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【西園寺家】輝ける方法 スピンオフ 西園寺孝寿編

 大きな門構えのお屋敷で暮らす、西園寺孝寿。西園寺家の跡取り息子。幼少の頃から英才教育を受けて育ってきた。
 母親のお腹の中にいた時から胎教に良いとクラシックを聴かせたり、産まれてもなお良い音楽、絵画、食事、自然とふれあう機会をたくさん与えられていた。

 毎年一回は世界の音楽と絵画を堪能しに海外へ出かける。ニューヨークのメトロポリタン美術館、ブロードウェイ。フランスのルーブル美術館、ベルサイユ宮殿。イタリアのウフィツィ美術館、ミラノのスカラ座でオペラ鑑賞などなど、お金には糸目はつけない。
 それが西園寺家流の子育て。父の生きがいでもあった。その一人息子の孝寿を後継者として育て上げようと、躍起になっていた。

 父の西園寺昭信は、西園寺グループを一代で築き上げた。
 昭和の高度経済成長の時代に生まれ、家は貧しいながらも学生の頃からアルバイトで稼ぎ、就職してからは熱血社員として働いた。学歴は無かったが、いつか一旗上げてやろうと叩き上げで西園寺グループを大きくしていったのだった。


 孝寿は気の優しい内気な子。いつもおっとりしていてマイペースで行動する。しかし、絵を一度描き始めると大好きなおやつの時間も忘れ没頭する。孝寿の中でどんどん湧き上がる感情を絵にぶつけている。何が孝寿を突き動かしているのか、孝寿自身も分からずにいた。とにかく、絵を描くことが好きな子だった。

 昭信は、孝寿の絵の才能は認めつつも後継者としてはどうかと内気で内向的なところが歯がゆく思えた。
 西園寺グループの後を継ぐのであれば、勉強でも運動でも、何でも一番でなければ気がすまない。
 昭信は自分が子供の頃に苦労をした経験から、自分の子供には最高の環境を与えて人の上に立つ人間になってもらいたい、そう目論んでいた。
 子供より先に、口や手を出してしまう。そういう父親だった。

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