまだある。

 

経験できる人間が限られている仕事は、無理やり手をあげてでも経験しないともったいない。

僕らは労働力と引き換えに給与をもらって働くだけの時代には生きていない。

 

昨日まであった仕事がなくなる。

仕事のルールがいきなり変わる。

誰でもできる仕事は人間以外がやるようになる。

副業が解禁される。

 

僕らは一生同じ仕事や職場で終えられるほど甘い世界ではもう生きていけない。

常に自分の価値をスライドさせながら、いまいるエリアから少しずらした横のエリアの需要も取り込まないと稼げない時代だ。

であるならば今の仕事は、自分の価値をスライドさせるための教材でもある。

 

給与は変わらないから、で楽な選択ばかりしていては価値はスライドしない。

給与が変わらなくても自分の価値を上げる仕事をする。それが最大の投資だ。

 

金持ちとは金を持っている人のことでなく、金を稼ぐ方法や能力を持っている人のことである。

 

であるならば僕らは働き方、成長の仕方を理解しておかなければならない。

 

経験により得られたことは失敗も成功も価値がある。

大きな大きな差が経験できていない人間と開くことは想像に難くない。

 

人、設備、金、時間。

 

先ほど資本をこのようにいったが、設備と金と時間の三つは理系学生は全般的に得意だ。

しかし、人になると下手な人が多い。

 

僕もまだへたくそ、くそっぴだ。

人に最大限働いてもらうにはどうしたらいいか、それを考えるのも生産技術。

 

人の心の動きまでデザインする。

それがプロの生産技術だと思う。

 

研究では人は注目を浴びると効率が上がるらしい。

だから現場によく通いよく見てコミュニケーションを取るという地道な活動もめちゃくちゃ大事だ。

現場を蔑ろにしてはいけない。

 

生産技術で現場からの信頼が厚い人はそこまできちんと設計している。

頼られる部分と、現場に任せる部分とを見極める。

ある意味、現場のリーダーになる必要がある。

 

 

僕はリーダーにとって一番重要な条件とは一つだけだと思っている。

それはチームを勝たせることだ。

こいつについておけばとりあえず勝てる。

そう思ってもらえるかどうかが優秀なリーダーがそうでないかのポイントだと思う。

 

勝てると信じているチームメイトと仕事ができれば成果は自ずと上がる。

 

生産技術はかっこいい仕事だと自負しているのだが、学生からの人気は低い。

花形ではないのは理解できる。

やることがものづくりの中核でめちゃくちゃ大事だが地味といえば地味。

 

しかし、工場を作るという夢を描いたらどうだろうか?

魅力的な新製品を開発する技術部門に比べて花形度は減るが、工場を設計する仕事と考えたら負けないくらいわくわくする。

 

正直、学生からの人気がないのは個人的にはチャンスとも思っている。

優秀な人間は生産技術になかなかこないので、やる気さえがあれば生産技術で日本でも上位の方にいけるのではないかと企んでいる。

 

やりがいを感じている人間が少ないが、やりがいのある魅力的な仕事。

それが生産技術だと思っている。

 

やる気さえあればどんどん貴重な能力を吸収できる。そして何より改善したらすぐに成果が出るのも楽しい。技術部門では成果は製品開発が完了したら出る。

しかし製造部門では日々成果を出せるネタが山ほどある。

 

ものづくり大国日本なんてのはもう古いかもしれないが、生産技術で負けないエンジニアになる。

技術の差は各国で大差がなくなっていく時代だ。

 

工場をどうやって改善していき、そこで働く人々をどうやって最大パフォーマンスで働いてもらうか。

人の気持ちまでも設計し、どうしたら最大パワーが出せるかデザインすることを今必死で考えている。

 

というのを、奥さんに理解してもらいたいブログでした。

 

#旦那はがんばっているから旦那の仕事に興味持ってね

#結構熱いんすよ

 

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