架空鉄道と車両メーカーとの関係

かつては武庫川車両や西武所沢工場のように、自社の車両を自分の系列会社で製造するということもありましたが、現在では鉄道会社が車両メーカーに発注するというのがまあ、標準だと思います
で、車両メーカーに発注する場合なんですがいくつかのパターンがあります
ひとつは、特定の車両メーカーと長い付き合いがあるケースですね。たとえば名古屋鉄道はすべての車両を日本車両製造に発注しています。日車も日車で名鉄のために低床のLRVをつくるなど、かなりの無茶振りにこたえています。長年の信頼関係がなせるわざですね

「長い付き合い」ゆえにLRVまでつくってくれちゃうんだから名鉄×日車の絆の深さを実感しますよね


このパターンの対照的な存在が、公営交通に見られる「入札による発注」です。公営交通は市民や都民の税金で車両を買うわけですから、どんぶり勘定ではまずいわけです。なので(表向きは)オープンに入札して、安く受注した車両メーカーに発注します。公平に入札が行われた場合、年度によって落札メーカーが異なることになりますので、名古屋市交通局のようにいろんな車両メーカーの車両が結果として走るなんてことも十分あり得ます
そしてもう一つのパターンが、「発注車両が多いので複数社にまたがって発注する」パターンですね。ただこのパターンは最近はあまり見かけないような気がしますが、国鉄なんかは基本的に各車両メーカーに均等発注するのが建前ですので、同じ形式の中にもいろんな車両メーカーで造られた車両が混ざります
で、架空鉄道ではどのように車両メーカーに発注するかで、その会社の性格を演出することができます。たとえば1社と長い付き合いをしているケースであれば、その鉄道会社のスタイル=車両メーカーの手癖が入ったイメージとなります。名鉄や小田急の丸っこい車体なんてまさに「日車しぐさ」なわけです。メーカーを統一することでその鉄道のスタイルに統一感が生まれる。「〇〇鉄道と言ったらあの丸っこいスタイルだよね」みたいなことができるわけです
逆に雑多なスタイリングを楽しみたいなら公営交通スタイルはありでしょう。また、「何らかの理由で」メーカーを鞍替えすることはままあります。ある年代までは○○製作所に発注していたのに、とある形式から○○車両製作所に変わるなんてことは相模鉄道の例を見ても十分あり得ます。架空鉄道ならその「切り替え」にドラマのひとつでも組み込んだら面白いんじゃないかと思いますね

相鉄10000系で東急車輛に発注した相模鉄道。架空鉄道なら何があったのかそこにドラマのひとつも組み込んでみたくなるというものです

このほかにも「この鉄道は一貫して○○車両に車両を発注しているのに、××××形だけはなぜか■■車両が受注している」みたいな車両も面白いかもしれません。実車だと小田急のロマンスカー・SE(3000形)がそんな感じですが、一車種だけ毛色の変わった形式を突っ込んでみたいときに、車両メーカーを変えてみるのはありだと思いますね
架鉄の車両を考える時に車両メーカーを設定すると、結構面白いバックグラウンドが作れます。さらにこれに電装メーカーも加えるとさらに車両の設定に深みが生まれます
たとえば東洋電機の中空軸平行駆動故に狭軌で110kwモータを実現したのに対して、三菱電機はWNゆえに75kw止まり。そのハンデをどう克服したか、そしてそれを三菱電機と取引のある鉄道会社はどう支えたのか、なんて話もけっこう熱いんですよ

狭軌なのに敢えてWNにこだわり、長野電鉄2000系では75kwモータで良好な性能をたたき出し、0系では135kwモータを搭載することができた(まあ車輪径はΦ=910mmになっちまいましたけどね)んですが、長野電鉄の協力はなかなかに浅からぬものがあったんですよ

架空鉄道で車両をイメージする際は、車両メーカーと電装メーカーの姿も合わせてイメージしてみると、車両全体がギュッと締まります。そういった周辺が締まれば、多少デタラメをぶち込んでも粗が見えないのでお勧めです