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どうなるレッドブルとフレキシブルウィング問題!?アゼルバイジャングランプリに向けて┃F12021シーズン 5戦を終えて

2021年シーズンのF1も先々週のモナコで5戦が経過。
そして今日からアゼルバイジャンGPが開幕します。

前戦のモナコグランプリ同様特殊な市街地サーキットで何となく前半戦の一区切りという勝手なイメージを持っていますが、そんなアゼルバイジャンGPに向けて、これまでのおさらいと、注目ポイントを。

1)5戦を終えた時点の勢力図をおさらい


モナコGPでのタイヤの温まりに苦労したルイスが取りこぼしたので、マックスがランキングトップに。

とは言え、やはりメルセデスとルイスは傍から見ていてもゾクゾクするほどロジカルな戦術をとっていて、モナコでルイスが大きく順位を下げたことも決して偶然やミスではないし、ボッタスのタイヤが抜けなかったという想定外がなければ、コンストラクターズでの逆転は起こっていないので
ここ以外はほぼプラン通りに物事を進めているのが本当にメルセデスの強いところ

2)フェラーリVSマクラーレンの第2集団争い

楽しみは取っておいて、まずはフェラーリとマクラーレンの第二集団争い。
初戦から本当に実力が拮抗していて、どちらが勝ってもおかしくない状態。
モナコでは千載一遇の優勝のチャンスを自身のミスで帳消しにしてしまったフェラーリ。その隙をつけたはずなのに、ここではペースを発揮できなかったリカルド。
一時代前はトップを争っていた2チームの戦いはもう一つのGPとして楽しめそう。

3)メルセデス VS レッドブル

いやぁ。もうバチバチですね。
マシンの実力自体はもうほとんどイーブンと言っても良いのではないかと思う2チーム。開幕勝ち切れなかったことが本当に大きく響いているなぁと思っていましたが、モナコでは戦略的にコンストラクターズポイントを取りに行くなど、まだまだメルセデスは焦っていない様子ですけどね。
タイヤが外れないのは焦ったと思いますw

4)フレキシブルウィング問題

そんな中で、レースの外側で話題になっているのが「フレキシブルウィング」の問題。
ハミルトンがレース中、マックスの後ろにいて「レッドブルのリアウィングは、ストレートで凄く、たわんでいる。こんなにわたんでいたら1周0.3秒くらい得しているんじゃない?」と発言。
メルセデスのボスであるトトからも正式に抗議がなされました。

”ベンディ・ウイング”騒動を受け、国際自動車連盟(FIA)は技術指令書を発行する事でフレキシブル・ウイングの規制に介入する事を決めた。
統括団体はチーム側に対処の時間を与えるため、監視体制の厳格化を即時ではなく来月中旬以降から開始すると通達した。つまりバクー市街地サーキットで開催されるアゼルバイジャンまでは、合法か非合法かはさておき、このウイングを使用する事が可能というわけだ。
https://formula1-data.com/article/mercedes-to-protest-red-bulls-use-of-flexi-wings-in-baku

とあるように、フレキシブルウィングの規制を強化すること。そしてマシンの変更にかかる時間を考慮して、全チーム猶予期間を与えました。

ところがです。
メルセデスは「今回のアゼルバイジャングランプリでもこのフレキシブルウィングが使われるなら、FIA国際控訴審判所へ控訴する」と発言したんですよね。

5)フレキシブルウィング問題の疑問

この問題、本当に論点と議論の前提が沢山あって、何を基準にして、どんなプロセスで考えればよいのか。
そもそも何が問題で、何が問題でないのか。分からないことだらけだったので、改めてJAFのサイトにも載っている「FORMULA ONE 技術規則」や「競技規則」に目を通してみました。
ここからは個人の解釈を多分に含むので、違うという場合はコメント?をいただけると助かります。

A:技術規則とは?

まず、フレキシブルウィングの何がいけないのか?これを理解するためには、「FORMULA ONE 技術規則」なるものを理解する必要が・・・。
まず、F1という競技に参加するには、この技術規則(テクニカルレギュレーション)に則ったマシンでなければならない。寸法から材質など様々な要件が定義されているものが技術規則。

B:フレキシブルウィングの何がいけないのか?

空気力学的な影響が大きくなった現代のF1において、走行中、状況に応じてその形状を変えることで空力的な恩恵を受けようとする思想は全チームが持っている。ただし、形状変化によってパーツの強度が損なわれることで大きな事故に結びつく可能性があることから、これを禁止しています。

具体的には
技術規定3.8の規定にはこんなことが書いてあります。

・リアビューミラーは例外として、車両の空気力学的性能に影響するいかなる特有な部品も堅牢に固定されていないといけない。(堅牢に固定とは、一切の遊びがない状態をいう)
・車両の空気力学的性能に影響するいかなる特有な部品も、車両の懸架部分に対して不動を維持しなければならない。
・DRSを例外として、一切の車両のシステム、装置あるいは手動手順で、車両の空力特性を変更する方法としてドライバーの動きを使用するものは禁止される。

そういえば昔、ドライバーが手で穴をふさぐことで機能するFダクトなんて言うのもありましたね。

要するに、基本的に
危ないから、マシンについている空力パーツはガッツリ固定されていて、不動(=動いちゃだめよ。)
ってこと。

ただし、全く柔軟性がないパーツは折れてしまって逆に危ないという側面や、そもそも物凄い力で押さえつけられるパーツが全く動かないというのは現実的ではないので、フレックス(動く)と認定しない範囲であればOKとするよ。

その範囲として、現在は特定の部分に負荷をかけて、基準値以上動かなければ良いよと定めているわけ。

具体的には技術規定の3.9.3に

・車体は基準面から上方825mmで、リアウィングのエンドプレート前端部から前方20mmで基準面から上方825mmの地点に、1000Nの負荷が末端部に同時に後ろ方向へかけられた場合、水平に1度以上歪んではならない。

という基準が設定されています。
今回のレッドブルをはじめとする数チームは、毎レース行われる車検で、この3.9.3の基準をクリアしているんですよね。

C:FIAはメルセデスの言いなりなのか?クリアしてるのに何が問題なんだ!

記述規則には前提として「競技審査委員会は危険だとみなされる構造の車両を除外することが出来る」とある。つまり、安全性を担保することが第一優先。
なので、危ないから、マシンについている空力パーツはガッツリ固定されていて、不動(=動いちゃだめよ。)
であることが優先事項になるわけ。

でもって、今までの車検(上記の場所に1000Nの負荷をかけても1度もゆがまない)に通過していれば基本的には動かないと捉える。としていた。

でも実際はこの基準をクリアしているのに、レッドブルなど数チームは「動いちゃう」ウィングを実現しているということが問題になっている。

レッドブルのマシンのリアウィングがどれくらい動いているかが良くわかる動画。

これまでもシーズン途中にこの検査の規定がアップデートされる(技術指示書として)ことはあったので
あくまでも技術規則の原則を実現するための必要な措置であって、さらには時間的な猶予も設けたうえでの検査方法の追加なので私自身は間違ったことはしていないと思う。

D:メルセデスの強気の理由は一体?

FIAが検査方法変更を決定しているにも関わらず、アゼルバイジャンGPで既存のウィングを使ったチームがいたら控訴する。と強気の姿勢を見せるメルセデス。どうしてこんなにも強気で入れるのだろう?

ここは本当にわからないんだよなぁ。

いくつか説があって
今レッドブルが指摘されているウィングの変形は、既存のウィングの強度や構造に関することではなく、その取り付け部分架橋部分に何かしらの細工(新たな技術や手順)がされている。
これはガッツリ固定されていて不動、という前提で認められる程度の柔軟性とは別の話、全く違ったテクノロジーにあたる。

この証拠をメルセデスが持っているということ。

そしてもう1つ、規約自体はFIAが決めて車検を実施しているけれど
レース自体の裁定は毎レース異なるメンバーで構成されるレーススチュワードが行う。という運用ルールに則り、

アゼルバイジャンGPで走ったレッドブルのマシンは、この通り、明らかに定義されていない技術を使い、ウィングを動かしている。

という提訴をおこなう。これが事実認定されればレーススチュワードの判断で、そのレースの結果を無効にすることも可能。

これを狙っている可能性

もう一つが
可能性としてある程度の証拠を提出して裁判を行うことで
レッドブルが自らの潔白を証明するために、リアウィング周りの構造やテクノロジーを明らかにする必要があるということ。もし、凄くコストをかけて開発した技術であった場合、裁判で合法が認められたとしても
構造自体を公にすることで他チームの開発ヒントを与えることとなってしまう。

これを狙っている可能性

ん~。正直どちらなのかは分かりません。
ただし、言えることはメルセデスは相当ルールを理解していて、やるべきことをやっているチーム。

昨年のDASも革新的なソリューションにも関わらず

2.4
新たな設計あるいはシステムを導入する、または本規定のいかなる解釈においても不明瞭であると感じた場合は、FIAフォーミュラ1技術部に解釈を問い合わせることが出来る。
いろいろなデータとか仕組みを提出する必要があるけれど。新しい技術だけれども技術委員がOKと認めたらそのシステムは利用可能。
2.5 改めて当該技術を再検討するよう要請された場合でも、導入されたシーズン終了までのみ許可される。再検討の結果F1にとって価値を付加しないと判断した場合は禁止される。

という規則を熟知していたことで、事前にデータと設計図を提出しOKをもらっていたため、後に疑義が発生して禁止が決定しても、そのシーズン終了までは許可されてましたしね。

今回のことも、ある程度の証拠をもって上記いずれかに転んでも利益を得られる(逆を言うと、動かない場合はレッドブルが利益を得ている)と踏んでいるんだと思います。

当然、今回のアゼルバイジャンGPが約2Kmに及ぶストレート(全開)区間のあるサーキットなので
フレキシブルウィングによって得られるアドバンテージが相当大きいはず。
この最も影響の大きなコースで、仮に上位をレッドブルやフェラーリが独占した場合(いずれも今回の検査方法ノン変更でウィングを再設計する必要があることを認めたチーム)、控訴することで、結果を抹消することが出来ればメルセデスとしては願ったりかなったり。

控訴を恐れてレッドブルやフェラーリがリアウィングを変更してくれれば、アゼルバイジャンGPの戦いでのディスアドバンテージを解消できる。

いずれにしてもおそらく、レッドブルやフェラーリがどのような手法でウィングを傾かせているか、おおよその検討と証拠をつかんでいるのであれば、声を上げることで得られることはあっても、失うものは何もない。

メルセデスらしい、凄くロジカルな行動だと思います。

本当であれば、レッドブルに今回のアゼルバイジャンからウィングを基に戻したうえで勝利してくれたら言うことないんだけど。どうするかな?

書いている最中にFP1始まっているので楽しみに見たいと思います。

では、また!

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