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住所不定探偵

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住所不定探偵

俺は急に家賃を払うのが惜しくなり、アパートを出てバイト先の仮眠室で寝ることにした。
しかし2日後、店長にバレてしまう。

「いや、ちょっとだけですよ、次のところが見つかるまで、ね?」

頑として譲らない店長に交渉していたら、後輩の女の子のベランダを貸してもらえることになった。

「いいですよ。私あんま家いませんし。窓の鍵は締めますけど、それでいいなら」

彼女は大学とバイト先で一日の大半を過ごし、

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住所不定探偵 2/5

警察署「じゃあまずは…名前聞いてもいい?」
「はい、佐藤与兵衛です」
「与兵衛くんね。お仕事は?」
「176号線沿いのサミーズバーガーってところで働いています」
「アルバイト?正社員?」
「アルバイトです」
「君、何歳?」
「28です」
「ふうん、そっか、僕より年上なんだ。で、被害者のモナミさんとはどういう関係だったの?」
「バイト先の同僚でした」
「モナミさんもバイトだったんだね。それだけ?友達

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住所不定探偵 3/5

サミーズバーガー 176号線店俺がサミーズのバックヤードに入るとそこにテルコがいた。

「与兵衛さんどこでケガしたんですかそれ!」

テルコは俺を見るなり大声を出し、俺が「階段で転んで…」などと言うのも聞かず、重そうなハンドバッグから消毒液、真綿、ピンセット、はさみ、ガーゼ、テープ、絆創膏を取り出し、手当てを始めた。テルコは俺の腫れ上がったまぶたを押さえながら言う。
「モナミのこと、聞きました。い

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住所不定探偵 4/5

梅田まで俺が薄い毛布から起き上がるとテルコは既に家にはいなかった。俺はテレビを付け、顔を洗ったり冷蔵庫にあったヨーグルトを食べたりしていると、くすねてきた店長のケータイに着信があった。〈サミーズ日本支社 染屋崎〉からだった。

「お疲れ様です。染屋崎です。今しがた警察から連絡があって…久保田さん?久保田店長ですよね?」

俺が黙っていると染屋崎という社員の男は話を切り上げてしまった。久保田は店長の

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