楽しさを共有するという難しさ

 架鉄において自分は他人との交流を断絶し、自分の前で自分の架鉄の話をすることすら拒否しています(無論閲覧は自由ですし、俺自身のリアクションを要求しない限りはどんなにけなそうが自由です)。この考えに至るまでずいぶん逡巡がありましたが、結果として彦島電鉄は、これまでつくった架空鉄道のなかで最も満足度が高いものになりました

他人の評価など知ったことではありませんが、彦島電鉄は自分としてとても満足のいく架空鉄道になりました

 100%自分の思うままに作ることがこんなに楽しいのか、と思う反面、俺は他人と楽しさを共有するということが架鉄においては無理だ、ということがよくわかりました
 おそらく彦島電鉄は、俺以外の誰が見てもその面白さが理解できないでしょう。自分自身としても「他人に分かってもらおう」という立場に立っていませんので、解説も一切していません
 彦島電鉄では「台車の外観を見て力の伝達が目に見える」程度の機会の理解力があればわかる前提で書いています。逆に言うと台車を見てどういう機器構成になっていてどういう意図が部品に込められているかが分からないレベルだと彦島電鉄は理解できません。
 たとえばなぜ1200形でギアリング5.92なんて深いギアリングを採用したか。これは東洋電機の機器を採用しているという情報からわかってもらえる、逆にこれでわからないならわからなくていい、という割り切りをしています。
 東洋電機は中空軸平行駆動を売り込んでいたわけなので、バックゲージいっぱいにモータを展開できますよね。モータの構造上全長を伸ばせば回転数が高く取れる、逆に直径を大きくすればトルクを出せます
 そして彦島電鉄は車輪径が660mm。つまりそこでパワーを出すならバックゲージいっぱいのモータで高回転を出して、深いギアリングで減速するほかない。ゆえにギアリングはDCシリースモータでも5.92と導けます。これが分からないならわからなくて構わない、と彦島電鉄では割り切りました
 これが三菱電機ならWNドライブになりますのでかなりの工夫が必要です。少なくとも東洋でシステム組んでもアイドルギアを噛ませる有様ですから、果たしてどんな機器構成が正解になるのか、面白そうですね
 とまあこんな具合で彦島電鉄は「走り」にリソースを全振りしています。そこに興味がなければまったく刺さらないといっても過言ではありません。ですから彦島電鉄をほかの人が見ても「なんだこれは」ってなると思います
 でも自分はこれが楽しい。すごく楽しい。床下の制約をいかにかわして高性能を引き出すかを考えるのが実に楽しい。そんなの架空鉄道じゃないとすべての人に言われようが、俺はこれが絶対的に楽しいんです
 つまり、楽しさを共有できないんです
 俺は架空鉄道の路線概況や歴史に全く興味がわきません。特に歴史においてはトラウマ的に嫌っています。ですから自分が好きである「走り」の楽しさが分かってもらえなくてもそれは仕方がないことは理解できます。興味のない話を延々と聞かされるのは苦痛でしょうし
 でも、路線や歴史、ダイヤが好きな人の中に自分が入り込んでもそれはおそらく迷惑なんですよ。俺が歴史語られても嫌ですもん。興味ないですもん。だからお互い態度に気を使って気まずい空間を作ることになる。これは不健全ですよ。まあそれ以前に俺は架鉄の主だった人たちからはことごとく嫌われてますから、そもそも輪に入れる以前の問題ですが
 とにもかくにも架鉄においては一切の交流を絶った結果、自分にとって満足度の高いものができました。寂しくないと言えば嘘になりますが、いいとこどりはできません
 そして俺の架鉄に対する話を俺の前でするな、といった要求を掲げている以上、俺自身も他人の架鉄について一切の関心を持たないし話題にしないことに決めました。そうでないとフェアではありませんからね
 これからも誰にも評価されない、俺だけがひたすら満足できる徹底的に自分だけに最適化されたデタラメな架鉄をつくっていこうと思っています。百の賞賛より1の満足です
 Webで架鉄を公開し始めて20年ちょっと。たどり着いた結論は「孤立」でした。まあ、それも俺らしくていいのかもしれません。他人の顔色をうかがいながら、やりたくないことをやるよりはよっぽどマシです