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加工した"い草"で何ができるのか?

前回の投稿で、"い草"の退色の事について少し触れましたが、今回はその辺りのことを少し深掘って見たいと思います。

畳を使いっぱなしのまま自然に退色させると、濃い目の褐色になって行くと書きましたが、それではいけないのか?

普通の部屋の中で座る場所の「畳」では、良い「畳」は乾拭きなどお手入れをしながら使っていただくと、綺麗な褐色になっていきます。
それはそれで美しいのですが、床の間に龍鬢表を使うと言う事は、それだけでは無い機能を持たせてあります。

その機能とは?

元々、龍鬢は江戸時代の中期頃に生まれたと言われています(この事実も畳業界の人でも知らない人が殆どですが)

ではなぜわざわざ退色させた"い草"を使った畳表が作られるようになったのか?

時代的に今の世のように電気がない時代、夜は蝋燭や菜種油や魚油のほの暗い灯火の中で暮らしていたと言われています。
そんなほの暗い夜にでもお客様がいらっしゃる事があります。
行灯などの灯りは今の電球でおおよそ20W程度の明るさしかなかったと言われています。
かなり暗いですよね……

そのほの暗い灯りを最大限に生かすために生まれたのが「龍鬢表」と言われています。
床の間の床に明るい黄色の床材を使い、行灯の灯りを反射して、床の間に生けたお花、壁にかけた掛け軸を浮き立たせるように見せるための、言わばレフ版のような効果を持たせるためと言われています。
今ではスイッチ一つで明るい電気が灯るのでその役割りはあまりないのかも知れません、が、やはりそこは日本の文化や美意識を感じられる所なので、今でも「龍鬢」が使われています。

一般住宅に床の間が設られる事は少なくなって来ましたが、旅館や神社仏閣、伝統的建築物など龍鬢は使われています。
(もちろん一般住宅でも使われています)

単に風合いを出すためだけでは無く、そうした歴史から来る謂れを通して、龍鬢の美しさを感じてもらえると嬉しく思います。

床の間など不要だ、無駄だと思われる向きもあるかも知れませんが、世の中は必要な物だけでできているわけではありません。

日本にしかない文化の一端を床の間から感じてみてください。

次の投稿では、レフ版効果が必要なくなったが、龍鬢の色にはまだまだ他の効果があるかも?と言う所に触れてみたいと思います。

また読んでくださいね、お待ちしています♬(^^)

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