何を見て何を思うか

 電車は電気で走ります
 なので、変電所から送られてくる電気に性能は大きく依存するわけです。どんなに高性能な電車でも電気がちゃんと送られてこなければその性能を十二分に生かせない。末端区間で4ノッチが入らず3ノッチでのろのろ走る高性能車なんて実にゾクゾクします。運転する側はたまったものではありませんが
 2002年当時、そんなことを思って2chに俺は書き込んでいますね。今では他人の架鉄に何かを言うということはしないことにしていますが、当時はこんなのどうよ、みたいな話をしています

ええ架空鉄道 Part6より

 VVVFなら電流制御ですから、ノッチ制限が効果的です。たとえば4ノッチある電車なら4ノッチが本来の性能である(仮に)177Aぶっこめる指令を出せるノッチなら、3ノッチが117A、2ノッチが76Aみたいになってて架線電圧が上がらんところではノッチを制限して運転するわけです
 基本的にモータとかコントというのは、電圧が足らない分を電流で足して本来の出力を出そうとする(kw=V×A×効率)ので、変電所からの十分に電圧がかかってない場合はこうやって人間側で補正する必要があるわけです
 ちなみにDCモータでもコンパウンドモータの場合は似たようなことが起こります。コンパウンドモータでも制御段を終わって弱め界磁制御をおこなう場合は電流制御になるわけですから、ここでちゃんと電流の管理をしないと場合によっては燃えます。実際東海道本線で151系がやらかしてますよね
 え? 151系はシリースモータだろって? いやいや燃えたのはMGの方です。当時の東海道本線は列車密度が異様に高くて電気の分捕りあいをしてました。んで、変電所間隔が広くなる静岡のあたり(電化を急いで突貫工事だったので、変電所間隔がこのあたり広かったんです)で電圧降下を起こしてまして、そのあたりで151系のMGのM側が電圧の急変を食ってフラッシオーバを起こしちゃったんですね(コンパウンドモータは電圧急変に弱いのです)。大幹線でもこんなことが起こりえるわけです。面白いじゃないですか
 ……あ、面白くない?

ええ架空鉄道 Part6より

 俺は東海道本線の例もあるから「幹線で電圧降下、面白いじゃん」と思ったわけですが、別の人の視点からすると「配慮の範囲を超えてしまうから無視しよう」となるわけですね
 同じものを見ていても見ているところが違うという典型的な例でした
 今でも俺は、「電車は電気で走るのだから架線電圧に左右される」風景を想像します。だから彦島電鉄でも三井化学前~南風泊間はVVVF車に限って4ノッチ禁止です。電圧750Vですから電流制御の電車の暴れっぷりは1500Vの比ではないからです。そういや名鉄揖斐線(600V)でも、朝のモ780形3連運転ではノッチ制限してましたね
 通常4.5km/h/sで猛烈に加速し自動車を煽る彦電の電車が、末端区間では2.0km/h/sまで加速力を落として静々と走る。これはもうギャップ萌えです
 ちなみにDCシリースモータの場合は挙動が変わります。ABFMであればまあ4ノッチまでガチャっと入れますわな。するとコントのカムが回って起動ノッチと捨てノッチをスルスルッと進む。しかしそのあとは電流が満足に流れてこないので限流値になかなか達しない。なのでカムの進段が異様に遅くなり結果加速力がメタメタになるわけです。VVVFが「腹ペコの馬を騙しだまし走らせている」のに対しABFMは「いくら鞭をくれても動いてくれない馬」みたいな違いでしょうか。加速がとろくさいという点では同じなんですが、その挙動は異なるわけです。楽しいでしょ?
 …え、楽しくない?
 このように架空鉄道って、同じものを見ていても見ているところが人によって全く違う。上の例で言えば俺は路線の変電所間隔しか見ていませんが、ほかの書き込みを見るとほかの人はまったく違うところを見ています
 ですから、人に自分の架空鉄道を伝えようとするのならば、誰に対してその世界を表現するか、というのを考えないとなーんにも伝わらないんですよね。この変換作業がまったく面白くない割に労力ばかりかかるので、俺は他人に伝えるのを辞めた。「わかる人だけわかってね。質問には答えるけどそれ以上は俺やらないから」というスタンスになったわけです